352:PL
「だ、だめ~でし……た~」
倒れたアーリィにトドメを刺そうとするライカンスロープの首をそれなりに強化した「風刃」で弾き飛ばす。
「健闘したんだけどね。素早さに翻弄されちゃった感じかな?」
「はい~。正直、一人で戦う……ってことを忘れているかもしれません~」
ああ、そうか。彼女は姫様の側近とはいえ、騎士団の副団長だ。騎士は決闘や一騎打ちは行うものの、基本集団戦、複数の騎士で陣形を組んで戦う場合が多い。騎兵として騎馬で戦場を駆ける際も、単騎……というのはあり得ない。
「ああ。だから、あそこまでやれたのはスゴイと思うよ。確実に、レベル差があった相手を追い詰めたのだから」
そう。アーリィはちゃんと、ライカンスロープを人型ではなく、本来の姿に変化させるところまでは追い込んでいた。
そもそも……ほぼ動きが追えてない戦闘で、どうやって敵の攻撃をガードするっていうんだって話だろう。
「あのさ……攻撃はほぼ見えてなかったよね?」
「はい~速かったですね~アレがライカンスロープ、獣人の魔物なんですね~」
「なんでガードできるの?」
「……ん~勘~でしょう~かね~」
ダメージを受けて疲れているのか、いつもよりも返答に間延びを感じる。正直、さっきまでの反射的に行う神ガードを連続で決めていた騎士とは思えない。
それにしても……勘か。いや、それだけじゃ無いよなぁ。絶対。アーリィの天職は騎士に向いている戦士、剣士や槍士ではなく吟遊詩人だ。
それで副団長……どころか、この国の現役騎士最強(これも俺の勘だけど。たぶん当たってる)にまでなるには、かなりの努力が必要だったと思う。俺の知る限り、この世界のシステムでは、天職に適合していない動き、行いを続けていると、スキルを習得することが可能だ。
習得スキル:
【気配】【剣術】【盾術】【受流】【反撃】【隠形】【加速】【棒術】【拳闘】【魔術】【手加減】【周辺視】
これだ。まあ、シロ曰く、俺のレベルの上がり方や成長具合はおかしいと言っていたので、ここまで多くのスキルを習得してはいないと思うけど……なんか凄いのありそうだな~。
【鑑定】でみんなのステータスが俺と同レベルで見れればなぁ。便利なのに。
ってまあでも、全部見れちゃったらそれに頼っちゃうか。そうだよな。すげースキルを所持している人を配下に置きたくなったりしそう。
「三国志」のゲームでよくやったなぁ。有名武将とか、無名だけど光るスキルを所持している武将を一国に集めて、ずっと徴兵、訓練と、内政させて、とんでもなく強く、富ますっていう。
「どうする? 速さに追いつけないようであれば、訓練にしては過酷すぎると思うんだよね。敵のランクを下げようか」
「いえ~今ので~お願いしたいんですが~」
「俺がいないと勝てないんじゃ困るんだけど」
「……う~ん」
まあでもしょうがないか……パワーレベリングって出来るのか判らないけど……確認してみるか。
「判った。もう少し強くなってくれればいいんだよな」
名前 アーリィシュ・ケラオ・シャラガ
天職 吟遊詩人
階位 33
体力 65 魔力 43
あれ? レベルが1上がってるかな。前は32だったはずだ。
(シロ。普通の人はレベルを一つ上げるのに数年かかるんだよな?)
(はい。アンテナからの情報を統合しても、レベルアップするには通常数年単位かかるのは変わらない様です)
(アーリィのレベルが上がってるんだけど)
(それまでに経験値が貯まっていただけでは?)
(……そうかな。まあ、いいや。俺がアーリィとパーティを組んで、ドラゴンとか倒したら、簡単に、もうちょいレベル上がるかな?)
(そうですね……PLとはいえ、既にアーリィはレベル33もありますから……そこまで酷い補正が入ったりはしないかと思われます)
(ああ、やっぱ、そういう補正入るんだ)
「アーリィ、俺とパーティを組もうか」
「はい~お願いします~」
(組めた?)
(問題ありません)
(んじゃ、オレの使ってるエリア……ドラゴン三匹いるエリアに飛ばして)
(了解しました)
一瞬で景色が変わった。
「こ、ここ~は~」
「別のフロアだな。俺の訓練用のフロアになってる」
「あ……あれは……ど、どらご~ん?」
さすがの副団長もビビった感じか。そうなんだよね。この国だけでなく、人族の国ではドラゴンは非常に大きな脅威として恐れられている。
まあ、昨今は世界中から魔力が失われているせいか、ドラゴンを見かけることはほぼ無い。強力な高レベルの魔物が発生し生活するには、莫大な魔力、魔素が必要となる。
深淵の森の中央、ここからだと奥にいるんだけどね。
「ああ。アレを。倒す」
三匹を【結界】「正式」で封じ込めて……「爆裂火球」を数十発ぶち混む。なんとなくドラゴンが引き千切れていくのを見せるのもなんだ……と思ったので、黒くしてある。ああ、何が起こってるのか予想はしてもらいたいので遮音はしていない。
連発する爆発音。ドラゴンが黒く四角い【結界】で囲まれて姿が見えなくなった……と思ったら、凄まじい爆発音が連発して響いてくる。
「ここれは~」
「ああ、【結界】でドラゴンを封じ込めて、中で魔術で爆発を発生させてる」
「そ、そんな……ことが~」
ん? アーリィの顔色が、表情がおかしい。なんかショック……なのかな? ってあれ? 変にビビらせちゃった……かな?
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