348:ジム通い的な

「アーリィをダンジョンで鍛えるのは……ダメなんだっけ?」


「本来であれば……配偶者機能の使用相手は迷宮創造主マスター以外に、女神認証が必要となるのですが。現在一切の連絡が取れない状況になっています」


 うん、なんかそれ聞いた。なんで女神に認められなければいけないのか良く判らない。本当に判らないけれど、このシステムを構築したのは彼女なので、そのルールには逆らえないか。


「ということで、緊急自体ですので、全て迷宮創造主マスターに一任されます。「もう子どもじゃ無いんだから、配偶者くらい自分でも選べるでしょ」とのことです」


「なら、なんで認証が必要なんだよ……」


「確か「どんな相手なのか気になるからちゃんと報告を受けるようにシステムに組み込んじゃお~」だったかと」


 なんだそれ。女神……。


「現状はそんなことを言っていられる場合では無い状況だと思われますので」


「……んじゃアーリィは連れて行っていいのでね?」


「問題ありません。もう、迷宮創造主マスターまみれですからね」


「そういう下品な冗談はよせ」


「はい。よします」


 正直……アーリィは……エルフのブートキャンプにブチ込んでもいいくらいのレベルなんだと思うんだけど……それは無責任だよな。 


 とりあえず、なんとなく。


 みんなの登龍門、ハイオークの出番だな。


 ある程度メリハリのあるように広間を設定する。まずはそれだけで良いだろう。彼女の力の確認用だ。


 武器防具……は……いるな。うん。現在の彼女の装備は冒険者風の服と、革の部分鎧くらいだったもんな。剣もその辺の鍛冶屋で投げ売りされているランクの剣だ。


 鋼の剣+2は森下の両手剣と同じ様に、鋼の片手剣を強化したものだ。


 しかし、これ以上の強化も出来ると思うんだけどなぁ。まあでも、試行錯誤、工夫が必要なので、ここまでのしておこう。出来る事なら鍛冶とかもやってみたいけどな~。


 アーリィは基本騎士としての訓練しかしていない。なので、武器は片手剣と両手槍。馬上槍。片手棍くらいしか使えないそうだ。


 まあ、それだけ使えれば良いと思うけどね。訓練の関係上、武藝百般とはいかないのです~とかなんとか言ってた。


 全身鎧に身を固め、片手剣に盾を持ち、正面から戦うのが基本スタイルだそうだ。


 なんか、正正堂堂っていう騎士のプライドがやっかいだけど……乱戦時等は最終的にどんな手を使っても勝てば良いになるみたいだから、イロイロと鍛えておいた方がいいんだろうな。


 正直……全身鎧って一定の密集集団戦じゃないとお薦めできないよなぁ。


 まあでも、魔術と相性の良い金属を使用した鎧であれば、抗魔術能力を上げたりもできそうだ。


 ああ。確かにいいかもしれない。魔術をレジストする全身鎧。フルフェイスの兜もあって、一切を遮断するっていう。鎧を魔道具と見なしてしまえば、いくらでも魔改造できそうだ。


「……そういうレベルでの細かい注文が施された鎧を、伝説級の武器防具と呼びまして。様々な効果が付与された装備は、錬金術だと難しいハズなんです。それこそ、高レベルの鍛冶、彫金、裁縫、革細工、骨細工……さらに付与術士が手を合わせて制作するものだったかと」


 そう……なのかなぁ。作らなかっただけじゃないかなぁ。


「だってさ、この籠手とか、形は籠手だけどさ、これ自体にこうして、魔術紋を刻むじゃん?」


 ゴーレムの……なんか重要部分を細かく砕いた素材で魔術紋を描き、それを定着させる。


「で。これに魔石を組み込む。ほら。これでこの籠手が魔道具となった」


「……ちなみに効果は……」


「んーと。俺の【結界】「正式」を、この籠手を包み込む様に発動させてる。だから」


 籠手に向かって、剣を振り下ろしてみる。鋼の剣+2だ。普通であれば……これくらいの金属籠手は両断出来る。


 が。


キン……


 それが当たり前の様に、【結界】が刃を防いだ。


「な? これ、ただの【結界】付きの籠手型魔道具って感じ?」


「ただの……じゃないです……。この籠手を破壊するには魔力切れを待つしかないってことですよね……」


「まあ、そうかなぁ。いや、多分、俺が全力で斬りかかれば……いけると思うよ。本来の【結界】の五十分の一くらいの性能だから」


「そうですか……。はい。なんていうか、いえ、本来私は別に何かを反対しているわけではありませんので。迷宮創造主マスターやその部下が、強化されるのであれば何も文句はございません」


「シロ。すねるなよ。お前が、今は当然として、昔で考えてもかなり規格外だ、ということを教えてくれるから、隠蔽工作をちゃんとしないとな……と思えるんだから。まあ、とにかく、この籠手……もおかしいんだな。それこそ、帝国……宰相に渡れば、何か対策されたり、気付かれたりする可能性が高いだろうな。注意しよう」


「はい、そうですね」


 シロが、なんとなく嬉しそうな顔をした。


「まあ、この魔法紋は籠手の内側に施して……そして、魔石はいざという時の補助用として考える、と。で、基本的な動作は、装備者本人の魔力を使用する様にしておこっと」


「……迷宮創造主マスターそういうとこです」


 ぬぬ。シロが一転してあきれ顔だ。


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