344:奇跡の代償

 辺境騎士団副団長、アーリィの去就は伝え聞く所によると、かなり大事になったらしい。


「王家……正確には王妃陛下だな。副団長が傷一つ無い顔を見せた途端、手のひら返しでハーレイ帝国辺境伯との婚姻を勧めてきた」


 うわ……。


「まあ、その辺境伯は武に長けている上に好色で有名でな。年齢は既に六十歳を超えているんだが。これは献上品の様なものだな」


「王妃はなぜ……そのような事を?」


「王妃の出身がクルスン王国なのだよ。かの辺境伯の領地は、クルスン王国と国境で接しているのだな」


「……そんなふざけた……」


「ああ、当然、王家、いや姫様がそんなことは許さないのだがな。ただ、アーリィも、あの歳まで未婚で過ごしてしまった。客観的に見て「そのような」相手でなければ、結婚は出来ないのでは? 等と言う者もいてな」


「最終的には?」


「アーリィ……いや、副団長が廃爵を願い出て、騎士団を去ることで決着となりそうだ。その際に、当然、平民に落ちるのだから、王族であることも抹消される。というか、それくらいしか……彼女の選べる選択肢が無かったということだろう」


 ディーベルス様はまあ、うん。アーリィの傷を治療したのは俺だと確信している。なので、この話は何度かしているので、俺が副団長に付いてそれなりに詳しくなってる事に異和感は感じていない。


「サノブ殿。アーリィは……ここに帰ってくるのだな?」


「……そう言ってましたが」


「まあ、うん。貴殿といるのであれば、安全か」


「……安全では無いと?」


「王妃からの提案、王妃の決めたありがたい縁談を無碍にした……と、憤る配下貴族はいるだろう。……というか、既に、現場で……彼女に腹を立てた雑魚が斬り捨てられた様だ」


 手にした書簡、まあ、手紙を机に投げる。


「私の身内に手を出されたら。喧嘩を売られたら。狩りますよ?」


「……くれぐれも……証拠は残さない方向でお願いしたい。これはその、しがない辺境のいち領主としては如何ともしがたい」


 そうですよね。というか、ぶっちゃけ、貴族社会の勢力争いとは無縁でしたものね。色々と厳しいですよね。


「ええ。それはもう。というか、その流れで言えば……姫様も制約が多くなるということでしょうかね?」


「それはもう、そうだろうな。特に右腕である副団長をもがれた状況だ。姫様の半分以上はアーリィが支えていたと言っても間違いでは無い。傷痕があった頃であれば、姫様の権限内でどうにかなっていたのだがな」


「そうですか……」


 まあ、深い考えなく、傷痕を消しちゃった俺が悪いか。姫様の権力よりも王族の義務が強かった……と。それを穏便に解決するには彼女は爵位を投げ捨てるしか無かった。ある意味、傷があるというだけで、ここまで無視してきたのは王家なワケだから、自業自得な気がするんだけれど


 それでも、王妃様の提案を拒絶するとはあり得ない。プライドを傷付けられたとイキる取り巻きは……いるんだろうなぁ。


「サノブ殿。副団長……アーリィをよろしく頼む」


「はい。分かりました」


 任されちゃったなぁ……狡いなぁ。まあでも、それくらいじゃないと、か。

 ディーベルス様は優しすぎるからな。領主としてそれなりに強くなりつつあるのは良い事なんだけどな。


 俺も自分を確認しておこう。


 現在の錬金術士だ。マイクロチップ……じゃないや。アンテナチップか。アレを作成したせいか、一気にレベルが上がっている。


名前 村野久伸むらの ひさのぶ

種族 ハイエルフ


天職 錬金術士

階位 45→53

体力 105 魔力 180


天職スキル:【錬金術の知識】【練成】【錬金術・陸】


=隠蔽=========

天職 迷宮創造主ダンジョンマスター

階位 42→44

体力 32 魔力 171


天職スキル:【迷宮】【結界】【鑑定】【倉庫】【収納】

【異界接続】【渡界資格】【言語理解】【次元扉】


習得スキル:

【気配】【剣術】【盾術】【受流】【反撃】【隠形】【加速】【棒術】【拳闘】【魔術】【手加減】【周辺視】

=隠蔽========= 


【錬金術・陸】を入手している。


【錬金術・陸】:

魔術背嚢:中級拡張:重量軽減40%程度:


上級ポーション

上級ゴーレム


初級装備強化


 うん。正統派な上級ポーションの作成レシピが入手出来た。


 あとあれか、メイド服の強化が出来たのは、この初級装備強化を先取りしてた……感じか。何となく出来る……と思って出来ちゃうのは、もうすぐ入手出来るからってことなんだろうな。


迷宮創造主マスターは……このレシピとお構いなしで物を作られるので……)


(でもだから、ガンガン、レベルアップしてるんじゃないの?)


(その通りです。創造性というか、独創性というか、その辺のボーナスが加わっている様です。それにしても天職のレベル上げに「好き勝手にイロイロやってみる」が大きく関係していたとは……)


(「好き勝手にイロイロやってみる」のが浪漫なんじゃん)


(ムチャクチャとも言いますよ?)


 というか。今回、上級ポーションのレシピが入手出来たということは……このレシピ通りの素材で錬成を行えば……上級の上のポーションが創れるのかな?


(そうかもしれません……が)


 って上級ポーションの材料、正式レシピにある素材のほとんどは、俺のストックの中に無かった。


(すぐには作れないか)


(当然です。上級ポーションって……私の記憶、昔の情報ですが作成できる錬金術士は世界で数名だったハズです。世界に数百本あるかないかっていう)


 そうなのか。……アーリィに何本使っちゃったか覚えてない。



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