340:ハイオークパーティ
相変わらず、松戸、森下のステータスは見ることが出来ない。
が、彼女達はダンジョンで訓練を行っていることで確実に強くなっている。
それこそ、こっちの世界に来てかなり強くなっている理由は、ダンジョンでの訓練以外考えられない。
「謎とかではなく単純に、女神の……設定忘れではないでしょうか。あの、その、私か言うのも何なんですが……かのお方は太古から、うっかりミスが多く……」
神がうっかりミスはマズイだろ。まあでもなんとなく判る。行き当たりバッタリな予感がする。
「とりあえず、訓練しよう。訓練。今回、君らに用意したのは、ハイオークの皆さんです。同時に四匹」
レベル51 ハイオーク M 獣族
レベル51 ハイオーク M 獣族
レベル56 ハイオークマジシャン M 獣族
レベル59 ハイオークビショップ M 獣族
「彼ら、当然の様にパーティを組んでいて、強敵です。通常の数倍と考えた方がいいかな」
「はい」
「畏まりました」
「とりあえず、戦ってみようか。今回、真面目に強敵だから気をつけて。ヤバそうなら介入するけど」
二人が頷いて、前に出る。
最初のフロアは広めの運動場、野球場と行った感じのスペースだ。
両手剣を持った森下が前。鞭を手にした松戸が後に付いている。
「貴子さん、後衛の両手杖が多分、魔術士です。それ速攻でお願いします。で。片手杖が回復役だと思うので、自分が三匹引付けます」
「了解」
おおう。さすが森下。敵の編成を一目見て見抜くとは。というか、そういうのも才能の一つだよな……。
ドンッ!
あっという間にヤツラの只中に突っ込んだ森下。わざと大きく無駄に両手剣を振り回し……ハイオークの腕を浅く斬り付けながら、敵の注意を引きつけている。
なんというか……大きな剣を使用した避けることをメインで考えた盾って感じだろうか。
とはいえ。これまで戦っていたオークよりも遥かに強いハイオークだ。さすがに四匹全部は厳しい様だ。さらに、森下の予想通り、マジシャンは魔術の詠唱を開始している。
森下を中心にハイオークが囲んでいて……前衛の二匹が側に。その外側にビショップ。さらにちょい離れてマジシャンという形になっている。
ギシッッ
一番外側のマジシャンの首に……黒い……鞭が食い込んだ。
ゲフッ!
背後から近付いた松戸が、鞭を引き絞る。今、彼女の使っている鞭は、非常に極薄の合金製だ。
使用する際の角度……敵にぶつかる瞬間の、相手の状況に合わせて、刃をコントロールする必要がある。それを瞬時に……それこそ、感覚で操作しなければいけない。武器として非常に難しく、扱いにくい。森下は「あたしには無理ですー」と早々に諦めた。
松戸が手首を返した。クイッ……と、途中から裏返る様に、鞭の先端から、刃部分が首に食い込む。
ブグプァッ!
ハイオークマジシャンの首が跳ね飛んだ。
! スゴいな……。
アレは……ただ鞭を絡めて、引き絞っただけじゃ、ああは為らない。最初に食い込ませて、そこから……テコの原理では無いが、鞭先を別モノの様に絞ることで可能になる技だ。薄くしなりやすい、俺が錬金術で創り出した特製の鞭だからこそ、可能にしていると思う。
って俺にはそんな操作、出来ないけど。
松戸の鞭は……正直、対人戦用として考えていたからなぁ。それをちゃんと大きめの敵にも通用するように、技を開発し、改良したのか……。悔しかったのかな……。
ズン!
最後の咆哮。そして首が中へ飛ぶ音。さらに崩折れる音。
それに気がついた残りの三匹の注意が、一瞬。森下から離れた。その瞬間。
盾を持ち、棍棒で殴り掛かっていたハイオークが棍棒を持っていた腕毎、袈裟斬りで両断された。
森下の両手剣も当然、強化済みだ。俺は鍛冶士ではないので、イチから作ることは出来ないが、錬金術によって強化することは難しくない。
これは【錬金術・肆】で入手した、初級錬金盾というレシピから発展させた。
錬金盾というのは、ただただ、純粋に、盾を固くする……というものだ。魔術にある属性や効果を付与する……という物では無い。ただただ……固くなり、さらに、魔術に対抗出来る様になるという物だ。
【鑑定】で調べると、「鋼の盾」が「鋼の盾+1」という表示になる。
+1ってなんていう浪漫! ということで、試行錯誤した結果、「鋼の盾」は「鋼の盾+3」まで強化出来たし、「鋼の剣」は「鋼の剣+2」まで鍛えることが可能になった。
きっと錬金術のレベルが上がれば……もっと強化できる様になるだろう。
ちなみに、松戸の使っている「薄鋼の鞭」は「薄鋼の鞭+2」になっている。
正直、純粋に、刃こぼれしにくくなればいいなと思って始めたのだが、実際には切れ味も増している。+2になったら、弾性……というか、歪みから元に戻る復元力もパワーアップしている様だ。
森下が振り下ろした両手剣を……振り上げる、返す刃で……ハイオークビショップの左太腿から右脇腹へ振り抜く。
ググ……と力が入るたびに……ビショップがズレていく。
ザシュッ……
首元から股間へ振り下ろし……。勢いと共に、四散するビショップ。ちなみに、このビショップが、四匹のうちで一番、固そうな防具を身に纏っていた。盾も持っていたし。
それを一撃……。
ガップッ!
独特の音と共に……森下に後ろから襲いかかろうとしていたハイオークが、松戸の鞭で首を跳ね飛ばされた。
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