330:はうはう
錬金術の基本となるポーション。その中でも、メインとなるのは体力回復薬だ。文字通り、HPを回復する。というか、HPってゼロになると死ぬんだろうか?
(体力や魔力は、ゼロになると、気を失います。両方同時に失って、さらに肉体的にダメージを受けると死亡となる様です)
……それ、なんで今さら?
(私も学習しておりますので。この世界に来て広域の情報に触れることが可能になりましたので、そこから判明した事実です)
おお……ありがたい。分析してちゃんと報告してくるってシロは優秀だよな……。
(ありがとうございます)
体力回復薬:体力を回復する薬は
劣化:一般的に市販されているポーション。飲めないというか、飲みたくないよ……。
最下級:ゆっくりと体力を回復する。
下級:それなりに体力回復。
中級:瞬時で体力を回復する。
上級:煙がでる勢いで身体を治療する。抉られた……などの少しであれば欠損も回復する。
俺の中の判別はこんな感じだ。
つまり、上級はかなりランクが高い。というか、現状この国で、いや、この世界の市場で買えない様だ。まあ、森に点在しているエルフの領域で駄AIの様に、ハイエルフが作ってるとかもあるかもしれないけど。
現状俺は【錬金術・伍】までのレシピや仕組みが「理解」できている。
【伍】では
冷却具、病気治療薬、魔術背嚢、中級錬金盾、中級拘束陣符、中級回復陣符、中結界、簡易結界
とまあ、ランクは上がっているのだが、回復薬に関しては上位が存在しなかった。ちなみに【肆】でも無い。
中級回復薬は【参】のレシピ、仕組みだ。それを繰り返し、作り込んで行ったら、いつの間にか上級になっていたのだ。何でかは判らない。で、さらに上級を作っていたら、これに辿り着いたのだ。
「上級回復薬」:中品質:本来、上級回復薬が精製出来るハズが無いレシピで作成された。
本来、この上級は外傷に振りかけると、煙が出る勢いで治癒効果が発動する。
だが、現状、何度も上級を塗り込んでいるにも関わらず、煙が出るようなこともない。そもそも大きな反応が無いのだ。
何度も何度も。「上級回復薬」を塗り込んでいく。
しばらく……くり返すこと数十回。既に、「上級回復薬」も十本を空けた。
それくらいを過ぎると……さすが上級。一部であれば部位欠損の修復も可能な回復薬だ。微妙に変化が現れ始めた。
この上級回復薬、千切れ飛んだ腕が「生えてくる」ということは残念ながら無い。失った腕や脚を回復させるには、上級よりも上の回復薬が必要になるようだ。
まあ、多分あるよな。エリクサーとか、命の水とか……死んだ者さえ蘇らせる様な超伝説の霊薬が。
それを創れるようになるかどうかは判らないけど。
あ。そうか。部位欠損回復薬……なんてのもあるか。その前に。上級の一つ上がそれかな。多分。
なんていう……素数を数えるかのような思考を続けている間も、掌にパシャパシャして、上級回復薬を傷跡に塗り込んでいく。
目の前には、はあはあと息も絶え絶えな趣の裸の美女。
ただ。正直、ここまでしているのに、治療効果は非常にゆっくりと……時間が掛かっていた。どんだけひどいんだ……この傷痕。
じんわり。通常の切り傷や打ち身の様に、煙を上げながらメキメキと治療されていくなんてこともなく。
一瞬目を離した瞬間に、ちょっとだけ変化している、傷痕が薄まっていってる……という感じだ。
(ちっ……ダメだ。これは予想以上に……いや、予想の十倍は時間がかかる……)
(いえ、それでも、もの凄い事だと思われますよ? 正直、過去の症例的に考えても凄まじい効果です。あそこまで酷かった痕が薄くなってきています……上級回復薬にこのような性能があったのですね。
(そうか……まあでも、今日中になんとか目処を付けて、明日明後日で身体を休めて、肌を落ち着けて帰還……と考えてたんだよなぁ。それはちょっと難しいか)
(……普通に考えてその治療スケジュールは無茶です。今回こういう治療例が得られたので、今後はある程度なら予想が付くかもしれませんが……って、ここまで酷い傷痕は珍しいですけれど)
「アーリィシュ様……正直思ったよりも時間がかかる様です」
「あ~アーリィ……でいい……」
「え、あ、はい、アーリィ様、この後かなり時間が必要になりそうなので、食事等の用意を考えなければなりません。なので、場所を……私の工房に移そう……か……」
ムギュ……
という音が、自分の口から溢れたのが判った。
「はう……あう……あう」
抱きついた彼女が、唇を奪う。なんというか……必死だ。って相手がこういう状況でここまで冷静なのはどうしたものだろうか。失礼だよな。うん。
やさしく。必死にしがみついてくるのを邪魔しないように、俺も腕を回した。
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