314:帝国周辺国
「何も無くて良かった」
「はい。なんとなく……やな予感はしてるんですけどね!」
パシャパシャパシャ……
温泉が湧き続けている。ああ。やっぱ良いな。この国というか、この世界、お湯に入る、浸かる文化が無いからなぁ。
まあ、風呂はね、魔石使用の経済的な問題で仕方ないかもなんだけど、温泉が沸いている地方とか無いのかな? 聞いたこと無いな。文化として一切無いんだろうか? 今度、ディーベルス様にでも聞いてみよう。
「んで? なんで、森下はここにいるの?」
「順番であります! 御主人様の身体を洗うのであります」
さっきから、下着状態の森下が湯船の横に立っている。
「まあさ、カンパルラに戻るやいなや、温泉に直行した俺が悪いけどさ。報告は必要だからね。居なかったときの」
「それは、お風呂から出たら、貴子さんがすると思います。私はお世話を」
「そうなの?」
「ではでは。ええ。ではでは」
なんかなぁ~。疲れを癒やすために入ってるのにな~。
まあ、そういことになり。うん。盛大に失神した森下を松戸に任せて、風呂から上がる。
風呂上がりのポーションは最高だぜ! あ。美味しいヤツね。俺の作ったモモ(のようなもの)が入ってるバージョン。ほんのり甘くてサッパリしてて旨い。
「んで、森下からちょっと聞いたけどさ。何も無かったのね?」
「はい。少なくともシロメイド長のセンサーで感知出来る「敵」はカンパルラに近付いておりません」
「すでに彼らは大々的に二回、仲間を失っています。次はかなり慎重に……それこそ、遠方から仲間を集って攻めてくるのでは無いのでしょうか?」
おお。シロさん、それが正解だと思うよ。今回、ゴーレムを配置してから王都へ向かったのは、帝国側が、魔道具等で、電信や無線レベルの連絡方法を確立してて、最大速度で攻め込んで来られたら……と思ったからだ。
まあ、それは杞憂で済んだということだろうけど……。
その分確実に、次は本格的に攻め込んでくるだろう。
俺は……まあ、多分、現状、この国や帝国を含めて、優秀な魔術士だとは思う。錬金術士だけれど。
一人で何百、何千という魔物を相手取ることができるだろう。だが、さすがにその数を「石棘」で「一気」貫くのは無理だ。
この場合、多分、「火球」を「爆裂」を乱発することで対処すると思う。
そう。いくらオレが優秀でも、現状、それこそ、ゲーム的には範囲魔法、広域魔法を覚えていない。使い方……でそれに近いやり方が可能なだけだ。
「乱風」で「風刃」を暴れさせるということも出来る。が。それを広範囲にすればするほど、膨大な魔力が必要になる。
足りない。「一発でドン!」は不可能だ。
なので、敵がどれくらいの規模で攻めてくるかわからないが……多分、多方面から攻め込まれると、守り切れない可能性が高い。
「多分、敵は、こないだの隊商単位で行動していると予想します」
実体化したシロが、いつの間にかそこにいた。
「そうだろうな。アレがヤツラの基礎単位だろう。つまり、十四名」
「はい。ローレシア王国全土で発生した緋の月の仕業と思われる案件の数と、その隊商の数、そして発生した月日も合わせて計算しました。彼らは単一の案件をこなしているのでは無く、幾つかの任務を兼任していると思われます」
「うん」
計算してなかったが、多分そんな感じだとは思っていた。そういう、俺が面倒だからやらない計算をしてくれるのは嬉しいなぁ。
「結果、あの隊商がこのリドリス領担当だとして。大体、ローレシア王国には五~七程度の隊商が派遣されていたのではないか、と」
「うん。つまり……おおよそで百名程度かな。ローレシアはそこそこ大国だからその数だとして。ローレシア周辺諸国って、そこまで大国じゃないんだよな。確か」
「はい。詳細な面積は測定できておりませんが……北西のレデフ王国、南西のクオディア沿海州連合。私の過去の地形データとすり合わせると、面積的にそこまで大きくありません。両方の国、どちらともローレシア王国の四分の一ちょっと……というところでしょうか?」
「なら、その辺の国に五十名配置されていれば多い方か……」
確か、
帝国↔クルスン王国 ↔レデフ王国
↔ダーディド共和国↔サベリア ↔ローレシア
同盟国↔クオディア↔ 王国
↔ハディア連合国 沿海州連合
こんな感じだったはずだ。
帝国の近隣諸国は元々帝国領だったらしい。数代前の皇帝が愚帝で有名な人物で、叛旗を翻した貴族や民を抑えきれなかった結果だそうだ。
クルスン、ダーディド、ハディア、そして、サベリア。この四国は内乱、継承者争いの激化、海賊団による襲撃等……明らかに帝国宰相の策略によって、現在とんでもない混乱中だそうだ。
そりゃ……御愁傷様ってことで、もう、いつ潰すかの機会を探っているだけだろう。
でなければ……準備に時間が掛かっているか、だ。
その四国が侵攻併合されれば、次はレデフ王国、クオディア沿海州連合となる。特に、レデフ王国は「帝国の最東端」と呼ばれたこともある、旧帝国領だ。この地の奪還は一部の帝国貴族にとって宿願になっているらしい。
「とりあえず、近隣諸国からは無理でも……レデフとクオディアの担当者を、こっちに仕向けても……何も問題無いよな」
「はい、ありませんね。レデフとクオディアの仕掛けは、ローレシアと同じ様に「発生しても良いし、しなくても良い」っていうレベルでしょうし……」
となると。百名くらいの緋の月の構成員が襲来することになるわけか。
一気にそれは……厳しいな。
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