301:なにしてんの?

 最初の魔術士、男は水、女は火。次の二名の男女は土属性だった。


 というか……いろんな属性の魔術が使えるの……おかしいんだな。俺。

 地水火風、さらに闇と聖属性も5だって言ってたもんな……女神様が。


 まあ、便利だからいいか。リスクが無いなら。


 そして、今回初の……天職。付与術士と癒術士か。この二つはかなり稀少なんだと思う。どれくらいのパーセントかは判らないけど。


 今回さらに「貧民」地区以外の……王都「外」の三商会。「商業」の四商会を巡った。

 王都の七商会はこれまでの奴隷商会と比べて遥かに豪華で、遥かに落ち着いて丁寧な作りをしていた。対応もしっかりしていたし、売られていた奴隷も「ちゃんとして」いた。


 が。


 何一つ収穫が無かった。


 ちなみに現在、俺に公開されている天職はこんな感じだ。


★天職(戦闘職

戦士、剣士、槍士、拳闘士、魔術士、癒術士、弓術士、盗賊、吟遊詩人、付与術士


★天職(非戦闘職

文官、商人、職人(鍛冶、彫金、裁縫、革細工、骨細工、錬金術)、料理人、狩人


 売られていた奴隷の天職は、戦士六割。拳闘士二割。残りが剣士、槍士、文官、商人、鍛冶、裁縫や革細工などの職人、料理人といった感じだろうか。

 

 とりあえず、判ったのは。都市外で戦うことが出来る奴隷、つまり戦士系の奴隷は人気がある……いや、そういう奴隷しか人気が無いのだ。

 正直、奴隷は裏切らなくていいじゃないかと思ったのだが、奴隷を使って成功するよりも、市民を雇用して成功する方が評価が上がるのだ。


 まあ、それはそうか……。


 奴隷従業員の店と、市民従業員の店。


 もしも俺がお客だとして、店主を信用できるのは、市民従業員の店だもんなぁ。奴隷従業員が嫌とかそういうんじゃなくて、奴隷契約している者でないと信用できない店主……というのがね。評価しにくいよね。


 都市の外で奴隷の戦士を率いて魔物を倒す。その活動中の様子を見られることはほぼ無いもんな。


 ちなみに、男女比は7:3くらいだろうか。


 女性の奴隷というと、あちら目的だけど、強要することは基本禁止されている。内密で済めばいいが、城砦都市内という狭い社会に漏れるとかなり強烈な軽蔑をされるらしい。


 さらにこの世界には風俗業も多く存在している。その関係は結構複雑なのだ。


 ということで、今回の収穫は、魔術士×四名、癒術士×一名、付与術士×一名……だった。


 正直、この国最大の都市でこの人数、奴隷商会を全てチェックしたのに ……ということは、魔術士はそれほど数が存在しないのかもしれない。カンパルラでの引きが強かったのだろう。


 なぜ、若干グレーゾーンな奴隷商の屋敷の裏で病人や怪我人が放置されていたのか……といえば。

 他の健常者のおまけに付けられた、買い取ったときには発病していなかった、移動中に魔物に襲われて……等が主な理由らしい。

 まあ、この奴隷商はギリギリのラインで商売をしているため、利益を貨幣の代わりに様々な物で代用する事も多いのだそうだ。


 極まれに、俺の様な変わり者が買い取っていく事もあるから……と、二束三文で引き渡されたり、とりあえず、王都まで運ばれたりしたのだという。


 つまり、彼らはあのままだと死を待つしか無かったのだ。まあ、ぶっちゃけ、あそこに放置されていた中で彼ら四人が特別ヤバかったんだけどね。


 他に怪我や病で倒れていたのは全て戦闘職だった。身体が頑強であるというのは、ダメージを受けた時に耐えやすいのだろう。


「ありがとうございました……」


 重症な四名は、ほぼ一晩で話が出来るようになり、弱々しくも身動き出来るようになった。


 とりあえず、前の二人と同じ、従業員が住んでいる館の空き部屋に移ってもらう。「大地操作」で作った小屋は潰しておいた。


「彼らが馬車移動出来るくらいになったら、送ればいいのだな?」


 俺が来ていると聞いて、辺境伯閣下が顔を見に来た。


 ……まあ、偉い人が自ら下々の者の元に自ら足を運ぶなんてあり得ないんと思うんだけど。こちらの世界では特に。異例だと思う……ってまあそりゃ心配か。自分の屋敷で好き勝手やられてるのは。


「実はな……先に伝えておきたいことがあってな」


 ってでも、別の用があるよね。うん。というか、わざわざ? 呼び出してくれれば行くのに……ってことは、なんか後ろめたいことでもあるかな?


「カンパルラに王国辺境騎士団という新設の騎士団が、早急に派遣されるというのは聞いたな?」


「ええ。拠点防御だけでなく、ポーション輸送もやってくれるとか」


「ああ。なので、カンパルラに駐在するのは半数で、残り半数は輸送任務に就くと思ってくれて良い。第一、第二で交代制だな」


 まあ、判りやすく言えば、ポーション作成拠点であるカンパルラの警戒と、その輸送任務を司る騎士団だと思えばいいだろう。正直、俺は自分が楽できるのでラッキー程度にしか考えて無かった。


 ん? ということは……。


「この騎士団の……騎士団長……というか、責任者は?」


「……その……な。カンパルラ関係は……マシェリエル様が責任を持つ……と言われてな……。我が家にとって、姫様との絆は非常に大きな後ろ盾でな。私が護ると言われると断れなんだ……」


 あちゃー。天を仰ぐ。


 まあ、うん、判らないでもないですけどね……ええ。


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