295:作成委託
ベルフェに呼び出されて、エルフ村に来ていた。何でも……少々困ったことになっているらしい。
「本当なら自分達が赴く所を、誠に申し訳ありません。作業状況及び環境に問題が発生しているかもしれませんので、視察を兼ねて確認をお願い出来ませんか?」
と、丁寧な言伝がシロ経由で届いた。
エルフ村まではアンテナが配置されている。なので、長であるベルフェの家に通信室を設置した。まあ、元物置を片付けさせただけだけど。
その部屋に誰かが入るとシロが注意を向ける様になっている。後はベルフェが連絡の魔道具(偽)に向かって独り言を言えば、シロが俺に伝えてくれるという、画期的システムである。
「基本気付くと思うのですが、ごく稀に多方面の処理に忙しい事が有りますので」
通信室という、準備空間があれば、万が一もあり得ないらしい。
ということで、エルフ村に向かった。
「じゃあ何? どうしても、俺の作った様な粉末状態にならない感じ?」
「はい。お教えいただいたレシピ通り、各自が工夫をして作業を行っているのですが、どうやっても同じ物が作れず。品質が上がらないのです」
そんなに難しい事をしてるかなぁ。
「まずはホルベ草。これを粉々にする」
【結界】「正式」で作った球体の内側で「乱風」「風刃」で砕く。まあ、これは「正式」が使えないのは仕方ないので、特殊な金属の箱の中で行えと教えておいた。当然、その箱=缶も渡してある。
「で、結果が?」
「その箱の中なのですが」
箱の中のホルベ草は数センチ角で切られているものの、粉々どころか千切りにすらなっていない。
「ここからか……」
「申し訳ありません」
これはもう、純粋にイメージ出来ていないんだろうな。
なので、現在、絶賛、実演中です。
「おおーあんな風に……」
「何でそんな魔術が」
「使い方の問題なのか?」
なんていう反応の中、再度チャレンジしてもらうのだが……どうにも上手くいかない。
この村のエルフは、全員、風の魔術を使うことが出来る。
天職が魔術士で無くとも、訓練して使える様にするらしい。さらに弓術士で無くとも、弓を使える様にする。それがエルフなんだそうだ。
人間よりも寿命が長い事を利用して、延々と訓練するらしい。
なら……時間をかければいいだけか。最終的には俺と同じ事が出来る様になるんだよね?
「は。そうなのですが……その……魔術、特に「風刃」は敵を屠る為のモノというか、その、葉を砕くモノではないというか」
既成概念か……。本来ならここで、子供とか年少者の出番なんだが……このエルフ村で一番の若者は58歳。まあ、純真無垢……とはいかないよね。
まあ、彼らの使う「風刃」と俺の使う「風刃」ではなんか違う。というか、彼らに渡してある金属の箱。俺の「風刃」だとどんなに力を抜いても(そう意識しても)、刃が金属を貫いてしまう。威力が強いんだよな。
あ。そうか、ガラス瓶の方がいいのか……。この箱は薬缶という名で、DPで交換できる。ポーション瓶と同じカテゴラリだ。そこに、様々なサイズのガラス瓶が存在する。DPで交換できるということは、ポーション瓶と一緒で普通のガラスではないと思うんだけど……。
この辺の容器は全部、100個単位でDPと交換して、魔法鞄に突っ込んである。いつ、貴重な素材を手に入れるか判らないからだ。
「草が今、中でどんな感じになっているか見えた方が、良いよな」
ガラス瓶を渡すと、集められているエルフ達が頷く。現在ポーション作成に携わっているのは九名。高齢で戦闘が辛く感じる者達と、室内での作業が好き……というか、外に出るのが嫌だ……という者達だ。
とりあえず、ガラス瓶の採用で、それなりに細かく砕くことができる者が現れた。それを微細に出来るかどうか……が、大切なのだが。
そして、さらに問題が。
ホルベ草は新鮮というか、摘み立てが一番、素材としての価値が高い。当然、その葉は乾燥させていないし、大いに水分を含んでいる。
その関係なのか、ガラス瓶でホルベ草が砕かれているたびに、その水分で固まってしまう。ガラス瓶の内側にこびりついてしまうのだ。
これは細かくなればなるほど、顕著だ。
そういえば……俺の【結界】内での粉砕は……こんな風にならない。なんでだろうか。
イメージとして……完成品に粉を想像している……からだろうか? 粉砕の過程で水分を、【結界】外へ吹き飛ばしているのは明らかだ。
というか、吹き飛ばしているんじゃなくて、別の空間へ移動してる? それとも出てきた水分を……粉に加えてさらに、それも乾燥させている?
うーん。俺自身も判らない……。
ガラス瓶ではなく、ガラス容器(なんだっけか。メ〇ソンジャーだっけかな?)にして、それで同じ様に砕いてもらい、ガラスの内側にこびりついた半生、ペースト状のホルベ草を取り出して、それを回復水で溶く。
「初級体力回復薬-」
これでも……いける……のか。いいのか。
「サノブ様……今の過程でさらに問題が」
「ん? 何?」
「我が村には……「回復水」の術を使える者がおりません」
「おうふ……」
一難去ってまた一難。
九名の中に天職が魔術士の者が二人居たので、初期中の初期、水生成からイメージと共に教えてみた……が。
「詠唱無しでは……」
「呪文かー」
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