294:鑑定・陸

「帝国でも天職やレベルの解析はあまり進んでいない、というか、知られていないみたいだな。こないだの商隊、率いてたキシャナとか言ったか。彼は盗賊だったけれど、他のメンバーは剣士、戦士、そして拳闘士なんていう前衛職ばかりだった。戦闘能力を中心に、隊員を選抜すると、ああなるんだろうな」


「あ。そういえば。これを……」


 森下が見慣れないポーション瓶? を取り出した。


「これは?」


「ここ数日。御主人様がディーベルス様と会談などをしている間に……戦場となった森を検証してきました。そこで拾ったのですが。彼らの持ち物ではないかと」


 ……テンション高く……ふざけてるだけじゃないんだよな……。


 確かに、そのポーション瓶は、俺の使っている物とは完全に意匠が違う。俺のはガラスの様な素材で出来ているのだが、こちらはオール金属製だ。


 落としても割れないという意味では金属製は正解だろう。


 って、まあ俺のポーション瓶は迷宮でDPと交換してるヤツで、強化ガラス製なのか、石に叩きつけても割れないんだけど。これ、基本回収する様にお願いしている。洗って再利用できるからね。


「これが帝国製のポーション……か」


 開けて見る……うん。匂ってみるにポーションだ。グラスに空けて……鑑定。


「劣化体力回復薬-」


 なんですか。これ。劣化体力回復薬の上にマイナス付いちゃってるじゃん……ってアレか、放置されたから……か、作成されてかなりの時間が経過しているからか。


「森下……ちょっと飲んでみて」


「やですよ……貴子さんどうぞ」


「お断りします。ここは専門家である御主人様、どうぞ」


「……お前ら」


「では一口。迷宮創造主マスターの作られるポーションに比べて……というか、この街で売られているポーションが劣化した物と判断します。かなり苦み渋み成分が増しています」


「シロメイド長……」


 この国のアレと変わらないのね~。そりゃ不味いよな。


「帝国の錬金術……少なくともポーションに関しては王国と変わらないということか」


「そうなりますね。世界全体で錬金術技術が劣化しているというのが確認されつつあります」


 そうなるよな……。

 

 ああ、そういえば、最近行き損ねていた白い部屋。とりあえず、行ってレベルアップしておいた。まあ、強制睡眠があるから、迂闊に行けないっていうのがね。


 一度、ダンジョンに飛び、戻ってくると。


----レベルアップ----


 魔術士のレベルがアップしました。スキル【魔増】を習得しました。


迷宮創造主ダンジョンマスターのレベルがアップしました。スキル【鑑定陸】を習得しました。


「魔術士のレベルが81になりました。迷宮創造主ダンジョンマスターのレベルが42になりました」


「寝る?」


「はい。ただ、それほど大した時間にはならないようです」


「結構なレベルが上がった気がするんだけど? 今回俺にダウンロードされる情報は大したものでは無かったって事?」


「そう……なりますね。ですが【鑑定陸】はかなり便利かと思うのですが」


「そうなの? ってヤバい……もう、来た。とりあえず、こっちで寝るわ。松戸、森下には伝えておいて」


「了解いたしました。おやすみなさい」


 といった感じで、約半日。12時間ほどの睡眠を経ての現在だ。


 で。レベルアップしたステータスが。


名前 村野久伸むらの ひさのぶ

種族 ハイエルフ


天職 魔術士

階位 71→81

体力 103 魔力 174 


天職スキル:【平静】【魔術伍】【魔増】【復唱】【輪唱】


=隠蔽=========

天職 迷宮創造主ダンジョンマスター

階位 38→42

体力 31 魔力 162 


天職スキル:【迷宮】【結界】【鑑定】【倉庫】【収納】

【異界接続】【渡界資格】【言語理解】【次元扉】


習得スキル:

【気配】【剣術】【盾術】【受流】【反撃】【隠形】【加速】【棒術】【拳闘】【魔術】【手加減】【周辺視】

=隠蔽=========


 今回、追加された【鑑定陸】は物の品質、そして詳細の表示らしい。


「ホルベ草」:低品質:一般的に薬草と呼ばれる草。そのまま食べたり、患部に貼り付けるだけで傷が癒える効能がある。さらにすり潰し、蒸留精製などを繰り返すとポーションの材料に。

 

 毎度おなじみホルベ草だ。知ってる事だけど、詳しく表示された。


「ホルベ草粉末」:低品質:ホルベ草を粉砕した物。


 なんていうか……あまりレアリティの高い説明は為されない様だ。


「竜の血」:高品質:ドラゴンの血。


 これしか表示されない。これ、多分、ある程度俺が知っている範囲でしか表示されないんじゃ無いかな? 


「シロ……これ使えるの?」


「例えば、見知らぬ名前の草があったとします。名前だけですと、その草が素材として使えるのかどうか判りませんが……」


「ああ、そうか。最近あまり、ちゃんと迷宮探索とかしてないから忘れてたや」


 ホルベ草なんて、最初、薬草って判らないもんな。つまり、これまでは~


「ホルベ草」


だけだった。これだと、ホルベ草が使える草なのか、そうでないのか判らない。別に使えないのなら良いが、超高レベルな素材だった場合、ポイしちゃったら勿体ない。


 まあ、俺も……現在では経験則としてホルベ草が非常に大切な薬草だと判っている。だが、最初に試しに「回復水」と「モモ」と混ぜて、グリーンスムージーを作成してみなければ、その性能に気付けなかった。


 でも。


「ホルベ草」:低品質:一般的に薬草と呼ばれる草。そのまま食べたり、患部に貼り付けるだけで傷が癒える効能がある。さらにすり潰し、蒸留精製などを繰り返すとポーションの材料に。


と最初から表示されていれば、確実に保存しておく。もしもすぐに使えない素材でも、保存しておこうと思うだろう。


「確かに、有効か」



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