279:村人軍人化計画
ハイオーク狩りは順調だった。
たまにハイウルフの群れが混ざるが、基本はハイオークが数体、または単独で行動しているのを見つけ次第潰す。
ハイオークも固有種に率いられた集合体や集落もあるらしいのだが、森の中央部、さらに東に位置している様だ。西側には目立つ反応を発見できなかった。
さすがにドラゴンのいた辺りにすら近寄っていないし、それを越えて向こう側にまで……は遠征できない。
正直、俺一人ならどうにでもなるが、足手まとい共がいるとどうにもならない。さすがに無駄に全滅は……勿体ない。
勿体ないと思えるくらいには、ヤツラの成長も著しい。
こちらの世界の人は朝、目が覚めるとレベルが上がる。正確には一定以上の経験値を稼いで、一定以上の睡眠時間を経過するとレベルが上がる。
ただ経験値的に条件を満たしていても、ランダム要素もあるようで、二、三日上がらない……なんてことも別に普通の様だ。
判ったのは、レベルシステムを本人が意識していると「上がりやすい」様だということ。
少なくともこの五人はレベルシステムの詳細を俺が教えてからの方が、レベルが上がりやすくなった。と思う。
世界の常識として、魔物や獣と戦い続けていると強くなる、同じ行動、修行をしているとそれに熟達する……という法則は当然、認識されている。だが、肝心の朝目覚めるとレベルが上がる云々というシステムが失われ、忘れ去られているのだ。歪なんだよなぁ……。なんか。
約一週間後(多分それくらい)。彼らの平均レベルが40近辺になったので、一度エルフ村に戻ることにした。
これは破格のスピード……だと思う。
俺にはボーナススキルがあるから、レベルアップが早いとシロに何度も言われていたのだから。この世界の人のレベルはそんなに簡単に上がらないのですよ? と何十回言われたことか……。
うーん。なんでかな。俺のスキルが関係してるの……かな。どうかな?
(お、おお……ベルフェとも念話が可能になっています)
(お。そりゃ良かった。なら、ここから先は……)
「ということで、ベルフェ。この村の長として、お前達以外のクズを、一通り使える様に鍛えなおしといて」
「は。畏まりました。ローテーションを決めて、レベル上げに赴きます」
「俺とレベル上げしていたときとの違い……まあ、強いヤツとやるのは考えた方が良いと思うのだが、それ以外は適度に試してみて」
「は」
彼にはポーション各種、その他野営グッズを詰め込んだ魔術背嚢をいくつか預けてある。
魔術背嚢や魔法鞄の素材も、ドラゴン討伐の道中で各種ゲットしていたのだ。魔法鞄で無く、魔術背嚢なので、そもそも俺が使っている女神製魔法鞄よりも性能は落ちるのだが、カンパルラで見かけた一般的な魔術背嚢よりは格段に性能が良い。
入れておくのはポーション類と塩胡椒。油。そして簡易結界の魔道具くらいなので問題無い。
「良く判らないことがあれば、念話でAIに聞けばイロイロと教えてくれると思う」
「は」
(AI、お前は、この村をとにかく発展させることを考えろ。繁殖に関しては種族的な問題も多いだろうが、それ以外でも様々な事が教えられるはずだ)
(はい。畏まりました)
このエルフ村は、アレだ、俺が作り話として生み出した錬金術士の集団になってもらうことにした。
この村の中でも身体能力的に劣るお年寄り……まあ、エルフは結構ギリギリまで若者と変わらず動けるらしい、が、十名程度存在する。
なので、さすがに荒事は厳しいか、と、錬金術、特に基礎のポーション制作の為に雇うことにした。
その代わりでは無いが、村には塩、そして麦などの食料品や生活必需品を提供する。
あ。ちなみに荒事を行っていくメインの集団にも給料は支払う。彼らはそれで物を購入するのだ。
村長となったベルフェを含め、最初に強化した四人は完全に軍人的な思考で行動するようになっている。
新兵の教育も鬼軍曹な感じで任せてOKだろう。
若干俺に対する忠誠心が強すぎる……なんていうか、教祖的な崇め方で怖かったりもするが、まあ、真面目なのは良いことだ。
さらに、森下が帰還時に、カンパルラの街灯に設置したアンテナを、一定距離毎に設置して帰ってもらった。
これでシロの情報収集範囲を広げた上に、連絡が可能になった。
カンパルラを出てから既にそれなりの日数が経過している。
(んで。何かあった?)
(ディーベルス様が王都よりお戻りになり、
(さらに緊急案件は?)
(緋の月の手の者が情報収集のためでしょう。侵入を繰り返しています)
(うーん、まあ、そろそろ……全員行方不明になってもらおうかな。出来るよな?)
(はい。転ばすことが可能ですから、当然、消し去る事も可能です。ですが、よろしいのですか?
(ああ、そうなんだけどね……この村で無駄に生きるってどういうことなのか……を考えさせられたしな。何よりも、現在、既に戦争中だからさ。それこそ、戦時中の他国との情報戦で地道に勝利していかないと、自国民の犠牲が増大するだけだ)
まあ、それ以外にもな。
(ここで異常事態が起これば、彼らをおびき出して、帝国宰相の戦力を削ることが可能……でしょうか)
(そうだねぇ。そうしておかないと勝負にならないくらい、国対国だと、戦力差がとんでもなさそうだからねぇ)
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