269:24時間いつでも

 コインサウナ的に、魔石投入式でいいか。ストーブに魔石投入口を用意して、そこに魔石が投入されると、発動する様にする。

 この辺は焜炉を作った時に検証したから……多分、このゴブリンの小さい魔石一つで、2時間くらい使用出来るハズだ。逆にそれ以上稼働しないから、安全で良いかもしれない。


 錬成で細かく調整しなければ成らない場合は錬金術士に。土の魔術で大胆にDIYする場合は魔術士にジョブチェンジする。


 シロとコンタクト可能なエリアが拡大した成果は大きいな。


 でと。でと。サウナストーン……にする石は……以前、イロイロと回収した中にそれっぽいのがあったのでストーブの周り、上に創り出した鉄籠の中に、詰め込んでいく。この石……何だっけな。【鑑定】すると


御影石 


 ああ、現場なんかで見知った石だったから取っておいたんだった。イロイロと使える汎用性の高い建材だったよね。この石。庭の花壇の境目とかに使ってた気がする……と思って取っておいたんだった。


 よし。問題なし。完成だ! いつの間にかストーブもチンチンに熱くなっている。さっき、魔石入れたからな……。忘れてた。汗が……ダラダラに流れ始めた。思ったよりも作業時間が掛かりすぎたな。


 こ、これはもう……。


 その場で服を脱ぎ、サウナを堪能する。5分程度経過……砂時計いるな。


 そして、外に出る。服は脱衣場に投げ出す。シャワーで汗を流し……水風呂に!


「ぐはーーーーーー!」


 く、くる! これは……。一分くらいで耐えられなくなり、外に出て……。やはり、脱衣所か。脱衣所に行って……やばい、椅子がない! ここは大体、二畳間くらいか。ちょっと狭い。こうなったら……リクライニングなスペースとシートを作ってしまおう。

 

 まずは、奥に部屋を広げる。この奥は外壁のみだったはず。怒られちゃうかもだけど……こんなのそう簡単にできないから良いよね? うん。内緒だよ。


 あっという間に、二畳間が、六畳くらいに拡張された。足元は全面、珪藻土っぽく仕上げた。これなら、乾燥も早い。

 そして、そのスペースに、寝っ転がれるタイプのバカンスシートを創成する。身体のサイズな窪みを作って、早速座る。


「ああああああー」


 声が。嗚咽の様な唸り声が……腹の底から流れ出ていく。なんか久々だ。あ。これ、もう一回行けば確実に整うな……凄いな。異世界でサウナ。しかもお風呂が豪華だ。タオルは……確か、前から幾つか置いてあったよな。


 更衣室の隅の棚にタオルが積み重なっている。ああ、そりゃそうか。みんな使ってたもんな。ここ。タオルを腰に巻いて。


 ドアを開けて。


「ねえねぇ、冷たいお茶……持って来てくんない?」


 かなり大きい声で行ってみた。


 うん、予想通り、なんだなんだと、みんなやって来たようだ。


「なっ! こ、これはっ! ゆ、湯気? そして……」


 クンクンクン……と鼻の鳴る音……


「温泉! さ、さらに! サウナ! そして、しゃ、シャワーーー! 異世界への文化侵略! キターーー! というか、便利ーうわ、うわ、うわっ! 御主人様、相談しようと思ってたんです! 思ってたんです!」


「森下……落ち着いて。うん、ご、御主人様、こ、この度はこれはその……というか、ここはあの、私達も……その……」


「ありがとう」


 お茶に氷が浮かんでいる。向こうの世界から持って来たグラスに、並々と……おいしそうだ。


「ぷはーーーー! 当然、みんな入って良いよ。俺一人だけだなんて勿体ない。というか、俺一人なら作らなかったかもだし」


「こ、これを御主人様が一人……で……えぇぇえ! というか、さ、さっきから……ですよね? 私達が台所仕事をマイアと一緒にイロイロと……っていうか」


「ご、御主人様、あの台所の魔道具は……本当に全部使ってもよいのでしょうか?」


「ああ、当然。便利でしょ? 二人は全部使いこなせてるから、詳しくは教わってね」


「あ、あんなスゴイ料理用の魔道具……お父さんですら使ったことがない様な物が……沢山で……」


「そっか。まあ、ハルバスさんにならいいけど、それ以外にはあまり言わないようにね。近々で発売するつもりは無いから」


「はい、はい! あの、れ、冷蔵庫もですが、それよりも冷たい、冷凍庫に、常に、氷が、あの、氷があるのが、もう、見たことも聞いたことも……」


 うんうん、ワクワクしてるのが伝わってくる。アレだ、メイドズ二人は既にお風呂に全力集中だけど、マイアは自分の職場の環境にワクワクが止まらない状態なんだろうな。


「ご、御主人様、あの、わ、私達も入っても……」


 こっちの二人はもう、温泉に夢中だ。


「ああ、構わないよ。基本マナーは一緒だけど……家庭風呂だから、どうでもいいか。気にする?」


「い、いいえ、あの、お風呂に入れるだけで!」


 あ、あれ? 松戸……? いつもの君らしくないというか。


「あの、御主人様、貴子さんは無類の温泉好きで……休日は良く、秘湯巡りとか連れて行かれました……」


「お、おう……」


 ああ、いるね。そのタイプの女子。というか、目が、マジだ。


「ち、ちなみに、温泉は深さ850メートル程度からの源泉掛け流し。ここまで引っ張り上げるまでに温度はちょい下がる感じで適温よりもぬるめだったから、ちょっと熱している感じ」


「源泉! 掛け流し! 加温のみ、加水無し?」


「お、おう……」


「も、もう……お許しを……」


 そう言うと松戸は服を脱ぎ始めた。まあ、いいけどね……。


 あ。俺ももう一度入ろっと。立ち上がって、そのまま、温泉に入る。そういえば、さっきこっちに入って無かったわ。


「ご、御主人様、この温泉に……その、いつでも?」


 それは入っていいか? ってことかな?


「ああ、いつでも入っていいよ。業務に差し障りがなければ」


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