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「昨日……中断された、帝国の話なんだけど」
「はい!」
今日もテンション高く元気良いね……森下。そんなに異世界好きか。
松戸は。お茶を入れてくれている。すげーうれしい。起きて顔を洗ってすぐにお茶。一人だと絶対入れないもんな。
現在時刻は多分、朝の七時くらい。こちらの世界は夜明け前から動き出すのが普通らしいので、この時間の目覚めはかなりお大臣なのだと思う。
「昨日説明した、子息女に対する毒。そして、複数の魔術士が魔術を使用して嵐を発生させて、収穫を台無しにする。さらに、魔道具を利用した疑似
「それら全てが帝国宰相の策略なんですか? 何故そうだと気付かれたんです?」
「ああ……。それはさ、この国の地図に、発生した現象の場所を照らし合わせたら、もの凄く綺麗に分散してたんだよね。さすがにそこまで適度に配置されちゃうと人為的としか思えない感じで」
「……それは本当に……蒼き宰相さんにしてみれば、適当な策略な気がしますね」
おう。うん、そうだね。そういうところを部下任せにして、適当に放置しているだけなのは、宰相が自ら本腰入れて仕掛けて来ていない証拠だと俺も思う。
「さらに……各国、各地方の土着の問題を拡大するやり方は多種多様、多岐に渡る。どこからどこまで宰相の仕業か判らないくらい手が広い」
「緋の月ってもの凄く数が多い忍者組織なんですねぇ。一国全部が伊賀、甲賀みたいな」
俺もそう思う。
「で。ここリドリス領の土着の問題っていうのは山賊、野盗。辺境だけあって、魔物対策と共に昔から問題になってたらしいんだけど、ここ最近、被害が大きくなっていた……と」
「それが策略のひとつだった……」
「ああ」
「……ってそんなに詳しく、その話をしているって事は、御主人様……やらかしましたね?」
ギクッ!
「その山賊……というか、「緋の月」の下っ端に操られた山賊団辺りを殲滅しちゃいましたね?」
「……」
「山賊を殲滅。御主人様さすがです」
うん。松戸は至って冷静だね。そのままの君で居て欲しい。
「まあ、その通りなんだけど。それは全部、リドリス家の裏の「黒」って呼ばれてる人達にぶん投げてきたから、何か起こるとすればまずは、あっちなんだけどさ……」
「なんだけど……そうか。そうですね……リドリス家侮りがたし……という報告が宰相に上がれば、それを元に戦力が増強されるわけで、その際に、当然、この都市の……夜光都市でしたっけ? その話も伝えられて……こちらに目が向いてしまう可能性は……ありますね」
「あ、ああ」
森下の理解力の高さはちょっと引くな。
「さらに言えば。帝国は魔術や錬金術の革新的な発明とか、開発も行ってるらしい。まあ、だから、ここでこんな錬金術が普及し始めた……と知れたら……当然、詳細が知りたいとおもうだろうな~と」
「なりますね。その宰相さん、最新技術に敏感っぽいですし」
「なので、もしかしたら、ここにも帝国の手の者……まあ、緋の月の下っ端以上が派遣されてくる可能性は高いし……狙われる可能性も高いかな」
「つまり、御主人様は、私達二人に「気をつけろ」とおっしゃりたいということでしょうか」
松戸も大概鋭いよね……。異世界関係の知識は全然でも、本質は確実に見抜く。
「ん、まあ、二人に状況を説明したかったのもあるけどね。昨日言ったように、隠している……とはいえ、俺が錬金術士の一族の連絡員と思われている以上、確実に狙われると思うからさ」
「畏まりました。森下。こちらの世界では完全武装で問題無い様です。常時臨戦態勢で生活しましょう」
カチャ
松戸がスカートの下……太もものガーダーベルトに引っかけてあった暗器を取り出した。ナックルガード……に若干刃物が付いている感じ、か。そんなの持ってたのね。
「御主人様……こちらの世界では武器の携帯に関して何か決まりは無いのですよね?」
「多分、無いかな。冒険者とか剣や盾を常に持ち歩いているのが普通だし、行商人とかも腰にナイフを差してるのは当たり前だ。まあ、一見武器を携帯していなくても……影の者というか、裏とか黒とか言われている人達は確実に隠し持っているしね」
「向こうの武器で大丈夫ですか?」
「基本は……向こうの武器の方が高性能……かな。多分。特殊な金属……それこそミスリルもあるみたいだから、それを加工すれば、マジックアイテムというか、スゴイ武器が出来るかもだけど、実力のある鍛冶士がいないと作れないからなぁ」
「ど、ドドドドドワーフの鍛冶士とか居ないのですか?」
また興奮し始めた……。
「昔は……居たらしい。けど、少なくとも今は居ない。その足跡を知っている人も、伝説も特に残されていないみたい」
「そうですか……ドワーフ製の武器……凄そうなのに。あれ? というか、錬金術でマジックアイテム化とかはどうなんです?」
「武器の強化?」
「+1とか+2とかにするヤツです! 錬金術で付与するんじゃないんですか? 普通」
「そういえば……錬金盾っていうのが作れる様になってたから、武器の強化も出来る様になるかもな。もっと鍛錬すれば」
「おおー。なら、この私のアイアンナックルが、アイアンナックル+1とかになったりするのですね! そして、アストラル体しか持たない幽霊なんかの敵にも攻撃が可能になるっていう」
「それは知らん」
「えぇーそんなー御主人様ならできますよーさすゴシュなんですからー」
「知らん」
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