253:頼れ! 薬!

「んで。キスすればメイドズを向こうに連れて行けるんだっけ?」


 この屋敷であれば、シロとは連絡が取れるようになっている。なんか、シロの能力を上がってる気がする。


 というか、もう、なんか、ちょっと面倒くさくなってきた。


「はい。唾液多めのキスを……そうですね。五百回ほど交わしていただければ」


「……五百?」


「ええ」


「それ以外は性交による……」


「性交による体液の交換、浸透、摂取となります。こちらであれば、一回の行為で達成可能です」


「言葉はアレだけど、これって普通に致して中に出せってことだよな?」


「はい、そうなります」


 ……頭抱えるわ……そんなん。


「あ。迷宮創造主マスター。今、連れて行こうとされているのは、松戸、森下の両名ですか?」


「ああ、リスク無く連れて行けるなら、純粋に向こうでの生活が楽になるかな? と思ってさ。こっちからの連絡は、美香がいれば問題無いだろうし。でもな~結構面倒だし、するのは論外だし……って」


「松戸、森下であれば、問題ありません。既に女神からの許可も出ています」


「なんで? というか、女神、寝てんじゃないの?」


「女神ですから……というか、迷宮創造主マスターの身近な存在は事前に確認していた様ですよ?」


 探偵とか興信所に依頼されてたって聞いた気分。


「って女神はまあ、良いとして。あの二人が問題無いってどういうこと?」


「あの二名は、迷宮創造主マスターが強制睡眠で寝込んでいた際に、迷宮創造主マスターの精を採取し、経口摂取していますので」


「マジデ? なにそれ」


「ですから。迷宮創造主マスターが強制睡眠で眠っていた際に……その、迷宮創造主マスター迷宮創造主マスターが非常に力強かった様で……お身体を拭いていた際についつい我慢出来ず……の様ですよ? 森下はそれをした松戸にズルイと言って、次の日に」


 迷宮創造主マスター迷宮創造主マスターってシロさんや、なかなか駅売りのスポーツ新聞の記事的な表現をご存じですね……そうなのか。にゃろう……。なんか悔しいというか、なんか、腹立つな。


「じゃあ、えっと……後は……手を繋いで扉をくぐれば、そちらに?」 


「界渡りの際には、従者状態にしなければ危険ですから、肉体的、精神的に支配する必要がありますので……安全のためには、数回行為を。そして屈服させてください」


 ……数回の行為で屈服? させる? 俺ってそんなにそっちの才能ないと思うんだけど……。


「大丈夫です。女神から預かっております。「ガンバレールDX」がございます」


 ……なんか、銀色の丸薬の入った、大きな瓶を渡された。


「その……名前が怪しいんだけど……」


「性能は、そちらの世界の有名なお薬、バイなんちゃらの超高性能版……らしいです。副作用一切無し。燃える男が強くなれるそうです」


 ……なんかちょっと古い気がする……しかし、そうなのか……いやでも、なんで女神はこんな……。


「絶対この手の事で躓くことになるから……と、ダンジョンシステムを構築し始めた頃から、用意していたみたいですよ。私が聞いている、感じたのは……その、迷宮創造主マスターというか、ハイエルフの子孫繁栄能力の低さは尋常では無く、女神が神力を尽くしてでもサポートしなければと思えるくらいだったということで……」


 まあ、確かに、エルフですら……おとぎ話、伝説クラスだもんな……。繁栄してたらもっと普通に出会えるハズだし。そもそも女神が、わざわざ俺をこちらの世界から呼ばないか……。


「ということで、ファイトです。迷宮創造主マスター


 ぐんにょり。


「あのさ、そういえば。シロはなんで、松戸、森下の二人を呼び捨てなの?」


「よく考えなくても、私が先輩だからです! 迷宮創造主マスターの使用人の。筆頭は私であります」


「……ま、確かに……そう……か」


 へ、変なプライドがここにあった。会わせたことが無いというか、この部屋に入れることが出来なかったから、向こうはその存在を知らないわけだけど。


 自室に戻り……まあ……呼び出す。


「んで、何か申し開きは? 松戸」


「ございません。勝手なことを申し訳ありません……」


「森下」


「ごめんなさい」


 松戸、森下は土下座だ。……いや、なんか、君ら土下座好きなのかな? 判りやすいけど。


「あの……最初はただ、お身体を拭いていただけなのですが……その……あまりにもお元気で、身体を拭いている最中ずっと……いえ、完全に熟睡されているのに、終わってもずっと……で。正直……お辛そうでしたので……」


 そ、そうですか……強制睡眠中は本気で記憶が無いからな……。夢も見てないと思うし。


「アレは放っておいたらヤバいと思いました」


 うんうん、じゃないよ……。


「……あのさ、今回俺の旅……に連れて行くにあたって、どうしてもクリアしなければいけないのが、俺と君らの関係性なんだよね」


「はい」


 頷く森下。


「判りやすく言うと、だ。俺とそういう関係にならないと連れて行くことが出来ない」


「それは……配偶者の関係証明が必要ということでしょうか?」


「まあ、それに近いんだけど、必要なのは書類じゃなくて、実際の行為なんだけど」


「それは……あの、御主人様に抱いていただける……ということでしょうか?」


「う、うん、まあ、それは嫌……」


「ありがとうございます!」


「ありがとうございます!」


 起こしていた身体を思い切り……打ち付けるかのように、再度土下座する二人。いや、いま、額をぶつけたりしませんでしたか? 割れるよ?


「……どういうこと?」


「ふ、二人で話しておりました。支配されていたとはいえ……私達は多くの男と身体を重ねてまいりました。その様な女が御主人様に手を出されるハズがない、分不相応、なのだ……と」


「好きな……男としてきたのなら……その、恋愛経験豊富なだけですけど、わ、私達は、嫌いな汚い豚の様なヤツラに……なので汚く……なって……御主人様に相応しく……ない」


「なので、抱いていただける、手を出していただけるのは至上の喜び……でございます」


「夢見てました」


 そ、そうです……か。


「あと……その。美香さんを美香と呼び捨てにすることにした追加効果なのかもしれませんが……私達も呼び捨てにしていただける様で……うれしいです」


「うれしいです」


 それもなに?


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この話の続きは「253_2:意地悪」としてサポーター限定で公開しています。

意地悪なので。限定です。


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