252:アミュ
首根っこを持たれる感じで、美香は退場することになった。この後、お付きにどんな事を言われたり、したりするのかがちょっと不安。
まあ……でも、いいか。
「さすがに丁度戻るところだった?」
「はい。連絡をいただいた際には既にこちらに向かっているところでしたので」
「現状を聞きたいんだけど」
片矢さんの目が光る。
「正直……様々な部分で苦戦している様に思えます。実際、自分は倉橋様、三沢様と連絡を取る事すら、困難な状況です」
どういうこと?
「米国が……本腰を入れて、陰陽寮に乗り込んで参りました。元々、陰陽寮は「そこにあって」「そこにない」護国機関です。それが自ら、外部勢力を迎え入れたワケですから……自業自得。向こうの勢いが止まることなく、完全に飲み込まれつつあります。長老衆は……現状では完全に無力化されつつあります」
「バカか……それ、大丈夫なの? 日本の護りとして」
「大丈夫……とは言えないかと」
まあ、過去……日本の歴史上、何もかもを隠蔽してきたわけだしね……。
「さらに……御主人様の存在が……米国の更なる執着を招いている様で……」
ん?
「どういうこと?」
「御主人様が……亡くなった……というのは表向き受け容れられている様です。ですが……」
「DNAとか大変だったろうね……」
「ですが、御自宅が……御自宅の「結界」ですが、一切の物理的干渉、化学的干渉を受け付けないということが、この一カ月で証明、判明した様で……本格的な調査班が構成されるようです。それこそ、米国の裏社会からのアプローチではなく、既に、米軍の秘密部隊が動いております。アレは完全に大統領管轄であり、それを日本で活動させるために、凄まじく巨大な権力、巨額な予算が行使されております」
うわ……。
「「結界」は……「True Aegis system」、真実のイージスシステムとして研究畑の一部で取りあげられ、その情報収集の為に御自宅周辺は一切立ち入り禁止となっております」
「何それ……なんか腹立つな」
「TASの奥には聖域があり、そこに秘宝が眠る……と祭り上げられている様で」
「何にも残してないのにね。くくく」
「さらに……やつらの常套手段です。政府は米国に脅され「この近辺で戦時中の不発弾が発見されてその除去に一年近くかかる」という超法規条例を発動させました。そのため、周辺住人は巨額の報奨金を受け取って一年間の退去となっていますし、さらに近隣の住人の中には立ち退きを受け容れた方もいるようで」
「ちっ」
ムカつく。御近所さんに迷惑かけちゃったな……。まあ、あの周辺お金持ちが多いから、そう簡単に言うことを聞かないだろうけど。
「ですが、「結界」に関して、一切情報収集が出来ておらず、金に結びつかない状況に、色々と焦っているとのことですが……。ただ……」
「ただ?」
「これら強引な、御主人様への執着の元になっているのは……先ほど言いましたとおり、秘宝「ポーション」の存在です。アレを……「神秘の秘薬」として血眼になっている……者達が」
「……金持ち?」
「はい。世界中のほぼ全ての富裕層が絡み始めております……三沢様の所にいた医者……思っていたよりも有能で、さらに自己顕示欲も大きかった様で。現在はどうにも本物が手に入らないため、窮地に立たされているとの事ですが」
「それ、三沢さん達……大丈夫なの?」
「はい。それは。三沢様自身も米軍に様々なコネを築いておられますし、エミさんの姓はローレンバーグです」
「ローレンバーグ……もしかしてダイヤモンドシンジケートの?」
ああ。そうか。だから宝石を売り払った時に、あんなに早く手配出来たのか。
「はい。なのでそのツテも使っておりますし、対処が早かったので、詳しい事情は一切知らないという証明をされて、追求を逃れております。まあ、一部の……各種下っ端……下部組織の襲撃等は繰り返されている様ですが。さらに現状は倉橋様に雇われている形になっておりますので、安全性はかなり確保できているかと」
「それならいいんだけど……うーん。それさ、できれば彼らの周辺の警護を強化できないかな?」
「はっ。現在行っております、米国を初めとした敵勢力の調査が若干弱まることになりますが……」
「いいよ。倉橋さん、三沢さん……ああ、あと……ファーベル……森下社長と三人娘かな。彼らを護ることに集中して欲しいかな」
「はっ。畏まりました」
「特に……受付三人娘……は自衛能力が低いからさ。若島邸は「結界」で護られてるとはいえ、ヤバい瞬間もあるだろうし。そもそも、あそこに「結界」があると判明すれば、逆にヤバくなると思うんだけど」
「既に……目を付けられているのは確かです」
「なら、なおさら。お願い」
「はっ……物量で来られると……マズいやもしれませんが」
それはどうしょうもないだろうな……。ああ。そういえば。
ジャラ……
と、ものすごくシンプルな、魔石に鎖を組み合わせただけの「簡易結界」を取り出す。
正直、機能美すら感じられぬ、不格好なそれは人前に晒せる様なクオリティーではなかったが、この際仕方ない。
「これを……俺が「知っている」関係者に渡しておいてもらえる?」
「これは……」
「携帯用のアミュレット。御守りを作ろうと思ったんだけど、俺には致命的にデザインセンスが欠落していてね。このざまだ。まあ、服の下やポケットに入れておくだけでも効果は発揮するからさ。持っていないよりも持っていた方が良い」
「はっ。早急に」
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