249:いい歳で叱られる

 で。気になってたのが……システムか。


「なんだっけ?」


「システム、配偶者機能となります」


「……解説してくれる?」


「配偶者機能とは、迷宮創造主ダンジョンマスターの事を我が子のように心配する女神が、「絶対に必要でしょう!」と後付けされました。文字通り、迷宮創造主マスターの配偶者を受け容れる為のシステムになります」


「具体的には?」


「配偶者様が迷宮機能集中総操作室への侵入が可能となります」


「配偶者……の条件は? 肉親なら……俺にはもう、居ないのは……女神も知ってるよな? 確か」


「はい。配偶者とは文字通り、結婚相手ということになります。男女を問わず、迷宮創造主マスターに認められ、さらに、女神によって認められるし必要があります」


「……俺が認めるってのは良いけどさ……何、女神に認められる必要ありって」


「……あの……私にも……その……」


「起きたら直接文句言えば良い感じね?」


「はい……お願いします……あの……」


「ん?」


「もう少々条件で判明している部分が……迷宮創造主マスターのDNAを一定以上取り込んだ個体を気力で守護した状態=個体を従者状態にすることで、自分のダンジョンに移動させることが可能……です」


「……DNA?」


「はい。判りやすく言えば……キスによる唾液交換、性交による体液の交換、浸透、摂取が主になります……かね」


 ……。


「め、女神は多分……あの、ハイエルフの種族特性【冷静沈着】【合理的】【非協調】【生殖力小】を不安視しているのだと思います。過去……かの種族はすべからく、家族の形成という基礎的社会の構築が上手く行かないケースが散見され、最終的に人的パワーが欠落、人材不足に陥るという行き場の無い袋小路に入り込みました。現実問題……この手の話を迷宮創造主マスターは好みません。いい歳のおっさんがこの手の猥談を好まない時点で、子孫繁栄という意味ではおかしいのです」


 ……ああ、そう言われてみれば……そうなのかもしれない……。


「それこそ……迷宮創造主マスター、身近で考えて見てください。私は以前の私ではありません。この姿は、若干幼いですが、既に人種の「女性」を模して成立しております。これは女神が用意した物で、最終的に、迷宮創造主マスターのパートナーとして成立できる性能を有しています。別にそういう意味で使用しろと言っているわけではございません。ここまではよろしいですか?」


「う、うん」


「つまり、私は現時点の体形では幼年体として認識される可能性が高いため、若干能力値は低いものの、女性体として、性的な魅力が皆無……というわけではございません。この様に、多少ですが胸も膨らんでおりますし、腰もくびれております」


「うん」


 まあ、確かにそうやって見れば、シロは美少女だと思う。年若いアイドル……14~5歳のアイドルで居たら、大人気いけちゃいそうなくらい。


「が。ですが。問題は。迷宮創造主マスターは私がこの体形に変化してからただの一度も、性的な趣向を持って私を見たことが「無い」ということです。個人的な趣向がございますから、まあ、迷宮創造主マスターの趣味では無いと断じることもできます。ですが。それは度合いが違うかも知れませんが……向こうの世界の使用人である「松戸」「森下」に対しても同じことではありませんか?」


「……それは……」


 そうかもしれない。そう考えれば、彼女達二人は紛うこと無き大人の女性だ。異性体だ。彼女達の……オールヌード、だって、最初に襲いかかってきたとき、素っ裸だったからね。オールヌードを見たことがあるにも関わらず、別に自宅で二人きりになったり、色々と話をしていても、そっち系の……ムラムラする系の流れに……ならなかったもんな……。


「それは……俺は、自制心がある、理性的な人間だから……と思っていたんだが」


「ええ。それはとても大切なことだと思われます。特に、あの二人に関しては無理矢理その手の行為を強制されていたという心的外傷がございます。そのため、迷宮創造主マスターにその手の破廉恥な思いが見受けられていたら、ああしてお仕えすることには成らなかったことでしょう」


「なら……」


「ですが、基本的に関係が構築できてからは「それはそれ。これはこれ」なのです。お判りですか?」


 ……判ってない。


「つまり?」


「ふう……御主人様はもう少し、性欲を高め、破廉恥に襲いかかる程度の事はされてもよろしいかと思います。当然、相手は選んでしかるべきですが」


「襲いかかる……て」


「でないと、乱暴な女性領主とか、迷宮創造主マスターよりも腕力に秀でた女戦士なんかに「力ずくで犯される」とか、非常にその手の秘め事が大好きな所謂「淫乱な淑女」が積極的に襲いかかってくる……なんてケースで無いと、性交に至らない……なんて状況になりかねませんよ? ちなみに、こちら側の世界、その手の事に対して、向こうよりも非常に明け透けであり、強引です。特に優秀な者と子供を作る……ということに関して非常に積極的です。今後、激しいアプローチが予想されます。その手の女性、お嫌いですよね?」


「う、うん……少なくとも苦手……」


「それとも男性がよろしいですか?」


「いや……自分の中にそういう片鱗は見いだせないな」


「ならば、迷宮創造主マスターは素直にその部分を自分の欠点として認め、それを解消しようと努力すべきではないでしょうか?」


「はい……わ、判りマシた……」



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