247:速攻帰宅

 実はこの「風刃」も……そう簡単じゃ無い。


 通常使っているノーマルな「風刃」では、浅く傷付けるくらいしかできなかった。


 さすがドラゴンの鱗……。ファンタジー界の伝説。


  なので、現在ドラゴンの活け作りを作成するのに使用している「風刃」は、強度三倍のイメージとして日本刀の様な……固い刃の風を、柔らかい風で包み込み後押しさせるというよくわからないイメージの魔術になっている。


 うん。俺も良く判らないんだけどね……でもね。こうして行使してみると、確実に強度が上がっているんだから不思議。魔術っていうのは、思いこみが全てなのかもしれない。


 そして……首を……落とす。命……いただきました。ドラゴンの目、ドラゴンの舌、ドラゴンの耳、ドラゴンの脳……全て貴重な素材だ。


 で。さらに。ドラゴンの血液も回収しながら、心臓を回収する。ドラゴンの心臓。これ……シロが言うには、とんでもない薬の材料だそうだ。

 ……俺がまだ名前も知らなくて、とんでもないと言われたら、エリクサーくらいしか無いんだよね。バレバレな気がするけど、こちらもありがたく保存させていただこう。

 あ。ウイタエとか、テンダイウヤクとか、エーテルってのも、あったか。……結構あるな。


 ただ、ドラゴンの心臓は、普通に倒しても、レアドロップ品として出現する様だ。


 ちなみに、普通にドラゴンを倒した場合手に入るドロップアイテムは、ドラゴンの肉、ドラゴンの血液、ドラゴンの角、ドラゴンの牙、そして、ドラゴンの心臓とのこと。大抵は肉と血液(の一部のみ)ですって。


 まあ、こうやって、丁寧に斬り分けて、部位毎に保存すると、当然だけど、一頭からゲット出来るアイテムを尽くゲット出来る。ステキ。


「正式」強度二倍は、俺が順番にドラゴンを斬り刻んでいく間中、なんとかギリギリ耐えきってくれた。ドラゴンよりも強いヤツはこれ以上に出力上げないとだな。


 さて現在俺がいるここは中層らしい。


 で。確かに、【魔力感知】によれば、この奥がさらに魔力が濃くなっている。

 

 奥=深淵の森、深層……と呼ばれている濃密な魔力の凝縮されている地域……はシロに「絶対に踏み入れ禁止」と言われている。

 まあ、確かに正直、面倒くさい。多すぎる魔力に……俺の体内の魔力が反応し、変調を起こすとかそんななんだけど、何よりも「気持ち悪い」のだ。入って来る魔力を、なんとか排出しようと思って、身体が常に吐き気を催す。


 中層にいる現在でも、かなりうざいってことは、深層はとんでもなくヤバいってことだ。


 シロが言うには、今回ドラゴンを仕留めたことで、大規模な魔力が消失し、その穴を埋めるために、その深層の魔力が使用されることになる……ので、狂乱敗走スタンピードが発生しにくくなるそうだ。


 それは良かった。こんな気持ち悪い場所、さっさと離れたい。


 ただ、女神再臨はこの世界の魔力の流れに非常に大きな影響を与えるらしく、今回、食い止められたとしても、その後、また、激しい動き、不確定な流動によって、新たな強力な魔物が発生する可能性がある様だ。


「やだなぁ……しばらくは放っておいて欲しいなぁ」


(申し訳ありません。その辺は如何ともし難く)


 あの後、とにかくダッシュで……ダンジョン本体の位置まで戻ってきた。


 虫が。虫が。


 あの後、蜂の魔物まで加わってきやがったので、俺の「爆裂火球」の餌食にしてやった。おかげで、蜂の一刺しっていうのと、死蜂の蜂蜜っていう、食べると死んじゃうかもしれない蜂蜜を大量にゲットした(させられた)。


「まあ、いいや。開けて」


 目の前に……ダンジョンの入口、門が出現する。


「いつも通りに」


(かしこまりました)


 大絶賛、ダンジョン引きこもり中だ。俺が入ったと同時に、入口が消失する。

 というかさ……ここ、場所的にどうにもこうにも、無理があるわ。無理があるわー。

 地理的にNGだろ。集客率ゼロ。地下とか二階の店って、通常の路面店に比べて、とんでもなく集客下がるんだけど、そういうレベルじゃないもん。

 ダンジョン前の通り……いや、通りもねぇな。ここ。ダンジョン前を歩いているお客様……冒険者が、まずいねぇんだから。


迷宮創造主マスター、このままいつも通りに管理室に転移しますと、前回ほどではありませんが、睡眠が必要になるかと」


「え? まじで?」


「はい。多分、今回の遠征で迷宮創造主ダンジョンマスターのレベルが数段階上がるハズです。その場合、前回よりは短め……多分、二日間ほどでしょうか?」


「ドラゴン……そんなに?」


「ええ。そんなに、です。迷宮創造主マスターは何気なく倒してこられた感じですが……幾ら今回の変異で発生したばかりの未熟なノーマル体とはいえ、ドラゴンは、この世界生物の頂点に位置する魔物です。正直……迷宮創造主マスターの階位で、なぜ、ドラゴンを倒すことが出来るのか、不思議でなりません」


「でも倒せたよ」


「はい。正直、迷宮創造主マスターの各種スキルが、階位に比べて、突出してるからなんですが……」


「今回に関して言えば、【結界】じゃない? このスキル、俺用なんだっけ?」


「そうですね。それは女神様特製のユニークスキルですから」


 ありがたい、ありがたい。



 


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