229:シロさんの耳目
流れの中で、いつの間にか工房……生産拠点を手に入れていた。
城砦都市の城壁沿いの建物は……うーん。工場かな。パッと見。外壁に食い込んだ工場。
中は、二十畳位の部屋が一つ。十畳程度の部屋が……五つ。二階にもそれ位の部屋が二つ。うん。広い。以前は染色の工房だったそうだ。
大きい部屋の奥には井戸が設置されている。城砦都市は基本、川をまたぐように建設されている。川からの水の供給は重要だし、その周りであれば穴を掘れば水が出る。
このカンパルラは少々特殊で、北に川が流れている。そこから幾本もの用水路が引かれており、街中を用水路が走り、生活用水に使われている。
飲み水は、魔術や魔道具による生成と井戸からの汲み上げとなる。つまり、この都市はある程度穴を掘れば、水が湧いてくる場所に作られているということだ。この場所に都市を造るって決定した人がスゴイってことだな。
排水は排水路が使われている。これも過去の偉業。排水路に魔道具が使用されており、汚れや臭いを浄化してくれるのだ。部屋のトイレで発生した汚物等も排水路に投げ込まれている。
「浄化」の魔道具もスゴイのだが、何よりも、現在も絶賛稼働中というのがスゴイ。どういう……ってアレかな俺の集魔装置と似たようなシステムが使われているのだろうか? 今度、ディーベルス様に見学を希望してみよう。
ダンジョン帰還時に、シロが使ってくれる【回復】【修復】【洗浄】のスキルがある。これ、魔術として解析できていない。この「浄化」は【洗浄】の上位バージョンな気がする。
「浄化」は【洗浄】に、祓い清める……【清浄】なんていう魔術スキル効果が加わっていると思うんだけど。
「よろしいでしょうか?」
「おう、なんか慣れないな。ここでシロの声が届くの」
当然の様に、工房の地下に【次元扉】を設置した。街灯のおかげでシロとは、俺がこの都市に居る限り、いつでも連絡が取れるようになっている。
さらに。街灯設置による追加効果も判明している。アンテナ効果に加えて、俺が行っていた情報収集も「勝手」に行われている。ぶっちゃけ、情報量も数百倍だそうだ。
……うん。なんか、お前の情報集め性能低いな……って言われている気がする。
「そんなことはありません。全ては
……本気で嘘くさい……。
「さて。現状、公開されていない部分も多々あるのでこれは予測なのですが、ダンジョンシステムで初期装備されている【洗浄】【清浄】【浄化】。それに該当するスキル、そして魔術は天職、癒術士に転職、さらに高レベルになった際に入手出来る情報で解決できるかと」
「ああ~そうか。そっちの天職の管轄か……」
癒術士……か。レベル30にすれば即転職可能になるからなぁ……。上げちゃおう……か?
「転職システムの使用者は
ん? レベルアップに必要な経験値が多くなるって事?
「はい。
「もう既に、以前の様に簡単にレベル30にならない可能性が高いか」
「可能性では無く、確定です」
「かなり高レベルの敵をまとめて倒しても?」
「魔術士……であれば高火力でしばらくは稼げそうですが……」
ああ、そうか。他の天職の場合……魔術士の時の様なモンスターハウス戦法は使えないか……。【魔術】があるから低レベルの魔術はそこそこ扱えるが、高威力になると……。
しかも特に今回レベルを上げたい癒術士って……。
「癒術士ってさ、回復専門なんだよね?」
「はい。劇的に特化されています。説明だけを聞いているとポーションの代わりの様ですが、ポーションを飲み続けるのは限界があります。癒術での回復には限界がありません。さらに、術士の力量にも寄りますが、ポーションよりも素早く治癒できます。パーティに一人居れば、死者が出ないでしょう。ただ、その分戦闘能力は低く、ソロで活動する者はいませんでした」
一番の弱点は水物ってことか。お腹タポタポになるもんな……。
「なら、もう少し……様子見しようか」
「はい。それがよろしいかと。さて。そろそろ。街灯や小型ランタンからの情報収集の整理が付き始めました。御報告しますか?」
「お。やっとかー。それにしても、上手くやれたんじゃないの? 今回のランタン作戦は」
「ええ。素晴らしいと思われます。この時代にしてみるとかなり破格の所業ですが、
「おお。それは良かった。で?」
「申し訳ありません。効果は素晴らしかったのですが……ですが、ここまでする必要は無かったかもしれません……」
「ぬぬ。それはなぜ?」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます