218:スタンピードもあるよ!
「ああ、そういえばさ、薬師って何? 薬屋、薬剤師ってことは予想付くけど」
「主にポーションしか作れない、低レベルの錬金術師の事になります。前回情報収集時には聞かなかった職業です。それにしても……辺境だからなのでしょうか。この周辺では
「え? 一人も?」
「はい。カンパルラ城砦都市に錬金術師を名乗る者はいないようです」
「そうなの? そりゃ~商業ギルドの支部長が初対面なのに厚遇してくるはずか……迂闊だったかな」
「いえ、大丈夫かと思います。王都には数名いるようですし。あくまで、王国東端の城砦都市では珍しいということかと」
貴族であるにも関わらず、強権発動せずに、冷静に分析した結果か……。あの短い時間で良くもそこまで。
「薬師もあの都市に三名。魔道具修復師が二名。全員、天職は錬金術師ではありません。天職、錬金術師はいつから希少価値が付く程、少なくなったのでしょう?」
「俺が知ってるはずないじゃん」
「そうなんですが……」
俺がこの部屋に戻ってきたことによって、シロの情報が最新版に塗り変わって行く。
シロが入手する新情報は全て、「俺に纏わり付いた諸情報」を解析して入力した結果となる。
それこそ……俺はカンパルラ城砦都市に薬師が三名しかいないという稀少な情報を実際に誰かに聞いたわけじゃない。だけど、食堂などで端の方に座っている人がその情報を知っていたとする。
それだけだ。それだけで、シロは「情報を読み取れる」のだという。なんという情報収集力。
「アカシックレコードとかそういうモノなのかな?」
「うーん。そういう言葉で呼ばれているわけではありませんが、現状、様々な知識が更新されています。ということは、その知識が貯まっていく場所が存在します。これは自分の記憶、データバンクだと思っていたのですが」
「シロは神様が作ったわけだしね。なんか、壮大なシステムの一部だとしてもおかしく無いよね」
「そうですね。自分自身でも把握し切れておりませんが……」
それにしても……錬金術師って少なすぎなんじゃ?
「女神が休眠中なせいで、世界に魔力不足だから、錬金術師も不足してる感じ?」
「いえ……女神が休眠中で、「人類」の魔力供給が上手く働いていないといったところでしょうか? その結果、魔力が必要となる天職の性能が下がっている……とか?」
「とかって……まあでも、ああ、そうか。魔物は元気なんだっけか」
「はい。本来人類で消費されるハズだった魔力が余っている状況ですから」
「実害は?」
「現状では特徴的なものは……無い様で……あ。いや、小規模ですが、深淵の森から魔物の
「
「魔物は強大な力に直面したり、飽和状態が続くと、パニックを起こし、とにかく逃げ出す事があります。本来は、ダンジョンで発生する現象で、ダンジョン内の魔力が一定以上になると、魔物が集団で溢れ出てくる事を差す言葉です。本来、魔力が溢れるなんて言う現象はダンジョン以外では発生しにくいので」
っていうか、ダンジョンって
「……そのダンジョンですが……
え? どういう……。
「本来であれば、ダンジョンには
「
「はい。さらに、寿命でも死にますし、ダンジョンからの魔力供給が途絶えることでも危険になります」
「え? 俺も?」
「……
「ん。判った」
「人類に振り分けられる魔力が極端に低下している現状の世界から考えると、
「
「はい」
よし。
とりあえず、この手の情報のすり合わせや、検証は今後気軽に可能だからな。後でいいだろ。
頭に……【錬金術・伍】のレシピを思い浮かべる。
冷却具:冷蔵庫……の様な使い方が出来る魔道具の様だ。魔石効率とか考えないと、超金食い虫になりそうだ。
病気治療薬:やっと作れるようになったか。というか、良かった。通常のポーションと同じ様に最下級、下級、中級、上級、最上級なんていうランクが存在するが、それ以外に、病の症状に合わせて素材を選び適応させることで、特化する必要がある。
魔術背嚢:下級拡張:重量軽減が30%程度……か。これくらいのリュックはそこそこ出回っている。カンパルラの市場でも度々見かけた。値段はお高め……真金貨一枚=五十万円くらいしてたけど。
というか……残りの中級錬金盾、中級拘束陣符、中級回復陣符、中結界、簡易結界……は後でイジろう。というか、簡易結界、やっとか! へー。結構面倒というか、作るのに手間がかかる……んだな。
まずは、病気治療薬だ。
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