217:病気治療薬

「ただいま」


「お帰りなさいませ。御無事で何よりです」


 ああ、まあ、命の危険が無いわけじゃ……なかったのか。そうだな。冒険者ギルドのギルドマスターみたいな人が、【隠形】使って不意打ちで何十人も出てきたらやばかったかもしれない。

 魔物だってとんでもないヤツに遭遇してたら……有り得るな。こっちは特に。


「現在、御主人様とリンクし、様々な情報を分析中です。この作業にはしばらく時間がかかるかと思われます」


「ああ、問題無い。まずは……シロ、ダンジョンに転送」


「はい。畏まりました」


 見慣れた風景。俺の設定したスタート地点だ。なんか、既に懐かしい。


「戻して」


「はい」


----レベルアップ----


 錬金術師のレベルがアップしました。スキル【錬金術・伍】を習得しました。迷宮創造主ダンジョンマスターのレベルがアップしました。


「錬金術師のレベルが41になりました。……凄まじい伸びです。これが【渡界資格】を与えられた渡界者の特性ということなのでしょうか。迷宮創造主ダンジョンマスターのレベルも34になりました。これによりシステム、迷宮機能集中総操作室拡張伍が開放されました」


 ん。居住スペースが広がったってことか。おお。これは嬉しいな。後で確認しよう。


「それにしても……錬金術師のレベルが大幅アップですね……迷宮創造主ダンジョンマスターのレベルはそれほど上がっていないので睡眠を伴うほどではありませんが……そんなに錬成を?」


「ああ、もの凄くヤバい素材で、なんとかまともな物を作ろうと頑張ったんだけどね。無理だったなぁ……。後で確認して見せるけど」


 良かった。レベル40を超えて。もしも足りなかったら、ここでイロイロと作らないとと思っていたのだ。


「はい。ある程度は理解しましたが……見せていただけると即対応出来るのでありがたいです」


 あ。で。大事なのは、【錬金術・伍】のレシピだ。


【錬金術・伍】:

冷却具、病気治療薬、下級魔術背嚢、中級錬金盾、中級拘束陣符、中級回復陣符、中結界


 おお! あった。病気治療薬! 良かった! 最下級、下級、中級、上級、最上級……とあるが、病気毎に材料が異なる様だ。


 ここで判らなかったから、さらにレベルを上げないといけないところだった。……まあ、多分……異世界ではあまり見かけないゴーレムを作れば……結構なスピードで上がると思うんだけどね。


「そういえば、拠点の確保に成功したのですか? 【次元扉】でお戻りになりましたが」


「拠点はまだだね。でも、別に拠点なんて無くても問題無いことに気付いただけだよ」


「はい」


「城砦都市のすぐ横の森の地下に、向こうで作ったのと同じ様な部屋を作って、そこに扉を設置して帰ってきた」


「ああ~それで大丈夫なのですか?」


「拠点云々してる暇がなくなったからね。とっさに思いついたんだけど、正直、これなら拠点無くても問題無いじゃないかって気がしてる」


「確かに……出入り口は御主人様が「大地操作」で毎回埋めてしまわれますし……安全……ですね」


「だろ? まあ、最終的には当然、拠点の「地下」に設置しようと思ってるけどさ。その方が便利だろうから。でも、とりあえずはこれでいい気がするよ」


「そうですね……高レベルの【魔力感知】の使い手がいると怪しまれてしまうと思いますが……」


「その辺は【結界】と結界の魔道具でどうにかならないかな?」


「なる様な気がします……というか……御主人様が持ち帰った情報から判ったのですが」


「うん?」


 シロが若干悲しい顔をしている。


「異世界、この世界の文化、文明は衰退こそしていないものの、停滞。さらに……魔術や錬金術などは確実に衰退、レベルダウンしている様です……」


「やっぱりか! なんか、シロに聞いていたよりも妙に薬の素材がやばいと思ってたんだよなぁ……」


「……魔術、魔道具……魔力に関係する様々な事……知識や物が衰退している様です。これは、女神が休眠中なのも大きいでしょう」


「さらに……人類全体のレベルも低いかもしれません……この世界の人類は、寝て起きる際にランダムでレベルアップの判定が入ります。女神の休眠による副作用で、その発生率が低下しています」


「え? 俺も寝て起きたらレベルアップする可能性があるの?」


迷宮創造主マスターは無理です。生まれも育ちもあちらの世界ですから。ですが、ダンジョンからこの部屋に戻る際に「確実」にレベルアップ判定が入るのです。確実っていうのは大きいですよ」


「あ、そうか。そうだな。【次元扉】が存在するんだから、そこまで不便じゃ無いし」


「さらに……その分という訳では無いのですが……人類側で消費循環される魔力が低下している反面……魔物が強く、そして大きくなっている可能性が高いと思われます」


「そうなの?」


「情報もありませんし、実際に遭遇しておりませんから……絶対では無いですが。このダンジョンのあるパルラの森=深淵の森……の奥……中央周辺では凄まじい魔素のうねりが感じられます」


「そこにとんでもない魔物が?」


「はい。強大な魔物、数の多い魔物。まるで坩堝の様に蠢き、渦巻いております。これらがバランスを崩し、周辺に溢れれば……特に、西側の迷宮創造主マスターが訪れていた城砦都市のある方面は踏み荒らされ、草木残らぬ荒れ地となるかと」


「ん? 東側は?」


「あちら側にいる人類は魔族です。人族よりも遙かに強大な魔力を持ちますので、「人族側」よりも被害は少ないでしょう」


「そうなのか……というか、人族と魔族って仲が悪い?」


「はい。というか、魔族が人族を、力で押さえ付け、奴隷としている場合がほとんどです。現状、この深淵の森と海、そして大山脈が二つの勢力を隔てていますが……例えば向こうの世界のように航空機が生み出されたりすれば……」


 魔族か……どっかで聞いた気がするけど、種族差別主義なのか。嫌なヤツ多そうだなぁ……。


 もめ事、厄介だなぁ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る