193:死亡遊技

 とりあえず、疲れている様だったので、片矢さんを休ませた。


 諸々は明日だな……と思った瞬間に、倉橋さんからメッセージが届いた。


倉橋:今回の件、本当に済まない。見当違いの……いや、ここまで大胆な手で、しかも武力では無く攻めてくるとは想定していなかった。


倉橋:本当に。申し訳ない……。


倉橋:これ以上の謝罪は直接会ってからということで……現状、我々への監視も非常に厳しくなっている。


倉橋:だが、私一人であればどうにでもなるだろう。明日にでもそちらに。


倉橋:動くのは……それからにしてほしい。


 これな。


 言いたかったのは最後の一行だけだよね。信用されてないんだろうなぁ。そりゃそうか。

 なんていうか、俺は、アンタッチャブルというか、取扱が非常に難しい危険物、いつ爆発するか判らないっていう感じというか。


 そんなんだろうなぁ~まあ、実際に何人くらいだ? 合計。牧野興産絡みで、それなりの数、仕留めちゃってるし。

 多分、一番ヤバいのは、廃工場を更地にし、ビルの上層階を「消しちゃった」件だと思う。


 アレ、爆発物でやったとしたら……とんでもない火力なわけで……テロリストよな。


 ああ、しかも彼らの前では魔術も披露しちゃったからか。


 ……やらかしてるわ。俺が。


 次の日朝早く。昨日超絶運動したからか、まだ眠い。けど。起こされた。


 倉橋家御大、当主である倉橋さんがまたも、土下座。うーん。面倒。というか、そこはもう、どうでも良いというか。


 というか、今回の指名手配、コレができたのなら、元々倉橋さん達が求めていた、能力者の人権確保も可能だと思う。


「じゃないです?」


 倉橋さんの土下座は早々に止めさせて、普通に座らせた。


 監視が厳しいらしく、三沢さんはこっちに来れなかった。でも、タブレットの画面で未だに頭を下げている。だからもう、いいって。


「ああ、そうだね……。確かに……そこまで考えが至って無かった」


「さらに、これまでの……能力者が化者カノモノと呼ばれ、迫害を受けていた過去、歴史の事実は公表できそうですか?」


「……やってみようと思う」


「で。現状って?」


『村野様は、行方不明のままです。自宅に捜査員が入ろうとしてどうにもならずに、帰還するという状況が続いている様です』


 三沢さんには警察等の能力者以外の組織について調べてもらっている。


『危険物、爆発物が隠されているとでっち上げの証拠が固められていて、重機を持ち出そうという話まで出ているそうです』


 それでも無理だけどね。多分。自宅の結界は、建物に合わせて施されている。あそこにはもう、俺が解除しないと入れない。


「じゃあ、捜査の目は自宅に向いてるの?」


『いえ、半分といった所でしょうか。残り半分は足取りを追っているのですが……』


「俺、自宅と会社しかほぼ、行ってないけど。三沢さんの所とか、師匠の所くらいか。でも、トレースされ無い様にしてたんだよね?」


『はい。ですが……陰陽寮の方から報告が漏れ出せば……』


「それは全て止めて廃棄しました。御主人様に関する私の報告書が「なぜか」滞っていた関係で、全て消去する事が可能でした。末端の……能力者から聞き取りなどを行えば判るとは思いますが、陰陽寮と我々とは隔絶していますから……多分それも無いかと」


 さすが片矢さん。というか、古巣に忍び込むのとか余裕みたいなんだよなぁ。


『ならば、村野様と我々、そして師匠の関係はあちらに伝わっていないかと。小さな情報から事情聴取くらいはするかもですが』


「なんでも、ファーベル経由で、若島の所にも来たようだよ。姫を始め、あそこで暮らしている二人がニュース以来非常に触りづらくてね……。怖いというか」


 倉橋さんが怖い? あ。まあ、うちのメイドズもかなり怖いからね……。なんとなく判ると言うか。

 というか、ファーベルにも行ったのか……って行くか。そりゃ。森下社長には迷惑をかけちゃったなぁ……。


「じゃあ。俺が死のうかね」


 っていやいや、メイドズは殺気がダダ漏れすぎる……。


「どうですかね? それが一番上手くまとまる?」


「……そ、それで……君はいいのかい?」


 いやいや……倉橋さんが求めていた最上の答えでしょうに。


「それを代償に……上手くやれる策はあるんですよね?」


「あ、ああ。ある。というか、やってみせる……」


「三沢さんは?」


『ええ、まあ……被害を出さずにということであれば……確かに……ですが、納得がいかないですし、全てが倉橋様にかかってきてしまうような』


「いや……村野君が……そこまで退いてくれるのなら……我々も奥の手を出さざるを得ない。それに……「星詠み」の巫もいるしな」


「それは……」


「私がそれを求めました。御主人様」


 って美香さんが入ってきた。使用人の人が付いてきているとはいえ、自分で立って歩いている。体調は順調に回復しているって聞いてたけど……。


 顔色もいいし、外見的にはもう、病人のそれじゃない。


「そもそも、御主人様を仮にとはいえ、亡くなったことにするなんて……あり得ないことです。ですが、御自身がそうおっしゃるのなら止めようもありませんし」


 気力は使わない様に厳命している。でも、なんか、どことなく漏れてきてしまうらしい。つまり、彼女は何もしないでいても、途轍もなく勘が良いということになるのだ。

 これ、実は……片矢さんもそうだし、倉橋さんもそんな感じだそうだ。数代前の「星詠み」「時詠み」の巫が血縁とかそんなで。なんか先回りされる、スゲー勘が良いよなぁ……って思ってたんだよね。


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