192:激おこ
「申し訳ありませんでした。御主人様。阻止できませんでした」
驚愕。顎が落ちるってこういう感じだろうか。
っていうか、俺、スキル結構あるのよ? 確かに魔術士はその手の能力は低いけど、【魔力感知】があるし、
にも関わらず。
今、座ってる俺の足元で音も無く土下座しているこの男……片矢さんに、少々ビビっている。
正直、ちょっとうぬぼれていたかもしれない。俺強くなった、現実世界では敵が居ない、ハイエルフだし、俺、異世界行ける。異世界でも戦える(ウサギだけど)といつの間にか自信満々だったのか。
やべぇな。というか、戦闘面でも同じ様な事は起こりうるよな……慢心しないようにしないと。
って……やべ。なんか、メイドズが「俺がもの凄く怒ってる」と勘違いし始めてる気がする。
「ああ、いいってば。仕事でちょっとミスしただけで土下座なんてあり得ない。というか、今回のこれはミスじゃ無いよね? だって俺、片矢さんにそんな命令していないもん」
「いえ、ですが、主君の不利益を阻止できず……」
「なら、今後に生かして。とりあえず、土下座終了で。詳しく聞かせてくれない?」
陰陽寮って本当にバカだったんだな……こんな超優秀な人材を有象無象かの様に扱ってきたなんて。
頭を上げさせて、対面のソファに座らせ。飲み物を頼む。あ。もう、用意されてた。さすが。
「では、報告させていただきます。今回の件、全ては米国からの指示によるものと思われます。長老会が……いえ、ヤツラが日本を外国に売るとは想定外でした……」
「まあ、そうだよね……話を聞く限り」
「わ、我々は先祖代々……
まあ、そうだよね。だから我慢出来てたんだろうし。片矢さんに頭を下げられて以来、能力者を極力殺さない様にしているのも、その心意気に胸打たれたからだ。
「ですが……今回のこれは……日本を守る事を投げ出し、己の保身、栄華、富みを求めた結果以外に有り得ず……」
そうだね。自分たちの立場が危うくなったから……庇護者を求めたと考えるのが正しいだろうね。
その為の土産、対価が……俺か。
「米国側に……長老会と繋がりのある者……しかも強力な能力者が居ります。20年前の遠阪全滅戦で死んだと思われていた……猪戸家の当主、「気炎散弾」の猪戸と呼ばれた男が……今回の首謀者です。「破気」を生み出したのもヤツでしょう。元々猪戸は十二家の中でも補給を担当していた家ですが、「気炎散弾」は幼い頃から戦える……と有名でした。気力の扱いに長けており「気炎散弾」も自身で開発した技です」
頑張って調べてきたのかな。なんか情報量多い。
「現在、「破気」弾丸の備蓄が続々と成されており……その使い手……主に傭兵や退役軍人の様ですが、も各所に配備され始めています」
ん? なんか……表情というか……片矢さんの感情が……。
「何?」
「はっ……わ、我々が……古より守りし御所の至る所に……やつらは土足で踏み込んで……おりまして……」
これは……怒りか。ずっと怒ってたわけね。それもそうか。彼らが人権すら認められない存在で在り続けたのは絆で縛られていたのと、「自分たちしか出来ない」という選民思考だ。
その思考の根源、不可侵の領域を犯されれば……そりゃ悔しいよな……。
「それで? 片矢さんはどうしたい?」
「いえ、私は御主人様に仇成す者を……」
「ああ、そういう建前はいいからさ。実際に……どうしたい?」
ハッ! と気付いたような顔をする。内心、それくらい怒って、我を忘れていたと。
「……」
「まあ、いいや、ちょっと考えておいて。で。そのなんだっけ、猪戸だっけ? そいつが首謀者? ヤツは何がしたい?」
「……復讐、そして、日本の裏世界の制圧……でしょうか。これは最終的に表も牛耳ることになります」
そうだろうね……折角、大戦後に、はね除けたというのに。
「全てにおいて……その後、日本が日本で在り続けることが出来るのか……非常に不安です」
まあでもねぇ~実は、庶民にとっては頂点に誰が立っていようと、あまり関係ないんだけどね。増税とか目の前の課金に振り回されているわけで。
って、ナショナリズムが関係していると、さすがにどうでも良いとはいえないか。
そんなことよりも。まずは俺自身か。笑。
「しかし……日本でこんな感じで顔出し、素性出しで全国指名手配って珍しいよね?」
「はい。突然、この様な特別指名手配以上の扱い……考えられません」
さすが、松戸さん。元関係者。
「御主人様を……御主人様を……」
いやだからね、森下さん……なんていうか、俺が思いきり怒れてないのは、さっきから貴方達がマックス怒ってるからなんだけど。
なんていうか、どうしても苦笑してしまう。
なんで君らがそこまで怒る……と。
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