190:火急の事態
『ああ、
「ぬぬ。竜騎士って上位職?」
「はい。伝説の天職に近いと思いますが」
「それって規制が掛かってるんじゃなかったっけ?」
「
「そっか。竜騎士以外にもそういう伝説の上位天職って知られてるの?」
「竜騎士王パーンの物語と、嘆きの王デォーラの死霊術士、さらに、剣聖エルドレッドの伝説は有名ですね。特に剣聖の伝説には、魔導士、癒導士、精霊使いという天職が登場します。なので、それらも知られているかと」
「へー。転職条件は?」
「……」
「そこは内緒なんだ……」
「申し訳ありません」
って小さくドサッ……と音を残して、やっと、ホーンラビットが息の根を止めた。近づいて行く。が、ちょっと手前でその姿が……消えた。ダンジョンと一緒なのか。
「死体が残らないのは魔物のみです。それ以外の人間や動物等は普通に遺骸が残ります。それこそ、闇の魔素が多ければ、アンデッドの元となることも……」
「ってことは、魔物はアンデッドにならない?」
『はい。通常は』
「通常じゃない場合があるんだ……」
『ございます。ですが非常に稀少なケースですので……』
「内緒?」
『はい』
魔物は、この世界の循環する生態系の一部……ではなく、別扱いっていうことか。死体が素材か……。
さっきまでウサギが暴れていた場所に着くと、そこにはウサギの甲殻角と、魔石が残されていた。捻りの入った小さな角は、とにかく硬そうだ。
『ウサギの甲殻角を使用した矢は、黒鉄の鎧を貫くと有名です』
「そっか……」
あいつくらいのサイズの魔物でここまで時間が掛かってしまうなら、窒息死は実用的じゃないな。普通に攻撃しないとダメか。
「いえ、ですが、弱らせ、混乱を与えることは可能かと思います。弱体魔術の様に使用出来ますね」
ほほーってなんだっけ……付与術士か。そっか。そっちの術があればもっと楽に弱体出来るんだな。
「それにしてもさ。そういえば。聞かないで出てきた俺が悪いんだけど。現在地からどっちに行けば一番近い街とか村があるのさ?」
『……古い情報ですが、西に三日ほど移動すれば、川があります。その川沿いにフローラン砦というアザダルト王国の砦があったかと。その国があれば、ですが』
西……か。微妙に西南に来てるな。っていうか、砦? 街や村でなく? 最初に言おうよ。シロよ……。
『私も
いや、いいけどね。というか、北極星じゃないけれど、絶対位置が確定しているっていうのは、探索に於いてスゴイ便利だな……。
こういう、樹海で迷うっていうのは、現在地を見失うところから始まるわけだしね。常にダンジョンの位置が認識できているっていうのは、もの凄く地味だけど……チートな気がするな。これ。
『ちなみに、
ここまでの距離とか判る?
『約四㎞でしょうか。非常に歩きにくい場所を移動していると思うのですが、さすがですね、
レベルが上がって身体能力が上がっているから?
『はい。そうかと思われます』
現状、魔術士/
確かに、体力面でも能力がプラスになってるのか、現状疲労等はまったく感じていない。
よし、なら、とりあえず西を目指すぞって、三日? って言ったっけ?
『はい。現在の
そうか~。ま、まあ、うん、道があればいいか。道が。獣道じゃなくて、林道とかあれば良いなぁ。
というか、砦とか街とかそもそも国が、興亡の末に大きく違ってる可能性も高い。生息圏が変わってる可能性もあるし。
よし。まずは人工物を探そう。その程度の目標にしておいた方がガッカリ感が少なめな気がする。
三度、ハイホーンラビットに遭遇した。全て彼らが、こちらを感知する前に遠距離から「風刃」で仕留めた。
ひたすらに西へ向かう。相変わらず、樹海だ。
『
「判った。現在の距離は?」
『現在、12:25。迷宮出入り口より約15㎞といった所でしょうか? そこまでのマップも完成しております』
目の前にマップが表示された。明らかに見栄えや操作性があのマップだ。
グレーで見えなくなっている部分には、うっすらと地形が描かれている。
というか、あーこういうタイプか〜。俺、こういうの、全部踏破したくなっちゃうんだよな〜。
『多分ですが、数百年、いや数千年かかるかと』
ですよねー。現在の表示は西に真っ直ぐ、ほぼ一直線に進んでいる。細いな……。十五㎞がこのサイズか。マジで樹海か……。
鞄に入れておいたサンドイッチを食べながら、帰路に着いた。
帰巣本能と、シロのナビで、何の問題も無く、無事帰還できた。ウサギに遭遇することも無かった。
さすがに歩きっぱは疲れたな……と、操作室に戻った瞬間。
「
んーと。ノックは緊急時のみ、だったよな。つまり、何か起こった、と。うん。
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