184:並列電池ボックス

 美香さんの治療と同じくやらないといけなかったのが、簡易結界の改良だ。案の定、忘れていたのは内緒だ。


 倉橋さんの言う通りに行動するとなると、長期間……それこそ一年以上、自宅から離れることになる。簡易結界の稼働期間は現状、300時間。これをもっと延長しないと。


 定期的に猫に餌をやる機械とか……それこそロゴブロックのプログラミング動作系のパーツ組み合わせで、魔石補充が出来ないかと思っていたんだけど……これも魔道具なんだから、錬金術師の範疇だよな。


「簡易結界ってさ、錬金術で作れない? 魔道具だよね?」


「はい。錬金術で作成可能です。レシピ……はまだ解放されていませんが、そろそろじゃないでしょうか?」


「まあでもさ、これ、改良改造なら【錬成】でいけるよね?」


「いえ……ああでも、迷宮創造主マスターであれば、いけるのかもしれません」


 簡易結界の仕組みは難しいモノじゃ無い。ただ、詳細はまだレシピが手に入っていないからアレだけど……外部改造は出来るハズだ。


 魔石……は大きさで、魔道具の稼働時間が変化する。つまりは。サイズ=持続時間ってことだ。

 単四電池とも単一電池……ってことなのかな? 力の引出し方によっては、電圧電流をより瞬時に引き出すことができるのかもしれないけれど……ただ単に持続時間を延ばすには、なんだ、直列、並列の電力的な考え方でいけるんじゃないのか? というね。もの凄く単純な考え方だ。


 ということで。ゴーレムの魔道回路と魔石を繋いでいる部分の【錬成】をよく観察する。まあ、正直、魔石から回路への接続は単純だった。なので、並列の電池ボックス(そんなんでいいのか?)を思い浮かべながら、一番小さいゴブリンの魔石二つを【錬成】する。


 完成。というか……【錬成】凄いな。レベルが上がったからか、最初よりも遙かに思い通りに、さらに早く完成する。


「……迷宮創造主マスターの創られてるモノが、魔道具作成的にはさほど難しいものではないからなのですが……。魔石をそのように結合させるという魔道具の動力源という考え方自体が無かったかと思われます」


「まあ、これが思い通りの効果を発揮してくれないとなんだけどね……」


 再度【錬成】……で、簡易結界の魔石を入れる部分に繋ぐ。同じく同時に同じ大きさの魔石(ノーマル)も入れる。並べる。


「えっと。これだとどれくらい持つんだっけ? オークの魔石だと300時間だったっけ?」


「はい、オークで300時間。ゴブリンでは30時間……なのですが、簡易結界の設定で、広範囲か、強化のレベルを上げれば、あっという間に消費されるハズです」


「お、おう。そんな機能付きの道具だったな……」


 ということで、広範囲はかなり広くなりそうで、何か干渉するとイヤだったので、どちらも最大強度で検証してみることにした。


 約10分……か。ゴブリン魔石一つの稼働時間だ。


「で。二つが。おお~約20分。ということは。予定通りだな。これで長時間稼働がどうにでもなるな! えーと。今あるオークよりも大きい魔石は?」


「クリスタルゴーレムの魔石となります。これは……オークがレベル21の魔物で、こちらはレベル43です。一つ使用しただけで約1000時間……まあ、41日前後は保てると思われます」


「へー。大きさは1.5倍程度なのにね」


 ゴブリンの魔石は小指の爪程度のサイズだ。オークは、3センチくらいの小石。で。クリスタルゴーレムの魔石は5センチくらいかな。大きさ的に。


 よし。なら。


「つまりは……通常範囲、通常強度でクリスタルゴーレムの魔石は41日保つ。これを10個、さっきと同じ様に並列で繋げば、1年位は保つか」


「そうですね……大丈夫のハズです」


 よしそれなら。魔石20個を並列で【錬成】する。


「これで二年くらい電池……あ、いや、魔石交換しなくて平気だな」


「はい……いえ……その。魔石をこんな風に使用するのは……多分、画期的な……」


「いやいや、シロの情報って古いんでしょ? 今はもう、同じ様な事が発明されてるよ。さすがに」


「そうでしょうか……」


 よし。簡易結界の魔石を全てこの長時間駆動大容量合体魔石に交換だ! 


 ふう……これでやっと、旅行に行ける! な!


「そうですね」


 あ。そういえば。旅行といえばバッグ! 【錬金術・肆】で覚えたレシピで、魔術背嚢ってのがあったな。


魔術背嚢:最下級拡張:重量軽減20%程度


「魔術背嚢は、冒険者や行商の必須アイテムです。魔法鞄とは比べものになりませんが、安価で出回っています」


 というか、モノを入れても軽くなる背嚢、リュックがありふれてるのか……。確かに、プレゼントでもらった魔法鞄を知っちゃってるからね。そこまで驚愕ではないってだけで……スゴいな。これも。


「あれ? あれ? そういえ……ば……」


【倉庫】から魔法鞄を取り出す。そういえばもらったまま、放置だったか。だって、現実世界には持ち込めない、使えないって言われたから……。


「シロ……この魔法鞄、ひょっとしなくても、異世界で……使える?」


「当たり前です。使えなくてどうするのですか?」


 キターーーーー! これだ! つまり、俺は、異世界旅行をこの魔法鞄一つで楽しめちゃうってことね? そうなのね?


「はい。まあでも、それが魔法鞄であることと、最大容量は隠した方が良いと思われますが」


 まあ、そりゃそうだよな。じゃないとトラブル必須だ。鞄の中に手を入れると何が入ってるか判るってとんでもな……ってあれ?


名前 村野久伸むらの ひさのぶ

種族 ハイエルフ


天職 錬金術士

階位 32

体力 94 魔力 133


天職スキル:【錬金術の知識】【練成】【錬金術・肆】


=隠蔽=========

天職 迷宮創造主ダンジョンマスター

階位 31

体力 28 魔力 121 


天職スキル:【迷宮】【結界】【鑑定】【倉庫】【収納】

【異界接続】【渡界資格】【言語理解】【次元扉】


習得スキル:

【気配】【剣術】【盾術】【受流】【反撃】【隠形】【加速】【棒術】【拳闘】【魔術】【手加減】

=隠蔽========= 


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