183:ゴーレムは楽しい。が。

 とりあえず、最初のブロンズゴーレムは、ポーターにしようと思った。基本四つ足。背中に台座を乗せて、荷物が積めるようにする。

 四つ足にしたのは多少重い荷物もそれなりにバランスを取って運べそうだから……だ。


 思い浮かべたのは、バットで殴られたり、思い切り蹴りをぶち込んだりしても踏ん張ることができる、これまた某有名なロボット。アレだ。丸パクリだ。


 あの四つ足に大きめの荷台。


【練成】。


「おし!」


 イイ感じにまとまった。これまでのアニメっぽいデザインで無く、無骨だけど……これ、違和感無いな! 

 基本命令は、四つ足で立って倒れるな……だ。ちゃんと立ってる。荷台に、さっき失敗した廃棄物を載せる。


 お。無造作に載せたのに、ちゃんとバランスを取ってくれている。おお~。凄いな、これ。


「ここまで歩け」


 場所を指定するとそこまで歩いてくる。あ。


 乗せた廃棄物が落ちた。荷台に縁とかないし、結わえてないからしょうがないけど……揺れすぎだ。背中の台車にサスペンションを加えるのを忘れてた。そりゃ震動スゴイよな……。


 よし、衝撃吸収のシステムを……うーん。本当はこのサイズならゴムか? それか、オイルダンパーか? 現実世界のパーツとか持ち込めないのかな? いや、出来るよな? 


「シロ、現実世界の部品とかパーツは持ち込めるるよな?」


「はい、大抵の物は持ち込めます。科学によって作られた物はレアリティが上がりにくいので」


「え? そうなの? なんで?」


「大量生産が可能な時点で、レア度は高くならないかと」


「ほほーそうなのか……でもそれヤバくない? 核兵器とか……持ち込めちゃうの?」


「正直……核爆発や放射能などの要素は、魔術によって無効化可能だと思われます」


「あ。そうか……。そもそも結界で防御可能なの?」


「はい。大規模結界となれば巨大な街もカバーできます。核に魔術的な「なにか」を混合させるなどすれば……結果は分かりませんが」


「「なにか」……ああ、そうか。「破気」の弾丸みたいなもんになると……」


「ええ。迷宮創造主マスターの戦った「破気」の弾丸は多分、レア度が高くなり、持ちこめない可能性が高いです」


「へーそうなのか……そんな強く無いけどな、アレ」


「純粋な攻撃力ではありませんので」


「そか」


 とりあえず、震動防止ゲルを仕込んだオイルダンパーキットを入手することにした。


「さて。御主人様。最初の目的をお忘れでは?」


「……!」


 やっべ。熱中しちゃってた……えーと。というか。


「シロ、もう、レベル上がるかな?」


「上がる可能性が高いです。少数とはいえ、画期的な作り方でゴーレムを作られていますから。そもそも……錬金術師というか、職人は、幾つも幾つも失敗して育つ……と聞いています」


「まあ、うん、失敗……してないよね……。俺は俺ってことで、いいや。んじゃ、跳ばして」


「はい」


 ダンジョンの入口に跳んで来た。


「戻して」


「はい」


----レベルアップ----


 錬金術師のレベルがアップしました。スキル【錬金術・肆】を習得しました。


「錬金術師のレベルが32になりました。ここまで来ると呆れますね……。これでいつでも転職することが可能になりました」


 おお……【錬金術・肆】になった。これによって、


魔術背嚢、初級錬金盾、初級拘束陣符、初級回復陣符、小結界、中級ゴーレム


のレシピが公開された。


 ってあれ? そうか……やばっ。【錬金術・参】の時点で中級ポーションのレシピは判ってたじゃん……とほほ。


 と、とりあえず、まず先に……精力回復薬を作らないと……。中級精力回復薬のレシピ……「クレニの根」「フザン草」を「回復水」に溶かす。それにしても「回復水」って万能なんだな……凄いな。


 とりあえず、「クレニの根」も「フザン草」も採取してあったストックの中にかなりの量が入っていた。


「微塵」で材料を粉々にする。それを「回復水」を加えて、混ぜる。それをさらに錬金窯に入れ、熱を加えていく。


 混ぜながら【練成】の力を加えていくことで、粉が溶け出していくのが判る。凄いな、【錬金術の知識】。


上級精力回復薬


 おお……完成した……。


「……あの、水薬の中級と上級の間には非常に大きな溝があると言われておりまして……数十年鍛錬し続けた職人がやっと、何年かに一回、上級が完成することがある……とデータにあります。その職人が……」


「泣くな」


「泣きますね。既に私が泣きそうです。なぜか」


 ということで、出来上がった上級精力回復薬を、美香さんに飲んでもらう。そう。これが錬金術師に転職した目的だった。というか、ゴーレム作ってる場合じゃなかった。

 

 彼女は既に、危険な状態からは抜け出している。ただ、劇的に回復しているわけではない。普通に食事を食べ、そこから栄養を摂取できるくらいになれば、「癒水」で一気に回復できるかも知れない。

 だが、現状の彼女は明らかに、限界を超えた気力消費のせいで、おかしくなっている。


 それを上級精力回復薬で修復できれば……と思っているのだが。


 メイドズに彼女の様子を細かく確認してくれるようにお願いして、迷宮機能集中総操作室に戻ってきた。


「気力回復薬ってないんだもんなぁ」


「それがあれば……多分、即完治だったと思うんですが」


「んだね」


 えっと。とりあえず、当面の目的は達成というか、これ以上は素材と時間が必要そうだ。まあ、レベルも上がったし、【錬金術・肆】で作れるようになった物を作ってみようかな。


 あ。いや、他にもやることあったか……。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る