182:ゴーレムのサイズ

 それにしてもこの小型ゴーレム、材料も石版一枚に魔道回路、魔石が一つずつでいいのか……。なんて手軽な素材量。魔石の大きさで、連続稼働時間が決定するっぽい。なので、ちょっと動かすだけなら小さい魔石でも問題無い。


 でも。何か作業させたりするには、ちと小さいのか。


 今度は大きいのいくか。


「初級ゴーレムの大きさを変えるのは……イメージと……ゴーレムの石版の量か。というか、石版……一枚でこのサイズだから……密度を考えると……」


【練成】という不思議力のおかげなのか、厳密な体積と同じ様な重さ、量の石版は請求されない様だ。


 とりあえず、石版を五枚、【結界】「正式」で作った球の中に入れる。あ。そうか。ビニールいらないじゃん……よく考えなくても。


 石版を「微塵」で砕く。よーく砕く。ポーションの時も細かくすればするほど、イイ感じになったしね。


 そこに、魔道回路と魔石を入れる。【結界】「正式」は俺の意志で出し入れできるからね。


 ちょい攪拌。魔道回路と魔石は砕かないでいいのがよくわからん。


 最後にイメージする。えーと。五倍の大きさ。身長は150センチくらいにしていいのかな? 密度的にはスカスカな気がするけど……まあいいか。やってみよう。

 デザインは……これまた、某アニメに登場したマスコット系、可愛い系のゴーレムを丸パクリ……だ。だめだ。こっちのセンスは本当に無いな。俺。これも人前には絶対に出さない様にしよう。

 ゴーレムの資料集……というか、その手のイラスト集を買っておかないと……。


グシャ


 って、あ。失敗した。買わないと、とか考えちゃだめ。あと、大きくなってるんだから、時間もそれだけかかる。集中しないといけない時間が長くなってるのは、ちゃんと意識しないと。


 一度自分の部屋に行って、昔買った、ゲームの攻略本のゴーレムを頭に焼き付ける。さっきのマスコット系よりも細かいので、イメージしなかったヤツ。


 よし。イメージが消えないうちに、さっきと同じ様に、石版を「微塵」する。そこに回路と魔石を投入。


 大丈夫。完成するのは……あのイラストのゴーレムだ。


【練成】……。


「正式」を解除する。


「よし、完成だ」


「スゴイですね……。それで初級……ですか。私の記憶の中にある初級ゴーレムとは似ても似つかないというか」


「デザインは某有名イラストレーターだからね。丸パクリだからね」


「それをイメージできているのがスゴイコトだと思うのですが……なんというか……戦えそうです」


 そうだよね。戦えそうだよね。でも、パンチは出来ても……連続技を繰り出させるとか、戦闘中に瞬時に対応を判断させるとかは無理だ。


ガシャ、ガシャ。ガシャ。ガシャ。


 歩かせると思ったよりもスムーズに動く。おお。この大きさだとなんていうか、ちょっと……怖いな……。


 デザインはもっと機能的なヤツがいいのかも。べ、勉強しよう。初級ゴーレムは基本、荷物運搬用とか、荷馬車の牽引用に使用するらしい。なので、単純命令で、単純作業をするような外見の方がしっくりくるのかもしれない。


「初級ゴーレム、別に石版じゃなくてもいいんだよね?」


「はい。ウッドゴーレムやクレイゴーレムなんていう魔物もいますので、それらが落とす素材を使えば、問題ありません」


「あ。いや、それリストにいなかったし、次の素材はブロンズとかアイアンインゴットなんだけど……」


「それらの金属製ゴーレムが完成するかと」


「んーと。多分さ、素材が金属になると加工しにくいと思うんだよね。でも、初級ゴーレムで金属製のヤツもいたんだよね?」


「はい。多かったのは……ブロンズゴーレムだそうです。単純作業用のゴーレムとして運用されておりました」


 うし。なら一度やってみようか。石版と違うのは、インゴットと板がある所だな……。えーっと。なんでか、インゴットと板を同数求められている。うーん。これ「微塵」でどうにかできない……か。

 魔術士ならともかく、今のメインの職は錬金術士だ。金属を削るような強力な「風刃」は厳しい。

 

 そうなると「爆裂石棘」かな……。いや……ちょっと使おうと思っただけで、ズキン……と頭痛が。無理だな。錬金術士でそんな魔術は無理。


 つまり……普通に術で金属を削る……のか。厳しくない? 現実世界だと金属を細断するのは、固い金属で削るのが普通。シュレッダーとかそうだよな。


 あ。そうか。


 ……アイアンインゴットに【練成】を使う。単純な作業……切断、混成、変形……つまり、切ったり再度くっつけたりは【練成】にとって単純作業らしい。

 そういえば……某錬金なアニメで壊れた義手とか【練成】で直してたもんな……。


 なら粉砕もやってくれよ……と思ったけど、俺が思い浮かべているくらい細かく、金属粉にするのは「出来るけど超スゴイ大変」で、そもそも錬金術士のレベルが上がらないと厳しいらしい。


 なので、アイアンインゴットに【練成】で薄い鉄片を創り出す。5ミリ四方で四角く、厚さは0.1ミリくらい。細かくするのはこの辺が限界っぽい。

 出来上がったのはアレだ。くす玉が割れると中からドバーンと溢れてくる紙吹雪の様な……。

 とはいえ、まとまると重さはそこそこある。なんといっても鉄製だからね。


 これを……「微塵」に混ぜる。


「おお……」


 一枚ずつは小さく軽い。舞った……。ぞして……「正式」の中で大暴れしとる……。これ、やばくないか? ちょっと自分でも引くくらい、破壊力抜群、殺傷能力、コスパ高すぎ……。何よりも、使ってるのは普通の「風刃」だからね。


 狂暴な鉄片が舞っている「正式」の中にブロンズインゴットとブロンズ板を入れる。


ガガガガガガガガガッ


 凄まじい音と共に、中に入れた物がぶつかり合って……削れていく……。

 ああ、なんか強引だけど、スゲー無茶な削り方だけど……「正式」の中で行われていることだから大丈夫と思っても、音を含めてかなり厳しい。


 あれ? これ……「正式」に防音を加えられるよな。前にやってたし。


【結界】は魔術じゃないからね。俺の、迷宮創造主ダンジョンマスターのスキルだからね。


 あ。出来た! 防音、消音効果が追加できた! そうだよ。確か、そう思うだけで付加出来てたもんな。前に。どこかで意識しないとダメなのか。


「静かになりました」


 うん。まあ、シロ、顔しかめてたもんね。

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