181:石の錬金術師

「前にさ、非戦闘職って戦闘でレベルが上がらないから、レベルアップしにくいって話だったじゃ無い? それは俺の環境だとってことだったよね?」


 確か、最初の副職を選ぶときに言われたような気がする。


「はい」


「非戦闘職って普通ならどうなの? 魔物が……いるんだよね? 異世界には」


「……そういえば……申し訳ありません、お伝えしていませんでした……異世界は、剣と魔術とスキルの世界であると同時に、魔物の世界でもあります」


「いやいや、問題無いよ。剣と魔術とスキルって聞いて、魔物がいないわけ無いし、ダンジョンが普通にある世界なんだとしたら、魔物もフィールドにいるよね。ゲームの脳的に」


「そう言っていただけると」


「でさ、非戦闘職なんだけど」


「あ。はい。非戦闘職は……どちらかといえば、戦えない者が選択する職業……といったところでしょうか? 社会的地位はそれほど高く無いと思われます」


「多分さ……素材を自力で入手出来る世界じゃ無いと思うんだよね。だから、非戦闘職は戦闘職がいないと成立しない。そこで力関係が成立してしまう。戦闘職と非戦闘職の天職の総数差ってどれくらいなんだろうか」


「正確なデータはありません。が……大体ですが……戦闘職が2、非戦闘職が8の様です」


「そこに魔物の危険だもんね。それは……社会や文化が中世のまま発達しないハズだよなぁ。非戦闘職が力を発揮できる社会にならないと」


「確かに……お起きになったら女神様にお伝えしておきます」


 もの凄く感心した顔で頷くシロ。なんか偉そうでムカつくな。髪の毛をごちゃごちゃになで回してやった。


「むう。なにをぅ」


「だからさ、「微塵」を使用したやり方はともかく、似たようなことをすれば高レベル職人がドンドン生まれるとかないかな?」


「……【結界】はそもそも、迷宮創造主マスターしか使えませんし……魔術士がかなり高レベルであるのに、わざわざ生産職に転職する意味が……」


「そうか……戦闘が嫌になったとしても、魔術が使えれば、魔術士のまま、魔術の教師になるとか道はあるのか」


「はい」


名前 村野久伸むらの ひさのぶ

種族 ハイエルフ


天職 錬金術士

階位 27

体力 94 魔力 131


天職スキル:【錬金術の知識】【練成】【錬金術・参】


=隠蔽=========

天職 迷宮創造主ダンジョンマスター

階位 31

体力 28 魔力 121 


天職スキル:【迷宮】【結界】【鑑定】【倉庫】【収納】

【異界接続】【渡界資格】【言語理解】【次元扉】


習得スキル:

【気配】【剣術】【盾術】【受流】【反撃】【隠形】【加速】【棒術】【拳闘】【魔術】【手加減】

=隠蔽========= 


 あ。そうか。【錬金術・参】だ。


各種中級ポーション、初級ゴーレム


 お、おお! ポーションと共に! キタコレ! ゴーレム! 魔物として見たらなんか変な形のモンスターだなぁ~だったけど、自分で作れるとなると……ワクワクするな。


「ゴーレムって、魔物のゴーレムとは違う形でもいいんだよね?」


「大丈夫のハズです。両手に盾を持ち巨大な門として使われていたゴーレムがいた様ですし」


「おお~自由度は高いのな。まあここで、デカいのを作るのはちょっと実用的じゃ無いな」


 初級ゴーレム……単純な命令しか聞くことのできない、動きも鈍いゴーレムか。ああ、魔物クリスタルゴーレムも、基本初級ゴーレムなのか。


 えっと。


 魔道回路に石版。これに魔石だ。これを……ポーションと違って、【練成】する必要がある。【練成】は影響下にある素材を変形させる不思議力……らしい。石版をゴーレムの頭部に変形させる。おお……なんか気持ち悪いくらい変形するな。これ。あ。イメージイメージ……。


ぐちゃ。


 ……何かになろうとしてた石版が、粘土の様に潰れた。


 一度、【練成】して魔力を通してしまうと、再使用は出来ないらしい。


 ただ、廃棄物となった石版は、数カ月経過すれば再使用出来るようになるし、廃棄物のままでも違う魔道具で使用したり出来るらしい。ってどういうこと?


 ん? これさ……石版を一度分解して再構成してる感じなんだよな……。なら……。


「微塵」で石版を刻む。お。結構固い……が。ゴーレムの石版が粉々になっていく。部屋からビニールのゴミ袋を持ってくる。


 ビニールの中で【結界】を解除。うん。砂が溢れないでよかった。


 このゴミ袋の中の石版の粉……に、魔道回路、魔石を加えて、ガシャガシャと混ぜる。


 ……なんか、変な感じ……。


 そして、再度【練成】。途中で余計な事……雑念が加わるとヤバい感じらしい。イメージは……卓上用のロボット……だ。アレみたいに話すことは難しいみたいだけど、命令通りに動かすことは可能な様だ。

 

 ……。じゃーん……やばい。思い浮かべたのがあまりに詳細すぎたのか……そっくりそのままの小型のロボットが……出来上がってしまった。これは他人に見せられないな……パクりとかそういうレベルじゃ無くて、単なるコピーだ。灰色一色だけど。


「これで……」


 命令は目的などを指示すれば良いようだ。


「ここまで歩け」


 ウィーンガチャ、ウィーンガチャ……。なんだ、このモーターみたいな駆動音。……音無くていいんだけどな……。可愛いから良いけど。


 あれ? 改良とか補修とかできるのかな?


 出来上がった小型ゴーレムを再度ビニール袋に入れて、再【練成】……作動音をしないようにと思いながら、各関節をイメージする。


「ここまで歩け」


 カチャ、カチャカチャ。カチャ


 おお……すげー音がしない! ちゃんと動く。これ、凄いな。


 ペンを置く。それを拾わせる。


「目の前のペンを拾え」


 お。おお! ちゃんとそれがペンだと判別したのかっ! すげぇ! 高性能だな。魔道回路がポイントらしいけど……うーん。少なくとも現代科学では解析できそうに無いな。明らかに不思議力だ。


 ちなみに、こいつは【練成】した錬金術士の命令しか聞かない。ゴーレムを売る場合は、さっきみたいに再【練成】する際に、使用者に魔力を流してもらい登録するらしい。


 うん、その辺は理に適ってるな。


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