172:やさしさで出来ています
172_2:たぎる思い
として、外伝を「サポーター限定」で公開しました。主人公がレベルアップによる強制睡眠で寝ている間(167~168話の間)の「メイド」さんのお話、その2です。今回初めて、森下さんの方のお話です。
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判った。とりあえず、呼び方は異世界でいいや。ラノベとかでお馴染みだし。
(はい。では。【渡界資格】は文字通り、異世界に行くための資格です。このスキルが無ければ、現在、異世界に存在する「dungeon」に移動することができません)
そうなのか。というか、これまでは……「dungeon」はどこにあったの?
(どこにもありませんでした。女神クリュセリアの神力によって創られた場所……とでも言いましょうか)
そっか。だから時間が経過しなかったと。
(はい)
元々時間経過しない便利な場所……ではなくて、その場所が世界の理から外れていたから、時間が経過しなかったってことか。
(そうなります。御主人様にしてみれば、便利な修行場だったと思いますが)
そうなんだよなぁ。現実世界との時間軸での辻褄合わせが大変でさ。会社員には夏休みとかないからね……。こうなってくると、VRRPGとかでよく登場する、時間圧縮システムとかあると良いのになぁと思うよね。
(それは……御主人様の肉体、特に脳に負担がかかるかと思うのですが……)
ですよね。
まあ、無い物ねだりはともかく。こうして、現在、現実世界に居ながら、ちゃんと異世界のシロと会話できているというシステムの柔軟性に感謝しないとね。
じゃなかったら、俺はこっちの世界と完全に連絡遮断されてそっちで話をしなければいけなくなってしまうのだから。
さすがに陰陽寮から少女を奪還してきて、次の手がいつ降り懸かってくるか判らないのに、向こうに居るのは、心落ち着かない。
三日間意識が無かったのは、本当に無責任だったと反省してるんだよね……。
今回、一時間と決めてそちらに行こうと思ってたけど、心のどこかで不安がね。消えなくてね。
(それもこれも、【異界接続】によって、魔力が溢れる異世界に繋がった結果です。その「エネルギー源」が無ければ、この手の無茶は不可能でした)
そうなのか。まあ、とりあえず、【異界接続】した「dungeon」にこの扉をくぐって移動するには【渡界資格】が必要……と。で。次が……【言語理解】か。
(はい、これは、文字通り、言語に関する理解力の向上となります。これによって御主人様は見たこともない文字に直面した場合でも、なんとなく「こんな感じの意味かな?」と想像出来て、さらに、幾つかの事例を参照できれば、読解し、文字を画く事も可能となります)
そりゃ凄いな……何これ、言語のエキスパートになれるスキルってこと?
(はい。そうなります)
でもさ、このスキルがあるってことは……さ。
(はい。異世界には現実世界とは異なる、文化が存在します)
うはー。キタコレ。異世界の街! ……キタコレ!
それは……中世ファンタジーな世界ですか?
(なんで、いきなりQ&Aっぽくなったのか判りませんが、その通りです。異世界は、現実世界での知識に照らし合わせると、ジャンルは中世ヨーロッパ風ということになります)
剣と魔法の世界?
(はい。剣と魔術とスキルの世界……とでも言いましょうか? 諸事情により科学文明は発達しておりませんし、文明も停滞状態にあります)
うはっーそりゃワクワクするなぁ! え? 俺はそこへ行けるの? アブナイの? 魔物とか?
(笑。ダンジョンの始発点、入口を設定すれば異世界の大地に立つことが可能です)
そ、そっか……それは……あの、まずは長期休暇か! それか。有給とか……あ。いや、今のプロジェクト……うーん。悩ましいな。
(そして。異世界での活動……にも関係してくるのですが、最後の固有スキル【次元扉】で、ダンジョンドアを任意の場所に自由に設置できる様になります。これは、先ほどの始発点という意味では無く、今、御主人様の隣にある、迷宮機能集中総操作室に繋がっている「扉」の事です)
え? この扉って動かせないんじゃ無いの?
(このスキルを得て、初めて移動可能になりました。つまり、現状、現実世界に一つ、異世界に一つの扉を設置、移動することが可能です)
おー。それは便利。というか……この家から、この扉を移動する事も可能ってことか。
(【次元扉】を設置しなければ、私との会話は出来ませんが、格納、展開と……)
格納……。お。
これまで設置したままの位置で、威圧感バリバリで起立していた扉が……消えた。跡形もない。で。この状態で……シロ? 聞こえる? 聞こえないか。って言ってたもんな。
さっきの位置で展開。
うお。何の異和感も無く、扉が出現した。
シロ、聞こえる?
(はい。扉は、問題無く格納、展開出来ましたか?)
出来た。すごいね、これ。まるで手品だ。さて。【次元扉】は便利になった、と。で、後は……。
(スキル【鑑定伍】【倉庫参】【収納壱】が解放されましたね)
【鑑定】が進化して種族が表示されるようになったんだよね?
(はい、そうなります。逆に【鑑定伍】はそれのみです。そして……【収納】は「ダンジョン」以外でも使用できる【倉庫】となります)
お。おおお! そうか。これさ、ずっと疑問だったんだよね……表示されてたよね、ステータスに。【倉庫】と対になってるのかと思ってたんだけど。
(【異界接続】により、魔力が補填されるようになりました。これにより、【収納】のスキルが使用可能になりました)
最初は? 何㎏まで?
(【倉庫】と同じです。1㎏からのスタートです)
この【倉庫】ってスキル、最初「使えない」と思ったけど……レベルアップでどんどん容量が増えていくんだもんなぁ。
【倉庫】も同じく最初は1㎏だったのが……今じゃ……。
(今回のレベルアップにより【倉庫】の容量は10tまでとなっています)
うん、そりゃ中々の容量だ。つまり、
(はい。現状、私にその情報を開示できる能力はありませんが、その可能性は高いです。さらに少々使い勝手が悪いですが、現実世界での使用も可能です)
え? マジデ? なにそれ。えっとえっと……。
(使用する際に時間がかかりますし、魔力消費も大きくなるので、安易に何度も使用することは難しいかと思いますが……)
えーと、魔力はしょうがないとして時間? ……アクセスに時間がかかるみたいな? セーブロード時間が?
(はい。詠唱時間と考えてもらっても良いかと思います。使用したいと思って……そうですね。数分は必要かと思います)
それは……戦闘中とかの使用は難しいってことか。
(そうなります。……さて。今回のレベルアップで解放された能力はこんなところでしょうか?)
あのさ、レベル29でプレゼントあったじゃない? アイテムの。アレって、準備しておけって意味だったとか?
(はい、そうかと思われます。さらに、あまりに一気にたたみ掛けますと……御主人様が御倒れになる時間が増加するので……)
ああ! そうか! それもあったか……。そうか。分散してくれた……女神様のやさしさってことか。さすが。頭痛薬の様なやさしさ。
(ある意味それは比べちゃいけないレベルといいますか)
そうね。うん。すまん。
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