169:状況把握
ぶっちゃけ、ダンジョンでの事が気になって気になって。とにかく気がかりで。即移動してシロに各種確認したかった。
が。
二つの世界の時間が完全に同期しているのだとしたら、これまでとは大きく状況が変化する。
それこそ。
「今から数時間、失踪するよ。携帯も通じないし、そもそもネットも見れないから連絡取れないし。んじゃね」
これな。
良く考えるほど、無理……だよな。
現代人の基本として「常に連絡が取れる」という常識が存在する。例え睡眠中であっても、横にスマホが置いてあり、超緊急であれば連絡が取れる。別におかしい考え方じゃ無いだろう。そしてこれを無視するのはスゲー難しい……。
特に今は、陰陽寮からお姫様を奪ってきた直後だ。
今回、不覚にも三日間も寝込んでしまったのはある意味致命的なミスだ。それこそ、起きてみたら、関係者一同全員殺されていた……可能性もあったのだ。
考えれば考えるほど冷や汗が止まらない。
簡易結界で防御できる限界はどの辺なんだろうか? その検証も厳密に行ってないし。
ということで、迂闊に向こうに行くことも出来ず、モヤモヤしたまま、各種連絡、確認、返事が返ってくるのを待っている。
シロが大人になったのはなんだっけ、第二形態進化とか言ってたっけ? それはまあ、説明が丁寧になった上に賢くなってる気がしたから受け容れれば問題無いだろう。
次に強制的に稼働した【異界接続】。これのせいで時間が同期した。その辺もうちょい説明はして欲しいけれど「仕方ない」とスルーしておこう。問題は「ダンジョンは理を超えて創成された。その維持はこれまでは女神クリュセリアの神力で賄っていた」という部分。
これによって、女神クリュセリアが存在している事が判明した。あの、アドバイスをくれたりしていたのは……女神様だったのだろうか?
そして、その女神は現状、半休眠状態で実働率は数%……会話が出来なくなって、今後は手紙での対応になったのはそういう事だったのか。
その後はもう、意識を失う前にベッドに……と思って慌てて戻ってきてしまったからな……。
現状、注意しなければいけないのは
・ダンジョンで活動する時間を捻出する
そのためにはまず、自宅の安全確認が必要→
襲撃実験をしてみるしかないか……。味方の能力者ってなると鏑木さんなんだけど、戦闘能力はほぼ無いに等しいって言ってたから……あ。
そうか。倉橋さんに協力をお願いするしかないか。あの人なら「戦える」能力者の知り合いも多いだろうし、そもそもあの人自体がかなりの使い手なのは確実だ。実際に立ち会った訳じゃ無いけど、なんとなくそんな感じがしたし。
現在発動している簡易結界に対して本気で攻撃してもらったらどうなるのかが知りたい。能力者の強度というか、強さも出来る限り敵に合わせて欲しいし。
「いきなり、襲撃できるかには少々ビックリしたが、まあ、こういうことか。丁度良かったかもしれないな。うちも君と敵対している……という顔が出来る」
連絡をすると早速やってきた倉橋さんがそう言った。
この人の強権発動なのか、それが当たり前なのか判らないが、連絡して早々に、倉橋さんの部下が「屋敷に強襲して何らかのダメージを与えよ」という命令を実行してくれていた。
まあ、こういう緊急命令というか、突発的な命令に対応出来ないと現代の戦いでは通用しないのかもなぁ……とも思う。
「今回仕掛けたのは、現時点でうちの三番手、五番手の能力者と思われる二人だ。彼らには「詳細は分からないが、陰陽寮の施設から要人が攫われた気配がある。その真相を調査し、出来るのなら奪還して欲しい」という実に真実バリ盛りの命令した。これはもう、嘘じゃ無いからな、真剣にならざるを得ない」
「それで……結果は……どうにも結界を破壊できなくて退散ですか」
「ああ、情けないがそれが私の元に上がってきた結果報告、最終結論だね。「我々の能力をもってしても結界を破ることは能わず」だってさ。限界まで能力を振り絞った所で退散したそうだ。ちなみに、この三番手、五番手の能力者は、通常の……私の知っている結界であれば、数瞬で破壊出来るくらいの能力は所持している。つまりはそういうことさ」
「そうですか。ありがとうございました」
「ちなみに、この報告は陰陽寮の方へも行っておいた。その話をどこから知った? なんて聞くような間抜けはさすがにいないからね。混乱している所にさらに混乱の灯火を投げ込んでおいたよ」
「混乱しています?」
「ああ、大いに。「星詠み」の巫を拉致したのは君だという意見は一致している。確定的な証拠は無いがね。初野瀬……ああ、君が強襲した施設の名だな、に多々設置されていた監視カメラは尽く使い物にならなくなってた様だし」
そりゃ。カメラは念入りに潰したからね。
「問題は、直接迎撃に当たった能力者達が、全員再起不能レベルでやられてしまっているという点だ。これは脅威でしかない。陰陽寮の施設……要塞、砦は全国に五つ存在する。そして、その施設には最低限にして必要十分な警護が配備されている。それこそ、あそこには、我々の弱点である「破気」の弾丸を装備した狙撃手が十名以上居たはずなのだ。それが全く刃が立たなかった……」
うん、正直、慣れるまでは結構怖かったけれど、慣れてしまえば……って感じでしか無かった。さらに言えば、能力者としては随分と格下だったし。
「狙撃手も能力者ではありましたよ? かなり力は低そうでしたが」
「ああ、一般の兵士なんかより、ほんの僅かでも能力を持つ者を鍛えた方が効率がいいからな。これまでなら戦場に出せなかった者達を仕込んだのだろうね。今はまだ。「破気」の弾丸の数が用意出来ないのも大きいだろう」
それはそうだろうな……。
「さらに、
倉橋さんが楽しそうだ。
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