168:反動睡眠
167_2:お仕事
167_3:お世話
として、外伝を「サポーター限定」で公開しました。主人公がレベルアップによる強制睡眠で寝ている間(167~168話の間)の「メイド」さんのお話です。というか、外伝は1話もメイドさんの話でした。大人の話です。
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「お目覚めですか?」
「うわっ!」
ビックリした……松戸……さんか。何故そこに。って、俺のベッドの横に椅子を持ち込んで……そこで張り込んでたのか。
「良かった。申し訳ありません。さすがに三日寝込んでおられたので少々心配になりまして、森下と交代で様子を見させていただいておりました」
お、おう、って三日?
「っていうか、俺が寝てから……あ。そうか」
ベッドサイドのテーブルに置いてあったスマホを手に取る。
76時間! 経過か! 三日ちょいか! そんなにか!
「御主人様が「今から俺は倒れるように寝込む。食事やトイレは多分、心配しなくて大丈夫だから」とだけ言い残して寝室にお入りになられて丸一日経過した時点で、一度様子見をさせていただきました。さすがにその後、食事やトイレでお起きになると思っていたのですが、一切反応がありませんでしたので、さすがに心配になりまして。二日目の半ばから二人でお側に付いていようと」
ああ、そりゃ……確かに。うん、ここに居たことは判ったし、別に怒ることじゃないな。
そりゃメイドとしてというよりは、同居人として心配になるわな。俺だって彼女達が丸三日寝込んでたら様子見に行くし。
それにしても食事とか、トイレとか、必要にならなかったのかな? 俺の身体……なんなんだろうか。おかしく無い?
「御食事は?」
「ああ、至急お願いしたい。多分、肉と野菜と……とにかく大量に喰いたい気分だ。シャワー浴びてから行くよ」
「念のためにお聞きします。体調は大丈夫でございますか?」
「ああ。お腹が空いてる……くらいか」
「トイレの方は……」
「そうなんだよな……本当なら絶対にヤバいことになってるハズなんだけど……これからするよ。多分、平気」
「はい……その……実はこれもご用意しておりました……」
ってそれは! 尿瓶か……! そりゃ……そうか。体調おかしいと思うし、そういうことになるかもって思うよな。当然、用意しておくか。漏らされたら困っちゃうもんね。
サイドテーブルに水のペットボトルが置いてあるのに気がついた。ああ、俺が自分で置いといたんだ。
手に取っておもむろに口に含む。
「旨い……」
松戸さんがそれを見て、これまで無かったかのようにニコッと笑った。大丈夫ですね? という事だろう。ああ、よほど心配をかけてしまったんだな……。
「急ぎ、森下にも知らせて、御食事の用意をさせていただきます」
って森下さんは今、寝てるんじゃ無いの?
「寝てるなら起こさなくても」
「お目覚めな事を知らせなかったら後で私が怒られてしまいます」
「はあ。なら、まあ……いいですけれど」
結局。ペットボトルの水は一瞬で無くなり、もう一本手に取って、お風呂場に向かう。トイレに行き(普通に出た)、シャワーを浴びて、さらに水を飲む。最終的に二リットルくらい飲んでしまった。が。まだ乾いている気がする。
そんなこんなしているうちに、食事が用意された。
「ああ、森下さんもごめんね。イロイロと心配かけて。二人とも睡眠不足で無ければいいけど」
松戸さんも森下さんもどこか嬉しそうだ。
「片矢様は既に問題無いくらい回復されました。自ら動きたいということでしたので、美香様、お付きの方々のお世話をお手伝いいただきました」
一瞬……ん? と思ったが。が。何とか思いだせた。そうか。そういえば、美香さんは瀕死状態だったじゃないか……。ダンジョンから戻って時間が経過しないという前提で、向こうに行ったんだった……。
あまりにも無責任……というか、もしも襲撃があったら……。くそっ。でも、どうにも逃れられなかったし。
「襲撃は?」
「ございません。念のため、こちらも交代で周辺を警戒しておりましたが、偵察の者も発見できませんでした」
「無かったならよかった……」
おいおい……本当に……これ、運が良かっただけだよな?
肉も野菜も……さらに魚も。事前に用意していたのかもしれない。凄いな。メイドズ。
二人とも料理の腕はそこまでではない。牧野のとこにいた時はその手の事は一切しなかったそうだし。でもここで生活する様になってから、ネットなどでレシピを調べて、かなり頑張ってくれている。
というか、掃除洗濯、料理……全部得意じゃ無いんだよね。元々。戦闘職だもの。彼女達二人とも、格闘バカだったみたいだし。
「三沢様、倉橋様から数度連絡がございました」
アレ? そういうのそっちに?
「御主人様に何度か連絡されたそうですが、繋がらなかったという事で、私に」
三日寝てればそりゃそうか……。連絡先……交換してたのね。いつの間に。
「連絡……した方がいいか」
面倒くさいな……さっさとダンジョンに戻って各種確認したい。でも、こちらの時間経過と同期しちゃったんだよな……。あ。そういえば!
「やべっそういえば、会社に連絡……」
「そちらも連絡させていただきました。現在の伝染病状況等も合わせて考えて、リモートワークと有給を上手く組み合わせてくれて構わないとのことでした。最終的に現在は御主人様提出の多様大量な提案書を現実可能な企画書に構成し直している部分も多いとのことで」
え? そうなの? っていうか、なんでそんな細かいコトを松戸さんに伝えてるんだ?
「よく、そんな詳しく話してくれたね」
「安中様が御配慮くださるそうです。先輩によろしくお伝え下さいと」
すげーな。というか、安中係長、松戸さんに良いように言い含められてる感じがするぞ。やばいんじゃないか? うちの会社。
ふう……というか、お任せしちゃおう……かな。
「松戸さん、今後も関係各所への連絡、お願い出来る?」
「はい! お任せ下さい!」
だから、なんで仕事を増やされて嬉しい顔をするのか。というか。あ。ヤベッ。も、森下さんがスゲー目で睨んでる……いや、だって……あの……森下さんは自由に喋るのしんどいわけで。だから無口になっちゃってるわけで……って、あれ? あれれ?
なんとなくだけど……これまで見えていなかった絡まっている……気力の流れが……森下さんの喉奥、ああ、脳や延髄、脊髄に掛かる変な流れが……判る? 見える? なんだこれ。
うん、これ、松戸さんの事を拘束していた呪いっていうか、【傀儡師】牧野文雄の能力、【傀儡】の力の流れ……か。これまで体内の気力の流れは一切見えなかったのになぁ。
でも、これなら……。
「森下さん、どう?」
「……え? あ? あれ? ご、御主人様……何……を……あれ?」
今のが思わず声が漏れた感じ、か。音量は小さいが、呟きとも違う。
ごちゃごちゃに絡まっていた針金のような気力を丁寧に抜き取り、こんがらがっていた部分を消し去る。一部力押しで出来ない所が面倒だったが、それほど時間をかけずに消去できた……ハズだ。消えた。無くなった。
「枷が……話してはいけないという……枷が無くなった? のですか?」
「いや、俺には判らないよ。ただ、松戸さんと同じ感じに解除できた……んじゃないかな? どう?」
「はい……は、はい……ハイ……あ、ありがありがどうござい……」
泣き崩れてしまった。松戸さんが慌てて側に駆け寄る。
「多分、問題無いと思うけど、問題あれば教えて」
「はい、はい……はい……」
泣きながら、崩れ落ちたまま、頷く。普通に喋れるのに規制されて喋れないって……辛かったんだろうな。
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167_2:お仕事
167_3:お世話
として、外伝を「サポーター限定」で公開しました。主人公がレベルアップによる強制睡眠で寝ている間(167~168話の間)の「メイド」さんのお話です。というか、外伝は1話もメイドさんの話でした。大人の話です。
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