167:レベル30

167_2:お仕事

167_3:お世話


として、外伝を「サポーター限定」で公開しました。主人公がレベルアップによる強制睡眠で寝ている間(167~168話の間)の「メイド」さんのお話です。というか、外伝は1話もメイドさんの話でした。大人の話です。


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 楽しくて。楽しくて。


 なんでこんなに楽しんだろうというくらい、楽しくて。


 趣味を大切にしている人っていうのはこういう快感、快楽を味わうために生きているんだなと、改めてしみじみと思う。


 俺、このダンジョンでの鍛錬、よっぽど好きなんだな……。


 別に費やしている時間はね。当然それなりにかかってるんだよね。でも、それを凌駕していく万能感……というか。


「爆裂火球」を大きくしたり小さくしたり、敵の配置を瞬時に理解して弾ける場所を変更したり、瞬時にもう一つ追加で「ホンの少し小さい」「火球」を放ったり。


 さらに元々可能だった温度を上昇させたり、それに伴う魔力消費量からコスパ最強はどんな感じかを絞り出していったり、一つを大きくするのと複数を広げるのとでどれくらいの費用対効果に変化があるのか……とか。


 テーマ的にたった一つ、とりあえず、今回いじっているのは「火球」に「爆裂」を加えた物のみ。にも拘らず、それだけを突き詰めていくのだとしても、無限の奥行きを感じられるなんて! まさに宇宙。


 文字通り、睡眠を忘れてのめり込んでしまった。敵を倒し、魔石を回収し、部屋に帰り、またダンジョンに跳ぶ。


 繰り返しだ。だが、その繰り返しの中でかすかな、しかし確実な「気づき」が山ほどある。ああ、俺は、こういう、小さな差違を突き詰めて検証し、自分に取って最上の瞬間を生み出すことに拘りがあったのだな……と、この歳になって気付かされるとは。


----レベルアップ----


 そう。そんな風に熱中していれば、そりゃレベルも上がる。既に……魔術士のレベルは47になっていた。というか、これで48か。これ、50でまた何かスキルゲット出来るはずだよな。


 等とのんきに思っていた自分。多分、小さな事で幸せを感じる小市民なのだろうと改めて感じていた……。


 が。


「魔術士レベルアップおめでとうなのよぅ。さらに迷宮創造主マスターレベルアップなのよぅ。レベル30到達なのよぅ!」


 その瞬間。元々白い管理室が、さらに白く、光りが溢れて………何も見えなくなった。

 視界に見慣れた風景が戻ってきた時……には……そこに見慣れない女性が立っていた。


 身長は……150センチ位か。小柄だ。少女にしては何処か落ち着いている。

 白い髪。肌色……といえなくもないけれど白い肌。瞳の色は黒。髪にあった複雑な意匠が施された、これまた複雑な形、紐で縛ったり緩んだりしている白い貫頭衣。貫頭衣? え? この模様は……。


「シロ?」


「はい。迷宮創造主補助機構附属多方向対応支援妖精最終世代第弐形態進化に対応致しました。これより、御主人様の質疑応答対応だけでなく、精神面、肉体面でもフルサポート可能となります。今回のシステム拡張により、やっと罷り越す事が可能となりました」


「?」


「システム【異界接続】が稼働開始致しました。これは迷宮創造主ダンジョンマスターのレベルアップ、能力向上により、魂器が形成、その大きさが規定値を上回ったためです。これにより、地球世界のリンクが築かれ、互いの世界の時間経過が重なる事になります」


「え? マジで? なにそれ」


 り、理解が……というか、シロ、お、大きくなった? の? そんなんあるの? それだけじゃなくて、何? か、賢くなった? そもそも口調が……。


「システム稼働により、これまで断絶していた時空間が接続されました。つまり「こちらの世界で過ごした時間と同等の時間が、地球世界でも経過」します」


「経過します……?」


「ダンジョン側で12時間睡眠を取って休息した場合、、地球世界に帰還すれば12時間経過している、ということです」


「ええっ! そうなの?」


 ……。


 まあ、よく考えなくても、それが普通だ。これまでがおかしかったんだろうけど……けど……それはつまり、便利な法則が失われたということだろうか?


「そもそも、このダンジョンの存在自体が、理を超えて創成されたモノです。これらは女神クリュセリアの神力によって維持されておりましたが、それも既に尽きかけておりました。最近、ダンジョン側との移動に多大な負担を感じるようになっていたハズです」


「え。あ、あの「やる気」が失せる……というか、盛りあがっていたのが萎えてる……とか……かな?」


「ええ、そうです。アレは……やる気が失せるとか萎えるなどよりも……実はもっと深刻な現象で……足りない神力の代わりに御主人様自身の力が消費されていました。現状では被害が最小限になる様に調整されていましたが、それもこれも神力あってこその法則」


「神力がさっぱり無くなった状態で、ダンジョンへ移動しようとしたら?」


「間違い無く、命を失うことになったかと」


 怖っ。


「そのため、システムの稼働非稼働を御主人様に委ねることが出来ず、一方的に稼働することとなりました。申し訳ありません。本当に本当に……ギリギリであったとお考えください」


「いや、まあ、命に関わるんじゃ仕方ないというか」


「申し訳ありません。様々な禁忌に触れる可能性があるため、それを事前にお教えすることも叶いませんでした。現状、既に女神クリュセリアは半休眠状態にあり、実働率は数%です」


 女神……か。これまでたまに解答してくれていたのがそうなのだろうか?


「先ほど説明しました通り、既にこの地の時間は現実世界とリンク開始しております。その上さらに……以前と同じ様に御主人様の身体に大きな変革が起こっております。この場合……次に発生するのは……」


「! 前に大きくレベルアップした時と一緒な感じか?」


「はい。今回はレベルアップ幅はそれほどではありませんが、様々な新たな要素が御主人様に流れ込んでおります。なので以前よりも……」


「寝込む……のか?」


「はい。確実に」


 確か以前は……50時間ちょい寝てたんだっけか? やばい。こないだと同じだとすると、こちら側で寝たら二日間行方知れずってことになってしまう。しかも屋敷内で神隠しだ。


 部屋に入ったとしても、扉があるだけだもんな……。


 まあ、つまり。確かにダンジョン側で寝込むのはイロイロな意味でヤバいな。


「判った。今から戻って、すぐにベッドに入るよ」


「はい。それがよろしいかと。お世話を出来る者はいらっしゃるのですよね?」


「ああ、メイドが二人」


「ではそれをお申し付けてからお眠りください。それ以外の御説明は、お戻りになってからということで」


「判った。やばい。もうちょっと来てるかもしれない」


 言われるまでも無く慌てて扉から家に戻り、ベッドに倒れ込む。ギリギリだったのか、その後、何も考えられぬまま……眠りについた。



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167_2:お仕事

167_3:お世話


として、外伝を「サポーター限定」で公開しました。主人公がレベルアップによる強制睡眠で寝ている間(167~168話の間)の「メイド」さんのお話です。というか、外伝は1話もメイドさんの話でした。大人の話です。



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