164:新しい術

 ふう……うん。雰囲気ね。大事だよね。ダンジョンだもんね。ここは。魔法鞄と書いてマジックバッグな。うん。無いとね。面白みに欠ける、趣に欠ける、雅さに欠けるってヤツだよね。


 超絶便利だもんな。そりゃ使える場所が限定されるわな。

 こ、これも、その「大地操作」みたいにスゴイ使えるかもしれないじゃないですかー。


「シロ……もう一度。この魔法鞄、持ち出せ……」


「ないのよぅ」


「……ですよね」


 ……。


 さて。プレゼントでちょっと盛りあがりすぎたけど。それは仕方ないということで、後は……ああ、そうか。


【魔術参】を習得したってことは……入手した呪文……。


地:砂化

水:-

火:爆裂

風:魔力感知・小


 は、この三つだった。


「砂化」:は、主に、主成分が「わかりやすく」土系の物……石とか岩とか砂利とかを砂に出来る。その細かさは自由自在。当然注文を多くすればするほど魔力消費は多くなる。


 超細かい足を踏み入れればふわふわと表現されるような柔らかい砂浜の砂の様な状態から、砂利混じりの砂礫、ただ単に投擲用に最適な握りやすい大きさの小石状態まで、自由自在だ。


 なんとなく判ってきたのは「大地操作」の術は、あらゆる土系の基礎だということ。


 非常に自由度も高く、様々な事が可能だが(敵の拠点の分厚いコンクリート壁に穴を開けるとか)、その分非常に魔力を多く消費するし、何よりも術の発動までの時間も長い。


 戦闘中に繰り出すのは無理だ。当然、敵の行動を先読みできて、ある程度集中できる環境なら使用可能だけどね。それこそ、ファンタジーな世界で定番の冒険者パーティの様な感じでしばらく前衛が敵を引きつけているなんていうシチュエーションならバッチリいけそうだ。

 最終的に魔力消費が激しいのは解消されないだろうけど。


 だが、今回覚えた砂化の呪文はそれに比べれば異様に軽い。発動まで時間もかからない。瞬時に効果が表れるので、戦闘でも問題無く使用可能だろう。石畳の床がいきなり砂となり、足が埋まれば動きが完全に止まってしまう。


 術としてシンプルにした代わりに、細かいアレンジというか、操作というか、複雑な事もは不可能になっている。

 それこそ、壁に穴を開ける……だけなら「砂化」で問題無いと思うが、空いた穴をトンネルにして、安全のため天井や壁を固めて……なんてことは「出来ない」。いつどこで落盤、崩壊が始まるか判らない。

 実際に今度またトンネル掘りをするのなら、「砂化」で穴を開けて、その開いた場所から順番に「大地操作」で固めていく……というのが一番消耗を抑えられる気がする。


「爆裂」:爆裂は……なんか、思ってたのと違うというか、ただ単純に使うと、弾けるように周囲に力が散らばる感じなだけだった。それだけでも使えない事も無いが……花火の爆竹の様な感じ……で正直、あまり大したものでは無いかと思ったのだが。


 イマイチのように感じたのは気のせいだった。実際には、「火弾」「風刃」「火球」等に組み合わせて使うと、凄まじい威力を得られる事が判った。


「火弾」が着弾時に爆ぜる様になった。それまでは、込める魔力にもよるが、なんていうか、火の玉が敵を抉る感じだったのが(突き刺さる……という感じではない)、着弾時に爆発することで数倍の威力、効果を期待出来る様になった。

 ちょっと激しくなりすぎて、派手な光と爆発音がするので隠密行動では確実に使えない。


「火球」も同様だ。というか、本来こういうものなんじゃないか? という気さえしてくる。生成された火の塊、玉が、燃え上がって消えるだけでも脅威だったのが、燃え上がって消える瞬間に弾けるように爆発するのだ。

 なんていうか……焼夷弾を使用した際の映像を見やすくしたというか……。まあ、とにかく画期的なオプションを手に入れたと言って良いだろう。「火弾」と同じ、いや、それ以上に派手で音が大きくなったのはどうしょうもない。


 そして……さらに凶悪だったのが「風刃」に付加した場合だ。


「爆裂風刃」とでも命名しようか。なんとなくヒーロー戦隊的な名称だが、その威力たるや凄まじい。元々、魔力消費が少なく発動までの時間も短い基礎魔術だった「風刃」。それがほんのちょっと使用感覚が重くなるだけで、残酷な追加効果を得てしまったのだ。


「風刃」を放つ。それなりに魔力を込めてから放ったので斬れ味は鋭い。鮮やかな、綺麗な切断面を残して、魔物の腕が落ちた。これが普通の「風刃」だ。

 正直、魔力を込めなければ傷痕を作るくらいが関の山といった感じだろうか。特に敵のレベルが上がってきてから、安定感に欠けるためあまり使用しなくなっていた。


 それが「爆裂風刃」であれば、魔物の腕に当たった瞬間に、そこを中心に風の刃が「弾け」て、魔物の本体を抉り、弾き飛ばしてしまう。


 同じ様に……「石棘」も酷い。棘が突き刺さった瞬間に石が弾け……対象を吹き飛ばす。

 というか、「石棘」の様に物が存在する場合の「爆裂」は効果が数倍違う様な気がする。

 ただ、「風刃」に比べて格段に消費魔力が多く、発動までの時間もかかる。使い勝手も含めて、これはもうちょっと検証が必要だろう。


「魔力感知・小」:はもう、「気配」の魔力版と言った感じだろうか? 魔物は尽く魔力持ちの様で、本来なら非常に有用なスキルの一つなんだと思う。

 が。迷宮創造主ダンジョンマスターである俺には、イロイロと能力が被ってしまっていて、そこまでありがたみを感じないというくらいか。


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