161:地獄の劫火
はい、どうも。こちら現場でーす……って実況中継ってこんなだっけ? いやね。目の前の光景がね……地獄……。
広間にモンスターを大量に詰め込んだ、モンスターハウスを作ってそれを狩るというのは、
それにしたって。
詰め込みすぎた。蟻だから多少重なってても問題無いだろって無茶をした。
ごめん。
アントだからってこれはないよな……ってくらい、広間に二足歩行の巨大蟻が詰め込まれている。戻ったら、も、もうちょっと広間を大きくしよう。うん。絶対にしよう。
そもそも、攻撃するには広間に一歩入らないと、魔術で効率的にダメージを与えられない。廊下から放つと、廊下の壁に大きく削られて、減衰する。
で。だ。現状一番効率的なのは、オークの時と一緒の戦法だろうか。でもなぁ。「風刃」の連発……でこのゴチャゴチャの広間をどうにかできる……とは思えないよな。
ポイントになるのは【復唱】か。このスキルは確かレベル30の時に入手してそのまま放置してあった。
なんとなくだけど「あ。今何か発動した……」っていう瞬間があったので今さら感バリバリだけど。
効果としては術がズズッと重なって発動して、効果が倍加する……みたいな感じだと思う。これを意識して……「火球」かな。とりあえず、呪文を放って様子見て、ダメそうなら即帰還だな。
【復唱】「火球」を次々と発生させて、広間内に発生させる。
ブゴオオオオオオ!
久々に使う「火球」は、思ってたのと違った。何だこれ。
確かに俺はこれを【結界】「正式」で囲んで牧野興産の廃工場と本社ビルの上層階を溶かして消した。
最初に創成したときは普通の火の玉だったのを、超高温の火を想像することで火力を上げたモノを生み出したのだ。
だけど。いや……その。
なんかおかしいくらい威力上がってない?
自分の手前から次々と「火球」を生み出し、放つ。白熱化したその火の玉は俺の知っているモノよりも遙かに高威力だと思う。
周辺の巨大な蟻、ソードアントやリーダーアントを数瞬で溶かしていく。
これだけ凄まじい威力……ということは、火力、その火の温度は凄まじいことになっているハズだ。にも関わらず、俺は平気でその只中に立っている。魔術って不思議。
自分の前方、円形範囲……火の玉が五つ構築され、出現した。
俺が広間に一歩踏み込んだ事を感知し、襲いかかろうとした体勢のまま、蟻が影になって消えて行く。
ソードアントよりもリーダーアント、そしてガードアントの順で強いハズだ。俺がこれまでに相手にしていたオークよりも高レベルだ。
にも関わらず。個体の強度差など全く関係なく、一気に消滅していく。いやいやいや……あり得なくない? そんなことないのかな?
文字通り、俺の……火力がおかしいってことなのだろうか?
最初に生み出した「火球」で広間の半分の敵が消え去った。
残っているのは、クィーンの周りに重点的に配置してあったガードアントとリーダーアント。
それも。
まだ、ハッキリとは何が起こったか認識できていないのか、仕掛けてこようとしていない巨大な蟻達を一切気にしていないかの様に、数歩前に出る。
再度、同じ様に、俺の前方に「火球」を発生させた。
グブオオオオオオオオ!
「火球」は別に、荒れ狂っている炎の奔流ではない。それこそ、太陽のプロミネンスの様に蠢いている感じでは無い。
ただ、俺の思い通りに、その場所に。
発生し、消える。
ただ、それだけだ。
だが。それだけの数瞬で……目の前の敵が、黒い影となり……広間の床に染みを作って消え去っていく。最後にはその染みすらあっさり消え去ってしまう。
この破壊力、この威力、万能感! これはもう、凄すぎる! 俺が生み出している「火球」はタダの「火球」じゃないんじゃないだろうか?
「これぞまさに地獄の劫火! 圧倒的じゃないか! 俺の力は!」
と。蟻さんが言葉を理解出来ないのは知っていたので、恥ずかしげも無く叫んでみた! こんなセリフ、普通じゃ言えないよ? 言ったこともないし、言おうとも思わないし。
やばい。気持ち良い……このなんていうか、無敵の蹂躙感覚。蹴散らす、蹴散らす、蹴散らす! こんなん、ダメだ。アドレナリン、ドーパミンなんていう脳内麻薬がドバドバと出まくってるのが判る。
特に効果的だと思うのが【復唱】だ。これ、意識して使うと、特に火系の呪文は、単純に効果が倍どころじゃない。自分が想定している「温度」も倍加、いや相乗効果で何倍になっている様だ。火力のかけ算ってどういう計算が成り立つんだろうか。
高温の火が創成される。その温度がグバンっと加算される。ジュッと二足歩行している蟻が消滅する。
これを三回繰り返してただけで、広間にギュウギュウだったアント達は完全に消滅した。
キシャガーーーーーッ!
そして既に、太い下っ腹部分が1/3消え去って、怒り狂っている巨大な影が……怒り狂って雄叫びを上げている。
ソードアントと同じ様な造りで、刃となっている長い腕を四本、振り回してこちらを攻撃しようとして……その手が消滅した。さらに、醜悪な悪臭を撒き散らかしている溶け出した腹に目掛けて、「火球」を発生させる。
さらに。
クィーンアントの胴体部分、他のアントと同じ様な形の胴体部分にも「火球」を発生させる。
グブパウ……
何かが、どこかが沸騰する様な音。怯んだかのように女王の動きが止まる。追撃とばかりにさらに……念のため幾つもの「火球」を生み出して……広間の形がハッキリと判るまで、消し去った。
「ハハ! アハハハハハハ! アハハハハハハハははははっ!」
炎の奔流は無かったのだが、俺の中で圧倒的な「力」が暴れ狂い……叫ぶかのように大声で嘲笑が喉の奥から弾け出されてくる。
これが、これが、俺の「力」だ!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます