154:想定外

 って、まあ、幾ら見事なジェッ〇ストリームアタックで攻め込んで来ても、【結界】「正式」を斬り裂くことは敵わなかったようだ。


 逆に、「正式」……透明なバリアによって動きを受け止められてしまう。


「グッガッ!」


 動きを阻止され、汎発をうける。なんとも言えないくぐもった声を上げる三人。そして。


「グアッ!」


 同じ様に阻止される五人。いやいや……なんで気付かないと思えるのよ。


 正面から登場した三人は派手な動き=ジェットストリ〇ムアタックで目を引いて、それに気を取られた所に背後から本命の五人が襲いかかると。


 その覚悟はまあ、いいけど。いいんだけど。


 ここまで圧倒的にそちらの攻撃を防いだり、跳ね返しているが見えてないのかな? まだ、俺、一切攻撃してないんだけど。


 さて。どうしようか。とりあえず、攻撃を仕掛けてくる勢いのある人達は動けなくしておいた方がいいよな。特に仕掛けて来ているヤツラは……黙らせておかないと、帰り道、お姫様を連れ出して来た時に余計なトラブルに巻き込まれてしまう可能性があるか。


「なっがっ!」


「ゲブグァ」


 脚部から突き出る「石棘」。


 驚愕の表情で此方を見るガ〇ア、オ〇テガ、マ〇シュ。そして……あ、こっちが本命って事は、ラン〇・ラルとその部下か。こっちにはド〇が配備されなかったんだよなぁ~ってどうでもいいか。


 とりあえず、石で出来た棘が五本ずつ足から生えている。前回から改良されたそれは、幅が1センチ程度。引き抜きにくい様に鉤爪の様な出っ張りを付けてある。

 これが両足を貫く様に、大地から互い違いな方向に突き出されると……。脚足の可動域が完全に固定されて、身動きがとれなくなる。

 

 つまりは。勢いよく、短刀を振りかざして襲い掛かって来た男達八人は瞬間で動けなくなり、地に投げ出された。

 この状況でもう一度「石棘」を使えば、確実に屠れるだろう。どうせなら照準するポイントを胴体に設定して、長い棘にすれば良いのか……。

 鉤爪を付けたことで、出血が激しくなっている。放置したままでいたら確実に死ぬな。まあ、いいか。そこまで面倒見きれないというか、今は救助者の確保が優先だ。


 俺たちは壁を抜けてから、正面に立っているコンクリート製の巨大な塔に向かっている。


 それを囲むように作られている学校の校舎の様な建造物。その上階に「破気」の弾丸を使用してスナイプしてきている射手が点在している。……四人か。


 視界では捕らえ切れていない。死角から死角へ移動してるんだろうな。でも余りにも明確な悪意で狙ってきてる。そりゃ判るってば。


 スナイパーの脚部にも「石棘」を発生させる。


 うーん。距離が遠いのとちゃんと見えてないのが合わさって、こちらは仕留め切れて無い。移動中だったのかな。足に棘が生えてても、トリガーを引くことくらいは可能だろう。


 多分、このあとも散発的に撃ち込まれる事が予想される。注意しておかないとだな。


 まあでも、直接しかけてきた八人と、狙撃の四人を止めたことで、攻撃が休止した。……それ以外に何か……用意されていないのかな?


「罠とかないのかな?」


「大規模な罠は無いと思われます。彼らの多くはここで活動し、生活もしているのです。罠が頻繁に発動するような環境は生きにくいじゃないですか」


 松戸さんが答える。さすが、元悪の組織のボスの側近。お詳しい。そうですね。


 とはいえ。


 目の前の塔は先ほどの分厚い外壁、コンクリート壁と同じ見た目だ。多分、分厚い造りも一緒だろう。右端の方、ちょっと離れた所に金属製の分厚い入口も見えているけれど、そんなのは無視でいいだろう。


ボッ!


 大した音も無く。予備動作無しでいきなり、「大地操作」を発動させる。手かざしも面倒なので辞めておいた。


 塔の外壁が抉れた。


 やはり、分厚い。コンクリートの壁のイメージなんて、分厚くても十センチ程度だと思うんだけど、この塔は五十センチはある。

 まあ、余りに一気に穴を開けすぎて、塔の内側の何かを抉っちゃったら怖いからいいんだけどね。もしも壁に寄っかかって人がいたら、それ毎くり抜いちゃうからね。


 外壁に穴が空いた。その先は……なんていうか、事務室のような感じだろうか? 倉庫かな? とりあえず、牧野興産のビルと同じ様に、塔の壁に触れると電気の流れ、エネルギーの流れを感じる。


 うん。とりあえず、灯りはそのままで、その他は全部切っておこう。エレベーターとかは必要な時に起動すればいいよな。階段でもいいし。


 塔内部はコンクリート打ちっぱなしで装飾が無い無骨な造りだが、設置された照明が無駄に明るいので、視界が白い。


 人の気配は……それなりにいる……し、戦えそうな気配は……最上階近辺に数人固まって配置されている。目標はそこかな。


「よし、んじゃ行こうか」


 メイドズに目で合図する。彼女達には背後を押さえてもらうことにして、俺が戦闘で中に入る。確か……ここからだと階段は……と、さっき読み取った的確な配置図を利用して、最短距離を歩く。


 さっきのでちょっと判ったのだが、この塔の入口は、実は地下通用路を利用して、そこから一気にエレベーターで上がる様になっているらしい。なので、地下通路の出入り口の電気周りを遮断してしまえば、侵入することが難しい様だ。


 壁に穴開けるっていうのは想定外って感じ?




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