150:威圧
「20年前の真相は分かりました。でもそれと、能力者の呪縛……総領十二家とか七家とか、陰陽寮? の命令に抗えないという呪いが弱まっているのはどう関係があるんですか?」
「里が消滅したと同時に、音無家……いや、元々は
「呪縛の影響力は徐々に弱まっている」
「ああ。確実に。それは長年「懇願」で呪縛を上書きしてきた私が保証しよう」
うわ……。というか、20年前から一番現代に影響を与えている大事件の真相って自滅? バカの暴走ってこと?
「さあ、これが、多分。現在最も詳しい20年前の事件の真相だよ。なにせ、現存する唯一の現場立会人の証言だからね」
証拠らしい証拠、各種物証は無いんだろうなぁ。この口ぶりだと。
それにしても、倉橋さんはは年齢不詳だ……本人談で戦争経験者ってことは最低でも71歳。でも経験者ということは……。
「焼け山谷となった里には、警察、自衛隊、さらに陰陽寮の入念な調査が入った。が、そうなった原因は一切解明されなかった様だ……。しかし残念だな。折角「耳目」が居るんだ。当時のそちら側の状況を聞きたかったな。まあ、キチンと上書きが済んでから、聞かせてもらうとするか。あと、村野くん。女性に年齢は」
「や、いやだな。そんなこと考えてませんよ」
バレバレだ。
「それで? 君が知りたいのは……星詠みの
うお。
それもバレバレか。この直感力は気力をシンクロさせる能力が原因なのだろうか。
片矢さんがこれまで以上に反応している。動揺。「どうして?」といった感じだろうか? まあ、詳しいことは言えない状態だからねぇ。
「正直、私も知らないのだよ。多分、彼以外は判らないのではないかな」
そう言って見た片矢さんは、悔しそうな顔をしている。言えないよなー。かなり、ツラいみたいだし。俺が何をしようとしているのか……もの凄く不安な様だ。
「とはいえ。年の功って事で、心当たりが無いでも無い。篠瀬。牧野瀨。一ノ瀬。初野瀬。石尾瀬。……初野瀬か。まあ、分かりやすいと言えばそうだね。初野瀬は、埼玉の奥、奥秩父だったか? 確か。関東だと最大施設だったか。埼玉と群馬、長野が交わるエリア……陰陽寮は県境、境が曖昧な場所、権利が重複する場所に存在する事が多いんだよ。何かあったときに人目に付きにくいからね」
奥秩父……えっと。三県の境って判りやすいな。ありがとう、倉橋さん。さすが、年の功!
「うん、自分が言うのはいいんだ。でも他人に年齢のことをそういう風に思われると、やはり腹が立つね」
やばい。これ以上はもう、シャレにならない境界線か。県境だけに。……あ。三沢さんと鏑木さんが、マジデやめてくださいよ的な顔で焦り始めている。特に鏑木さんの動揺はひどい。そりゃそうか。倉橋さん、フットワーク軽いから忘れがちだけどスゲー偉い人だもんな。……いろいろごめん。すまん。
「村野様……それで……「耳目」の……身内をどうするおつもり……で?」
「くくく。三沢さん、君も大概意地悪だな。村野くんの心根は重々承知しているだろうに。早々に両手を挙げて下に就いた、先見性のある男なら判っているのだろう?」
うん、そう。三沢さんは自分は判ってても、周りに周知させるためにワザと俺の行動を確認してくれているのだ。倉橋さんの直感ほどじゃないが、彼の洞察力も大したモノだと思う。
「本気で判っていないのは「耳目」だけか。「屋守」も薄々勘づいているというか、聞いてるって所かな。喜び給えよ、「耳目」。村野くんは、君の心残りを無くしてくれるつもりらしいぞ?」
ビクッとし反応。
「倉橋さん……そんな言い方をしたら、片矢さんが「そう」思うのは当たり前ですよね? 趣味が悪いですよ?」
それまで一切入れていなかった力を……強く噛みしめてみる。下っ腹にグッとして「なんだよ!」と思うだけで、なんていうか、意気込みというか、圧力的な何かが周囲に撒き散らかされるのが判る。
グアン!
波の様に伝播する力。これが所謂……威圧ってヤツか。どうだ? 違うか?
「くくく……ここまでかい。これまでいろんな圧を受けてきたが……これほどとは……くく……ふふふふふふ! ああ、それはああ、そうだね。うん、三沢さんがここまで思い入れるのも判るなぁ~。しかも、これ、本気じゃ無いね? 今、とりあえず適当に撒き散らかしただけだね?」
倉橋さん……なんか、ちょっと酔ってるっぽい反応だ。くすくすと、マジデちょい怖い。
対して片矢さんは青い顔をしている。
というか、ああ、そうか。この威圧、本当は倉橋さんにだけ向ければいいのか……やべ、片矢さん以外のみんなもちょっと強張ってるというか、緊張してる。
それにしてもどうやるんだ? ピンポイント威圧って出来るのか? なんとなく、ピンポイント指圧を思い浮かんだけど。
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