147:内情ぐずぐず
「でも、牧野興業の連中は結構……拳銃持ってた様な」
撃たれたな。結構。
「それはよく知らないが……村野くんが能力者だとハッキリ判っていなかったのではないかな」
「多分、そうだと思います。というか、例え能力者だとしても、牧野興産にたった一人で殴り込みをかけるヤツがいるとは思わないでしょう……」
三沢さんがやれやれだぜという顔をする。解せぬ。
「というか、能力を持たない人間が頼る武器としては、未だにコスパが一番イイからね。拳銃は。それこそ敵が正体不明なら、もしも撃ち抜ければラッキーってレベルでも撃つだろう。それにしても。「屋守」がいてこの辺の説明をしてなかったのかい?」
「は、申し訳ありません。というか、その辺は既に実戦でご存じかと思っておりました……」
鏑木さん……さりげなく俺の常識が無い的なディスりを入れたね。
「まあ、我々にしてみれば知ってて当然だからね。この国にいると拳銃は常識の外の知識だ。あえて指摘したりしないか」
指を顎に持っていく仕草が絵になるなぁ。
「まあ、能力者に火器、特に拳銃弾が通用しないのは、あの件から20年間、変わらなかった。この国が他国の裏社会から支配を受けなかっただけでなく、大戦後、米国の完全な支配下とならなかった最大の要因だ。もしも、本格的に属国化して、日本人が本格的に反乱を起こしたら。この、拳銃弾の通用しないバケモノが米国本土に送り込まれたら……と。まあ、実際の所、能力者は日本に縛られている。全ての意味で。なのでそんなことは出来なかったのだがね」
そうなのか。確かに、大戦終結後、GHQの日本占領の不自然な終了は、近現代史でも謎になっていることが多い。
「だが」
片矢さんが微妙に反応。
「実はね。……能力者に銃器は通用しない……というのが覆され始めている。最近、諸外国の組織に脅かされていると伝えたね。その一番の理由は、我々を貫く拳銃弾が登場した……いや、我々を貫く拳銃弾を生み出す能力者が登場したからだ」
「あ、あの話……倉橋の能力者が数名やられたというのは、ほ、本当だったのですか?」
鏑木さんが驚愕の声を上げる。苦笑いといった感じで頷く倉橋さん。
片矢さんは知っていたのか、何も反応していない。というか……。
「やはり……か。あの「破気」の弾丸は……元陰陽寮所属の能力者なのだね」
倉橋さんは片矢さんの反応から、そう判断したようだ。
「そうではないかと思ったよ……。陰陽寮では気力という我々の根源ともいえる力を、無力化出来ないかと研究を続けていると噂されていたからね……しかし、そんな虎の子の能力者に抜けられるとは……あ。いや。もしや」
片矢さんがビクッとした。
「もしや、海外……いや、米国に日本を売ったか? 組織として余りにも懐が深そうだし、バックアップが分厚いと思っていたんだ」
片矢さんが下を向いた……掌は強く握り締められている。
「上が独断でイロイロと動いているって話は聞きましたね……。それこそ、自分は反対したのに、俺に対して仕掛けると判断した奴がいると」
「……それはよく語れたものだ……。どれだけの苦痛が彼を襲ったことか……つまり、それと同じ様に、陰陽寮の……まあ、長老会だな。そのうちの一人が独断で米国に日本を売ったということか」
「死ぬ寸前でしたからね……遺言のつもりだったのかな? こうして生き延びちゃいましたけど」
片矢さんがどことなく反応している。
「ん? ひょっとして騙されていたのか? 米国の力を陰陽寮に引き入れる……などと言って、「破気」の力を餌に近付いた長老や能力者たちが、そのまま向こうに亡命とか」
片矢さんの力が抜けた。これは、多分、正解ということなのだろう。なんか、大変だ。
「陰陽寮もかつての権威も力も無いという事だな。じり貧に追い込まれているからこそ、そのような甘言に踊らされて離反されるし、真の目を持つ者の意見すら疑うようになる」
それはアレだ、「耳目」の言う事に耳を貸さず、逆に片矢さんを消してしまおうとしたことを言っているのだろう。
「そうか……それで急遽、防衛庁、自衛隊と繋がったか……。それもこれも、米国の組織……いや、米国そのものと戦わざるを得ない状況になったからか」
あーもう。なんか、面倒なことになって来ている気がするなー。するな。
「銃弾が通用しないのは判りました。でも、鏑木さんは片矢さんの爆発物で傷付きましたよね? アレは? 爆弾と火器は別モノ?」
「ああ、厳密に言えば、爆発物、爆薬の威力自体では大した被害は受けない。だが、爆発により発生した衝撃破や爆風で吹き飛ばされる物によるダメージは減衰するとはいえ、受ける。その辺は個人の力の強さによって変化するから、どれくらいまで耐えられるとか細かい検証は出来ていないけれどね」
そもそもなんで拳銃弾は平気なんだろうか。というか、気力にそんな力があったとは……知らなかった。拳銃無いから検証しようがないんだよな。
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