146:能力者の特徴
倉橋さんが超絶急かすので、とりあえず、片矢さんには休んでてもらうことにして、若島邸に急いだ。
平日の日中なので屋敷には使用人の人達しか居なかった。が、倉橋さんが事前に連絡しておいてくれて、さらに側にいてくれたおかげで、一つも揉めること無く結界設置が完了した。
「……私個人としてはね、もっと村野くんに近付いて……いや、それこそ、三沢くんの様に君に仕えても問題無いと思っているんだ」
って問題発言。倉橋さんの乗ってきた黒塗りのリムジン……の様な改造車での爆弾発言だ。まあ、移動中の車、しかも変な追跡とかも受けていないし、話を聞かれている心配もないし……って事なんだろうけど。
多分、安全性で言えばうちの方が上だろうけどね。
「でもね、倉橋家と言えば現状、陰陽寮に相対する最大勢力の長なのだよね……20年前までは、蔵品の小判鮫でしかなかったのにね。ちっぽけではあるが、能力者の庇護者としてのプライドもあるからね。私は当主としてそれなりに力を持っているけれど、その辺は独断ではどうにも出来ないのだよね」
「……? 何が言いたいんです?」
回りくどいな。というか、芝居臭い。それにしてもこの人……結構な年齢っぽいことを言われてたけど……皺とか無いな……化粧テクがスゴイのかな……。
「当主としてではなく、一人の能力者として」
も、もの凄い目力だ。み、見つめられると正直怖い……。さらに芝居がかってる。
「村野くんとは戦いたくない。私は未来視でも何でも無いが、やられる未来しか見えないのだよ……何故だろうね? 君は……何者なんだい?」
うーん。どうだろう。うーん。
「少なくとも「異形」ではないですね」
その答えにビックリ顔の倉橋さん。
「それはそうだろう。私は
うおっ! これまで正体不明すぎた「異形」と直接関係したことのある人キター。
「どう違うんです? というか、何なんです? 「異形」って。能力者の人達はそれが脅威だとは言うけれど、最後の接触、交戦は20年前の激しい戦い……でしたっけ? それ以来無いんですよね?」
「ああ……そうだな……これを己の言葉で語れる者もそうそういないのか。判った。まあ、もう、君の家に着くな。寄ってもいいかい? 多分、片矢も知っているハズだ。陰陽寮側の情報は喋れないだろうが、あの件の客観的な補足くらいは出来るだろう」
家に戻ると三沢さんと鏑木さんがいた。
「……「耳目」ですよ? いくら無害だと言われても、メイド二人しか居ない家に放置するなんて出来るわけがないですよ」
「と、鏑木が言い張る以上、それを無碍に出来ない上司ですよ」
そりゃそうか。
「丁度良かった。村野くんに「異形」について私が知っていることを話そうと思ってね。君らも知っていて損は無いのでは?」
「そ、それは……」
「興味深いです。私の父や母、そして一族の者達は……尽く20年前に討死しました。ですが、当時、どういう事が起こり、どういう事情で収束したのか詳細は一切知らされていないままです」
鏑木さんがもの凄く踏み込んで来た。まあでも、そうか。話を聞くにかなり派手な闘争があったにも関わらず、一般人が知らないどころか、構成員であった能力者達ですら訳が判ってないからなぁ。
この辺、呪縛によって縛られている能力者、いや、
「そもそも……村野くんは「
いや? 正直、知らんよ。そもそも巻き込まれた流れでイロイロ出てきちゃっただけだし。
「正直、未だに良く判ってませんね。つい先日まで、
「ああ。そうだね。正直、最近やっとだね。世間一般に広まりつつある「超能力者事件」ってヤツだ。それのほぼ全てに能力者が関係していると思っていいだろう」
あまり……ネットでその辺のサイトや話題に触れていなかったから知らなかったが、三沢さんに聞いてから注意して見た。
確かに、嘘か誠か判らないレベルも含めると、その手の都市伝説事件が最近頻繁に目撃される様になってきている。
「発火する人間」「斬り刻まれた死体」「規則性のある自殺」なんていう殺人事件から、「分裂する双子」「顔の見えない男」「高速道路を走る影」……なんていう、なんていうか、ちょっとだけ覚えがあるような無いような事例が盛り沢山だ。
「さて。我々能力者全員に共通する……最大の特徴は何だと思う? 多分、村野くんは知らないだろうから、教えておこう」
「精神操作された最底辺の奴隷と変わらない環境で戦闘を強いられてますからね……命知らず……ですか?」
「それもあるね。戦争中も「
「あります……ね」
「どうだった?」
「え? 避けました……けど。多分」
「普通そうだな……。だが、キミの気力であれば、もしも当たっていても、跳ね返せていたと思うよ」
? え? どういう事?
「我々、能力者には銃弾による攻撃は効果的では無い。それなりに気力を使いこなしている者であれば、例え至近距離で発砲されたとしても、肉に食い込む前に止まる。かすり傷一つ負うことは無いのだよ」
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