136:牽制
さっきダンジョンに行った時に、副職を魔術士に変更してきている。
現状、俺は拳闘士と魔術士がレベル30以上になっているので、その二つはノーリスクで切替可能なのだ。
上げておいて良かった。
ああ、これまで、拳闘士で、スキルに頼って魔術を使用してきたのがどれだけ無茶だったかが良く判る。魔術を使用する職ではないのに、魔術を使用しようと考えること自体がおかしいのだ。
レベルアップしていた魔術士の各種スキルによって、「魔術を使おう」とする俺の感覚が続々と補佐されていく。これは素敵だ。ありがたさが良く判る。
まあ、当然逆に……副職が拳闘士で無くなったせいで、気力……というのかまだハッキリしないけど、誰かが接近してきたときの感覚が大きく異なっている。
今、うちには松戸、森下の二人しか他人は存在しないのだけど、二人の存在、気の様なものもうっすらとしか感じられなくなっている。
つまり、ハッキリ言ってとんでもなく心細い。
この辺は痛し痒しってことで、美味いこと使いこなしていくしか無いんだろうなと思っている。
あ。でもひとつ確認出来たことがある。拳闘士が気力に関してのスキルや知識、感覚の成長が期待出来る副職だっていうのは確定した。
天の声さんは気力を直接操作するスキルなんかは無かった……って言っていたけど、このままレベルを上げて、さらに上の、上級職だったかな? に転職すれば、ある程度気力をいじることが出来る様になる気がする。
この辺、転職によって、失ってみて大きく実感出来た部分だ。
ってまあいい。うん、それはまた、ダンジョンに籠もって検証というか、確認していけばいいだろう。
今は……。
【気配】を再使用して、確認する。拳闘士が関係しているのは、多分、近接戦闘時の諸々の強化だ。比較的遠距離に位置する悪意に関しては、多少曖昧かな? 程度しか異和感は感じない。
(それにしても……多いな……勢力的に一つや二つじゃ無いだろ。一気に広まった感じだろうか? 簡易結界のせいで近づけないっていうのは広まってるからなのか?」
【魔術弐】で追加されたのは
地:石棘
水:癒水
火:火弾
風:風盾
の四つだ。
足を狙おうと思ったら、やはり、「石棘」だろう。これ、最初は撒き菱みたいかなと思ったんだけど、棘……長かった。
わかりやすく言うと、長いウニの棘だ。アレが狙った場所に飛び出る。
地属性の魔術だけあって、飛び出させる場所は石、砂等の大地から……と思ったのだが、実は「砂」等の大地系素材であれば全てが発射口になる。
何それ便利。これはイロイロと試したが、地属性であればなんでもいけるようだ。
それこそ、日本の街であれば、アスファルトで道が作られている。アスファルトは石油なので「石」は付いてるけど違うんじゃ? と思ったが、アレ、90%以上は骨材と呼ばれている、砂利や小さい石だ。つまり、道路であれば問題無く棘が出る。コンクリートは当然出る。さらに、鉄筋などの金属からもいけるので、建造物内でもいける。
つまり、よほどのことがない限り……あらゆる場所から棘を生やす事が可能なのだ。
何て万能な……。
残酷だよなぁ。でもなぁ。ここで一斉に撃退しておかないと後で面倒だしなぁ。正直、牧野興産の時の様に、殴りかかってきてくれれば仕返しで消し去っちゃうんだけどなぁ。
まあ、うん。とりあえず、呪いってことにしてもらおうかな? これまで誰にも見せたことがない術なんだし。
次の日、うちの周辺で二十八名の男女が何者かに足を貫かれるという「謎の事件」が発生した。この事件が謎としてマスコミに報道されたのは、被害者が全て入院先の病院から消え去ったからだ。
全員が同じ様な尖った棒の様なモノで太ももから膝下を複数回貫かれており、激しい出血で倒れていたのを、通行人が通報したそうだ。
実は悪意はもう少し多かった。報道人数に含まれていないのは、多分、部屋の中からこちらを伺っていたヤツラだ。
部屋の中、下が畳でも壁はほとんどが土壁だ。全体がフローリング等の木で覆われている部屋だとしてもその下はコンクリートだったりする。
問題無い。
一気に排除したことで自宅の周りは非常に綺麗になった。
多分、これで、各陣容入り乱れた斥候の下っ端は一斉に排除できた。が、このまま放置しておけば、再度付きまとわれ始めるのは確定事項だ。
そう。
排除できたのは斥候の下っ端なのだ。悪意を隠し切れていない者達だけだ。俺の【気配】で探知できる気配がどれくらいの性能なのかちゃんと判定できていないが、「耳目」レベルの相手だと確実に見逃している。
今回、三沢さんと相談してから攻撃したのだが、この後、敵がどういう手を打ってくるは判らない。
三沢さんにしては俺のずさんな提案をよく了承した気もしないでもないが、受身のまま、やられるがままでいると、物量で押し潰される可能性も高い。
とりあえず、これで。相手がどう出るか。だ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます