129:別件?
さっきまでの会話を思いだすとイロイロと面倒くさいので、とにかくひたすら食べることに専念し、たわいも無い会話をした。
まあ、質問されてそれに答えていただけだけど。
「それじゃ今も二人は、若島さんの御屋敷で暮らしてるんだ」
「そうなんです。護衛の都合でその方が楽だからって。桐子ちゃんの御祖父様にも頼まれてしまって」
「うちは過保護なんですよ〜私、ばあちゃんと両親が亡くなってるので、身内がじいちゃんだけなんですけど。物凄い心配症で」
いやいや、そりゃ心配するでしょ。お祖父ちゃん的に。過保護になって当たり前というか。一人っ子で跡取りで孫だもの。
「ココもそうですけど、メイドさんに上げ膳据え膳されるのに慣れちゃうとヤバい気がして」
「そうなんですよね〜折角独り暮らしに慣れてきてたのに〜」
「美南先輩のは甘々独り暮らしですからね。実家の持ちマンションだから、あの広さで家賃無しって」
「固定資産税は払ってるし~高いのに〜」
「贅沢な悩みですよ、それ」
つまり、若島さん=御屋敷の金持ち、メイドさん有り。最上さん=持ちマンションの部屋住み。松山さん=普通に2DKの賃貸住み。御両親は両方共、公務員で微々たるものだが仕送りもしているらしい。
それにしても、今になって気付いたが、彼女達の護衛はかなり豪華だ。多分、普通の護衛が五人。能力者が四人、彼女達に付いている。
どうにも敵意のない存在の気配察知は苦手だ。
しかも、この護衛の能力者はかなりの使い手だ。特に一人、強い人が居る。牧野文雄よりは気力の強さはかなり落ちるが、能力者の強さは気力の強さとイコールじゃないからね。多分。いくら距離的にかなり離れてるとはいえ……これに気付けていなかったのか、と、反省する。
まあハッキリ言えるのは、少なくとも全員、陰陽寮の下っ端よりは強い。
あのまま、何もせずにいたら。簡易結界に阻まれた下っ端達はこの護衛に簡単に始末されてただろう。
それだけの強者を護衛に回す危険があると判断したんだろうな。
食後のお茶をして、皿洗いをみんなでして……彼女達は帰っていった。どこか、メイド二人と話をしたそうだったけど、まあ、それじゃあ、またね……と半ば強引に帰した。
当然、護衛達もついて行った。
さて。どうにもね。さっさと対処しないと。
まず、しなきゃいけないのは、味方の住居エリアへの簡易結界設置だろうと判断した。いくら師匠や三沢さんが強くても、能力者集団に襲われればかなりキツイハズだ。
それこそ、人質とか取られる可能性も高い。
なので、早速、DPで物を交換すると、時間的に遅いなと思いながらも道場へ向かった。事前に連絡しておいたので、師匠立ち会いの元、駐車場を含めて敷地を覆う様に設置する。
挨拶も早々に、その足で三沢さんの会社、星沢警備会社の工場みたいな社屋に向かう。此方も連絡しておいたからか、三沢さんが出迎えてくれて、立ち会いの元、あっという間に設置が完了した。
「これが結界発生装置ですか……小さいですね」
一見すると……ちょっとぶ厚い、大きめの記念硬貨みたいな感じだ。ひねって開けるとスペースがあって、そこに魔石を入れる様になっている。今はオークの魔石が入ってるが、これが透明になる前に交換しないとらしい。
「名前が簡易結界ですからね。本格的なのはもう少し大きくなるみたいですよ?」
「そうですか……しかしこんな小さなので能力者すら弾き返すなんて……信じられませんね」
「ですね。あ。そういえば、彼女達の護衛、精鋭を配備してもらったようで。ありがとうございます」
結界と能力者で思い出した。
「あ、ファーベルの三人娘ですね。いえいえ、なんか、若島さんのお祖父さんがすごく協力的で。
護衛しやすい体制を作ってくださって」
「能力者は、鏑木さんの部下の人ですか? かなり強めな人が一人いましたけど」
「え?」
三沢さんの顔色が変わった。
「うちが付けている護衛は……ヤガンの部下の精鋭五人です。能力者はいません」
「え?」
今度はこっちがポカンだ。
「うちの会社で能力者はヤモリ部隊、鏑木の部下の一部だけです。確か全部で四人かな? 全員情報収集担当で、戦闘能力は、気力を使いこなせていない自分よりも下だったかと」
むむむ。解せぬ。なら、あの、敵意のない能力者達は……。明らかに、三人娘を護るように去っていった。どう見ても敵ではない。
念のため、松山さんにメッセージを送る。即「大丈夫ですーありがとうございますー」と、返答が入る。いや、これが本人だとどうして判る?
少々強引だが、TV電話に切り替える。画面には松山さんを中心に二人。その背景にかなり豪華な部屋がちらちら見えている。なぜいきなり豪華かと言えば。だって……ベッド……天蓋付いてない?
「三沢さんと警備態勢を確認していたら、ちょっと心配になったもので。顔を見れて安心しました」
「こちらこそーありがとうございますー」
と、三沢さんと一緒にいるのを表示させる。
「あ。そういえば」
若島さんが、ちょっと貸してくださいと、松山さんのスマホを手にした。そして、二人とちょっと離れた……様だ。
「じいちゃんが三沢さんとお話したいと言ってました。さっき」
「あ、了解しました。では、若島様に直接電話させていただきます」
まあ、そうか。そっちか。何か……知ってるよね。絶対。電話の向こうはまだ、ワイワイしていたが、とりあえず、安否確認なのでと強引に切断した。
そして、三沢さんが自分のスマホから、電話をかける。若島さんのお祖父さんだろう。
「お疲れさまです。はい、桐子様から、ええ。そうですか。……了解しました。少々こちらでも打ち合わせの上、返信いたします、はい、ええ」
「できれば、村野様も一緒に会えないか……とのことです。場所はここで、と」
「三沢さん、いつなら空いてます?」
「明日ならいつでも。優先できます」
「では、それで。自分も合わせます」
三沢さんが若島さんのお祖父さんに返答の電話をかけ、明日のアポイントが確定した。
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