122:メモメモ(敵一覧

 取りあえず、鏑木さんや師匠の言葉をスマホで文字にしてメモっておく。同時にボイレコで録音しておこう。契約前段階打ち合わせ体制だ。


■陰陽寮→古からの盟約により、能力者を統べる権限を持つ、宮内庁の組織。元々は偵察隠密が中心で、直接戦力は所有していなかったが、近年は直接行動も多くなっている。牧野興産の件はその規模から、天敵である「呪」の仕業と判断されており、今後も疑わしきは消すの方針で、此方に襲いかかってくる予定。


「というか、俺がその「呪」だと思われてる? ってこと?」


「ええ。正直、あの規模の力を発動出来るのは特級以上の「呪」位しか想定出来ません。私も話を聞くまでそれ以外思い付きませんでしたし」


 そうなのか……。


「その、なんだっけ? 海の底からきたヤツに乗っ取られると、普通の人間でもあれ位出来る?」


「個体差がありますが、あのレベルの力を振るえば特級認定間違い無しです。即決していないのはこれまでと状況が違いすぎるからですね。まあ、見当違いなので仕方ありませんが」


「そういえば牧野興産とか、牧野文雄は陰陽寮ヤツらに敵対してなかったの?」


「しておりましたよ? バチバチに。それこそ、牧野は常に狙われてましたし。牧野興産はまとめて一級呪相当という指定もされておりました。まあ、牧野の方も黙っているわけが無く、撃退だけでなく、様々な手で攻撃を仕掛け始めていましたし」


「……というかさ……日本を守護してきた……それこそ、気力で精神を縛ってまで戦ってきた組織なのに……牧野興産、牧野文雄、一会社、一個人を潰せてなかったの?」


 鏑木さんが「ああ……」と納得した顔をした。


「ええ、そう思うのも不思議ではないですね……申し訳ありません。自分たちは当たり前のことでも、村野様や社長にとっては理解できない事が多いかも知れませんね……」


 いや、多分、特に俺が知らないだけだろうけど。


「能力者は……名前がありませんでした。先ほどの……襲い掛かって来たのは陰陽寮の「耳目」の片矢……という陰陽寮所属の名の通った能力者ですが、20年前の件以前はただの「耳目」と呼ばれていました。片矢というのは後付けされた家の名になります。まあ、後付の姓名はともかく……こちらの業界で通り名で呼ばれていた化者カノモノ……あ、いえ、能力者は大概が一騎当千の実力者です」


「牧野文雄の通り名は?」


「ヤツは「傀儡師」と……」


 ああ、そうか。そりゃそうか。うん。納得。


「とはいえ、実力者として名が通っていても、実際の力比べがなされていたわけではありません。彼らの技は全て「必殺の技」。試しなど存在しなかったですし……絶対の支配がある以上、身内での格差など確認する必要がなかったからです」


「そうか。能力者……まあ、昔の呼び名でその化者カノモノ同士の戦闘ってここ最近ってこと?」


「はい。なので……現状でもその強さの評価もキチンとなされていません。そのため最近の陰陽寮はなりふり構わずになっているようで」


「一向に隠せないから?」


「はい。能力者の存在は徐々にですが日の目を見始めています。動画配信などで超能力者を名乗る者が多々出始めていますし」


「それって狙われるんじゃ無いの?」


「当然、身元は隠されています。が。隠せるものでもないんですが……陰陽寮の方で押さえ切れていません。純粋に手が足りないのです」


 そうか。一度壊滅状態まで追い込まれたっていうのはそういう文字通りなんだな。根本的に人手不足ってヤツか。


「なので、牧野文雄も多数で攻め寄せて討伐……という手が取れず、戦力の小出しになり、拮抗状態となっていたようです」

 

 三沢さんがなんか悪い顔でこちらに微笑んだ。 


「さて、そんな牧野文雄、及び牧野興産がたった一晩にして壊滅状態となりました。陰陽寮と総領六家はどう思うでしょう?」


「まあ、そりゃ……最近登場してなかったその脅威の「海の底の」に操られてる人認定するのも仕方ないか」


「仕方ないですね」


・総領七家→陰陽寮の攻撃部隊。能力者を使っている。元は十二家あったが、20年前の件で本拠地ごと消失。現在では七家が残るのみとなっている。


・総領六家→残ったのは七家だが、実際に陰陽寮に従っているのは六家となっている。従っていない倉橋家は元々能力者側に立つ人権派で、既に陰陽寮の支配を逃れている。


・十二家→×の付いているのが消失した家。


×音無家 旧総領

×唐貼家 

×猪戸家

×里禅寺家

光埜みつの

鴻巣家

奉宗院ほうそういん

椎堂しどう

不動家

草薙家 


×蔵品家 旧副総領。化者カノモノ派筆頭

倉橋家 現存する唯一の化者派


 蔵品、倉橋の二家はかなり昔から能力者の側に立ち、彼らの人権を求めてきたそうだ。残っていた倉橋家は崩壊後、陰陽寮の支配から抜け出し、逃亡した能力者(野化者、ノケモノと呼ばれるらしい)の保護を行っている。20年前にノケモノとなった者は多く、未だに陰陽寮の追っ手から隠れ逃げている。


「倉橋家が生き残っているのも牧野興産と同じ様な理由?」


「はい。そうです。さらに以前から倉橋家は能力者を匿っていましたからね。未だに忠誠を誓う能力者が多いのです」



■海外マフィア→過去に日本に浸透しようとして失敗してきた最大の要因、謎の能力者集団の弱体化を「最近」感知してちょっかいを掛けてきている。一部、能力者が手を結んだという最新情報もあり。


■ノケモノ→牧野文雄を代表とする元総領十二家所属の能力者たち。何らかの手段で家の支配、更に陰陽寮の支配も断ち切っている。




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