118:確認?

「シロ、簡易結界って魔物しか防げないの?」


「結界の術と同じなのよぅ。術者や起動した人の設定次第なのよぅ」


 んーと。つまり術を使う時に魔物をイメージするんじゃなくて、悪意や敵意を感じる人間を想定すれば良いということかな。


 そりゃ高性能というか、判りやすい。


 簡易結界を配置して、不意の襲撃などからこの家を護ることにする。


 当然、俺のスキルの様な融通は効かないので、結界がお隣さんの敷地まで伸びてしまうが、まあ、ホンの少しなので許してもらおう。


 これで安心は……安心なのかな。


 とりあえず、このままダンジョンで籠もってしまうと、色々なことがイロイロと忘却の彼方に流されていってしまうので、早々に止めておいた。


 自宅に戻り、休むことにした。


 いざという時の保険、拳闘士レベル30は達成したしな。

 道場で稽古を付けてもらうことで経験値が入って来るから、なるべく通おうと思っている。その際、あまり急激に強くなってしまうと、明確におかしいというか、師匠辺りには気付かれてしまう気がする。


「御迷惑をおかけしました。すっかり癒えた様です。日常業務、家事、掃除、警護のお役目に就かせていただきます」


 あれから一週間くらいか。グリーンスムージーの効果は凄まじく、松戸、森下のメイドペアは二人共体調が戻ったようだ。


 元気になったのはいいんだけど、こいつら買い物とか行こうとするからなぁ。メイド服を着た女性が、自宅を出入りするのは目撃されるのは避けたい。できる限り避けたい。


 そもそも、身分は偽造されたモノだし、闇社会ではそれなりに知られた顔だったみたいだし、どう考えてもマズいでしょうよ……。


 ということで、彼女達の体調が戻るまで行くのを保留していた道場へ行くことにした。ここなら体力のリハビリになるし、大自然の只中なので精神的にも癒やされる。森林浴森林浴。


「御主人様……何名か。囲んでいる様です」


「ああ、やっぱり? 囲まれてるよね……目的は俺たち? かな?」


 車が道場前の駐車場に停まった途端に気配が近付いて来ている。


「おうおう。うちの建物は壊すなよ?」


 多分、気配に気付いた師匠が門前に現れた。


「それにしても……うちに仕掛けてくるにゃぁ拙ねぇな」


 確かに。師匠の後ろに……多分、ここの上級者、師範、師範代がさりげなく集まってきている。側面からも……裏口からまわったのか。


「何か……手があるんじゃないですか?」


「ああ、かもしらんな。で。どうする?」


「ここは我々が。御主人様に復調具合をお見せしたいですし」


「んー汚れない?」


「大丈夫かと。ありがとうございます」


 それがOKの返事だと判断したのか、二人が前に出た。


「対象は……5……。撃って出ます」


 二人が弾けるように移動を開始した。


 襲撃者もこちらに向かっているので、あっという間に距離が縮まる。


ビキゥッ


 敵が撃ち落とされた。襲いかかってきたところを、松戸さんの足と、森下さんの避けからの手を組んだ状態で打ち下ろしたダブルスレッジハンマーが迎撃した様だ。


 って、森下さんの今のあれ、指を痛めちゃうんじゃ……って思ったけど、当たってたのは腕部分か。


 ということで、まずは二人。


ドガッ!


 さらに、松戸さんの回し蹴りが決まった。対象が木に叩きつけられる。


 横たわっている敵は……ダーク系のツナギ……いや、軍隊の戦闘服か? これ。ってことは敵はそっち関係……いや、まあ、今どきこんなのネットで普通に買えるか。


「残り……2」


 目の前で三人が、簡単にやられたというのに、残りの二人が近付いてくる。うーん。これはどういう意味があるんだろうな。誘拐とか殺害目的とかそういうんじゃないよな。


ガッ!


 またも、松戸さんの蹴りと森下さんの掌底で不審者が仕留められた。


 瞬殺だ。正直、この道場に対してどうにかしようと思える様な実力ではないと思う。


「師匠御迷惑をおかけします。これ……どう処理しましょう」


「多分なぁ……こいつら……普通に突き出しても身元不明で行方不明でいつの間にか消息不明になるヤツラだよなぁ」


 師匠、ポリポリと頭を掻くのが似合っている。


「矢畑。御前んとこで処理できるか?」


「はい、了解しました。調べられるところまでは調べますね」


「師範代の矢畑だ。地元の警察関係に顔が利くんでな。任せていいか」


「はい、お願いします」


 矢畑さんがどこかへ電話をかけ始めた。既に何人かが襲撃者を縛り上げている。


「何が……目的じゃろうな」


 というか、もしかして……二人の正体の確認か? つまり、迂闊に対処させちゃダメだったってことなのかな? 


 さらに……俺の能力の確認? か。


「確認……かのう」


「ええ。自分もそんな気が」


「なら、うちのヤツラにやらせりゃよかったな。嬢ちゃんたちをお披露目するのは勿体ない」


 面倒ごと……だろうな。絶対。


 と話していたら、もう一台。車が停まった。


「村野様……これは……」


 お。うちのトラブルシューターの御到着だ。何か詳細が分かるかな?

 


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る