105:行き詰まったのでこちらへ

 と、格闘でタイマン修行しないとな……と考えつつも。


 ……まず優先すべきはレベル上げで正解だろう。


 その天職の基本となるスキルを一気に入手する。それをスキル上げで、繰り返し鍛錬を行って、それを使いこなしていく。

 死なないということを前提にすれば間違っていないハズだ。


 ということで、レベル上げを再開する。


 ただ、幾ら範囲狩りで稼ぎやすいオーク相手とはいえ、今のレベル以上に上げていくにはかなり厳しい。経験値的に頭打ちになるのは間違いない。


 そうなると当然、オーク以上の強敵でモンスターハウスを構築したいのだが……。


 問題は、これ以上の強さの敵の範囲狩りに適した攻撃手段が無いって事だ。

 

 こちらの武器は、戦闘中には使えない「風刃」五連発。のみ、だ。頭痛と気持ち悪さの強烈さから考えて、これ以上は無理くさい。当然、「拳闘士」で術関連が強化されるとも思えない。

 

 地道に、複雑なダンジョンを構築して、強力な単体ボスを倒していく路線に変更するべきだろうか? うーん。


 範囲狩りの魅力がな〜強烈すぎてな〜。


 そう考えると、魔術士は強かったって事なのかな。いや、俺の適性が魔術士系で向いていたということだろうか? 一般的な魔術士っていう比較対象がいないから判らないか。

 何よりも、この事務所に帰ってくれば体力&魔力が一瞬で全快するチートシステムと相性が良いのか。ああ、そうか。それだ。


「シロ、魔力の回復って普通はどうするの?」


「寝るのよぅ」


「体力の回復は?」


「癒術を使ったり、ポーション飲んで寝るのよぅ」


「一晩寝れば、魔力は全回復するの?」


「多い人は何回も寝るのよぅ」


 ああ、やはりそうなのか。そういえば。ちょっと気になってたんだ。


「シロ、現実世界ってさ、魔力薄くない? 魔術の性能がちょっと落ちる気がするんだけど」


「……そうなのよぅ。向こうの世界は空間魔素が薄いのよぅ」


 空間魔素。キタコレ。新ワード。


「魔素が少ないので、魔力の行使や回復に時間がかかるのか」


「そうなのよぅ」


 お。さりげなく言質いただきました。


 そう。現実世界では、こちらより魔術が使いにくかったのだ。

 試してなかったけど、社屋を燃やした後、あっちで睡眠をとっても魔力はほとんど回復しなかったハズだ。


 原因はそんな所にあったとは。


 向こうの不思議力の主流が魔術でなく、超能力=気力なのはそれが理由なのかな。


 まあ、取り合えず。


 こうなったら、時間という物量で押しつぶす! そう! 繰り返しだっ! 同じ事を延々と繰り返してやる。


 心折れるまで、オークのモンスターハウス、範囲狩りを繰り返してやる。


 ……。


 そう思って繰り返してみたんですけど。折れた。折れました。


名前 村野久伸むらの ひさのぶ


天職 拳闘士

階位 27

体力 75 魔力 85


天職スキル:【先先】【拳闘壱】【蹴術】【拳闘弐】


=隠蔽=========

天職 迷宮創造主ダンジョンマスター

階位 26

体力 25 魔力 103 


天職スキル:【迷宮】【結界】【鑑定】【倉庫】【収納】


習得スキル:

【気配】【剣術】【盾術】【受流】【反撃】【隠形】【加速】【棒術】【魔術】

=隠蔽=========


 頑張ったんですよ? 


 拳闘士、レベル27までは何とかなった。けど。そこから一向に上がらない。停滞した時点から既にダンジョンタイマーは四カ月を超えている。


 迷宮創造主に至っては、未だレベル26。1しか上がっていない……。スキルなどの追加も一切無し。


 次こそは、次こそはでここまで来たが。

 

 再度転職する為にもレベル30にはしておきたいんだけどなぁ。


 さすがに……今回も時間の限界だと判断した。記憶がね。薄れてしまってね。

 前回と同じ様に直前まで何をしていたかの記憶を回復する。


 とは言っても。


 グリーンスムージー祭の事くらいしかメモってなかった。よく考えなくてもアレはやばいからなぁ。


 粉砕骨折の瞬時治療。重傷火傷痕の引き攣った皮膚の治療。この二つだけなら……まあ、うん。まだ限定的……と言えなく……かなり厳しいが、言えなくもない。

 でもなぁ。不治の病はなぁ……。奇跡だもんな。現代西洋医学の限界を超えちゃってる。実際に現時点ではまだ、完治したわけでは無いけれど。三沢さん達の判断が少々早すぎるのだ。

 実際、定期的に飲ませる予定だけど、半年くらい経過してみたら、薬的な効果が薄れて、再発してしまう可能性だってあるからなぁ。


 こちらに戻ってきて、そんな内容の念押しメッセージを送る。即返事が来た。


三沢:あの場は浮かれてしまいましたが……実は、自分もそう思い、ヤガンには何度か言い聞かせました。結果、アイちゃんも共に納得してくれて、慎重に行動することを約束してくれました。自分を含めて、奇跡を目の当たりにして、浮かれすぎた様です。


 おお。さすが……三沢さんは武闘派にも関わらず、こういう細かい心遣いというか、冷静な判断が可能なのが凄いな。さすが社長。


 あれ? そういえば……ヤガンさんって超一流の傭兵とか、通り名もあったな。確か。そんな人が社員て、三沢さんとこの会社って、世界有数のPMC? まあ、そりゃあの実力だもの、日本有数だとは思ってたけど。

 そもそも、日本を本拠にしてたら、そこまでとは思わないよな。荒事とかは苦手っぽいもん。


 等と考えながら、現実世界で就寝。




 

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