104:魔術苦手です
スキル【魔術】を習得しました。
お。
そんなことを考えながら帰還すると、頭の中に響くメッセージ。
ああ……そうか。うん。これで……さっきまでよりも……短時間で、しかも苦痛も伴わず魔術を行使できる様になったのか。
居室に移動して、実際に使ってみる。
一番気になっていた回復水だ。これは元々大量には生成出来ない。一回でコップ一杯程度だろうか。
「回復水」……グラスを目の前に作ろうと念じて、魔力を意識する。
あ。お、おう……さっきまで感じていた苦痛が薄れている。というか、脳を焼き尽くすようなあの独特の痛みを感じない。これは助かる。
だが。
魔術が完成するまでの時間は……スキルが無い頃と大して変わらない。今回は「回復水」だけど、使ってみた感覚からすると、他の呪文も同じ様なモノだろう。
痛みは無いが、この魔術詠唱時間というか、魔術生成時間は戦闘では致命傷だ。
生活魔術とでも言うべき、「着火」や「水生成」「回復水」は……時間が無限にあるとも言える俺に取っては何の問題も無い。
ああ、当然だけど、魔術士を転職してから、魔力消費も大きいと思う。これまでの三倍とは言わないが、二倍弱……くらい消費している。
ということで、「拳闘士」に転職して一番最初に発生した問題は解決した……と言うことにしておこう。
何か致命的な不具合があれば早々に「拳闘士」をレベル30以上にして「魔術士」に戻してしまえばいいのだ。
魔術苦手ということで通していこう。誰にも聞かれないけど。
あ。でも。そうか……。
レベル上げということであれば、モンスターハウスに対して、これまで通り、「火球」や「風刃」をぶち込んで範囲狩りしてしまえばいいんじゃん。
敵と対面して戦った場合に魔術を使用するのが難しいというだけであって、事前に準備して、先手で仕掛ける。
遠距離からの魔術による、問答無用の一撃は「準備時間」さえ確保出来れば、そこまで手間では無い……ハズだ。
「まあ、とにかくやってみればいいか。シロ。転移」
「はいなのよぅ」
今回は当然、モンスターハウス階層だ。大広間にはオークがウロウロしている。
入口部分から覗く。これまでは一瞬で大量の「火球」を生成してそれを投げ込むだけの簡単なお仕事だった。
が。現実問題、「拳闘士」の今では「火球」は重い。
ある程度これまでと同じ様にオークを仕留めて行くには「風刃」しか選択肢が無い。
「風刃」を準備する。ひとつ……ふたつ……みっつ……五つを用意したその後。六つ目を生成しようと思った瞬間に、あの、脳を焼く様な痛みが復活した。
ギギギギギ……
くっ。やばい。維持する……のは、……ふか、不可能だ。
なので、とにかくヤバい感じだったので、既に用意されていた「風刃」を解き放つ。
これまでに比べればショボイ……と思っていたのだが、大広間で発動した風の刃は、次々とオークの肢体を刈り取っていく。
五つの「風刃」は、一瞬で広間を蹂躙し、オークを屠った。というか、多分、この広さだと四つでもいけるんじゃないかと思う。
ふう……良かった。どうにかなって。
よく考えたら、今の魔術で仕留められなかった場合、レベル1拳闘士がオークと戦わないといけなかった……ってことだよな。
……それ、死ぬじゃん。まあ、転移で戻ればいいとはいえ。ヤバかったじゃん。彼我の戦力がちゃんと把握出来てないって怖いなぁ。
今後も……転職直後は気をつけないとだな。ある程度精神的に余裕を持って対応出来る時に焦らずに進めて行かないとだ。
「シロ、転移」
「あいなのよぅ」
----レベルアップ----
「拳闘士がレベルアップしたのよぅ」
スキル【蹴術壱】【拳闘弐】を習得しました。
良かった……とにかくレベルが上がれば死ににくくなる。怖いのは一撃死だからね。レベル差補正も効くはずだ。
名前
天職 拳闘士
階位 21
体力 65 魔力 83
天職スキル:【先先】【拳闘壱】【蹴術】【拳闘弐】
=隠蔽=========
天職
階位 25
体力 25 魔力 100
天職スキル:【迷宮】【結界】【鑑定】【倉庫】【収納】
習得スキル:
【気配】【剣術】【盾術】【受流】【反撃】【隠形】【加速】【棒術】【魔術】
=隠蔽=========
お、おう……一気に……レベル21て……。さすが前衛系の天職。体力の数値が格段に上昇している。
現在の俺の体力は拳闘士で65。それに
増えた。ありがたい。って意識した直後になんとなくムキっと身体が震えた。
まあでも。
範囲上げの弱点は、レベルは上がってもスキルが一切追いついていない点だ。
拳闘士的な行動を一切していない。当然、それ的な「何か」は何一つ身に付いてない。
気力について何かヒントを得る為にこの天職に転職したんだから、ちゃんと敵と対面して格闘して倒さないと……なんだろうな。
そうなると……オーク以上の敵か。後で探してみよう。
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