099:他人の気持ちが分からない(昔のこと過ぎて

 あれ? そういえば……【魔術】は呪文が覚えられるのに、【剣術】や【棒術】【拳闘】は無いんだな。技とか覚えてもおかしくないのに。なんでだろうか。そういうのは無いのかな……。まあ良いか。


「三人娘もアレだけトラブルに巻き込まれればもう近付いてこないだろう。残るは「核花」……か。あれは】絶対に利権的に揉める。麻薬だもの」


 利権……厄介だよな。海外の裏の組織が手を出してきそうとか言ってたし。


 まあ……とりあえず、今回はよく寝てから向こう側に戻ろう。リハビリ完了したってことで満足しよう。


 なので向こうでよーく寝てから、戻ってきた。当然、まだ夜中だ。


 正直、今日会社でどんなことをしてきたかも忘れているので、パソコンにtodoを細かくメモってある。一つ一つそれを確認してやるべき事、事前にやっておいた方がいい事をこなしていく。

 睡眠は異常にちゃんと取ってきたので、朝方まで思考はハッキリしている。朝方二時間くらい仮眠して、起床。


「二人とも、基本家からは出ないようにお願いします。病院で異常なし……と診断されたとはいえ、何か副作用があるかもしれないからさ」


 一番怖いのは……グリーンスムージーで治った身体が、魔法が解けて元に戻ってしまう可能性だ。とりあえず数カ月様子見しないとダメだろう。

 ああ、この辺、三沢さんにも再三言っておかないとだな……臨床実験例がほぼナイのに処方しているっていう現実を考えないと。治った=即OKってゲームじゃないんだし。


「はい。畏まりました」


 幸い食料に関しては一人暮らしではあり得ない程、備蓄してある。うん、数年分だからね。


「食事は……ここにある食材は何を食べてもいい。それほど高級な食材があるわけじゃないし。キッチンも洗い物さえしてくれればどう使っても構わない」


「はっ」


 だからビシッと敬礼しなくていいってば。


 三沢さんから連絡が来た。


 エミさんの体調はすこぶる絶好調だそうだ。そして結婚するらしい。三沢さんが変にテンパっていて、音声通話は内容が良く判らなかったが、まとめるとそういうことらしい。


 そもそも、エミさんの怪我は三沢さんを守る為に発生した様で、彼は責任を感じてプロポーズすることが出来ないでいたらしい。

 なので、今回テンションが上がったこともあって、プロポーズ、そして結婚する、いや、既に婚姻届を出したそうだ……。つまり結婚した。展開速いよ……。


 で。三沢さんからの提案で、グリーンスムージーを「俺の家」から持ち出すのは止めることにした。持ち歩いて何が起こるか判らないし……やはり、作ったすぐと持ち歩いた後で薬効が変化してしまうのが怖いそうだ。


 なので、車を使って介助をすれば散歩も出来ているという今のうちに、謎の病に冒されたアイさん? だったかな? を連れてくるそうだ。そのアポを最優先にしたいというのが今日の連絡のメインだったようだ。


 まあ……今日の夜でいいんだけどね。材料はダンジョンの【倉庫】に入れてあるし。


 と。伝えると、体調などを問い合わせてすぐに連絡をくれた。会社から帰宅後、昨日と同じ様に車でうちに来るそうだ。


 ……正直、前回話を聞いてから俺的にはかなり時間が経過してしまっている。ピンと来ないっていうね。


 いかんですな……。なんていうか、元々他人の気持ちを理解出来ないコミュ障な人間だったのに、ダンジョンへ籠もる事によって、さらに激しくなってしまう。

 性格とかそういう問題じゃ無くて、時間という物理的な要因だからね……マズいよね。修行して強くなりたい、レベルアップしたいと思えば思うほど、こちらの世界との接点が薄れていってしまう。


 気をつけよう……。


 夕方。通常業務をこなして会社から戻ると、晩飯が用意されていた。


 え。あらやだ。うれしい。裸女二人は普通に御飯を炊いて味噌汁を作って賄い飯的に食事したらしい。


「米はスゲーあるから良いとして、パンも食べたよな? 二人は御飯派? パン派?」


「私はどちらでも。どちらかといえば御飯です」

 

 あ。そうか。森下さんはちゃんと喋れないか。


「この娘は確かパンが好きで……オーブンを使って自分でパンを焼いたりしていた記憶があります」


「そうなの?」


 森下さんが頷いた。んー。


「なら、確か粉とかは社販で買えた気がするから用意するよ。適当に料理して。あと、他に必要なモノは?」


「はい……その……言いにくいのですが、生理用品等を……その……」


 あーそりゃそうか。というか、服や下着、石鹸やシャンプーなんかの生活用品とか……他にも必要なモノはあるよな……。


「それさ、テキストで送れる? 今日もこれから三沢さんたちが来るから、コンビニやドラックストアで買えるモノは買ってきてもらおう。着替えとか下着は……エミさんに頼むか」


「お許しをいただければ、ネット通販で自分で購入したいと思います」


 ちなみに、彼女たちの私物、荷物は「何一つ」ないらしい。その場その場で買っていて、最新の着替えや生活用品はあのビルの最上階のクローゼットに置いてあったらしい。


 ああ。すまん。消去しちゃったね。


 うん、まあ、そういえば、彼女たちと雇用関係を結ぶとか給料を払うとかそういう契約をちゃんと考えないとか。マジで使用人として雇わないとなのかな……。秘書でもなんでもいいか。もう。



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