092:グリーンスムージー
やっと。やっとだ。俺はダンジョンに入ってひと息ついていた。
「シロ、奥で休むわ。ちょっと寝ないと思考がハッキリしない」
「はい、なのよぅ」
睡眠。何も考えずに眠りに付いた。前日の肉体労働に比べれば、全然だったはずなのに……疲れていたのだろう。昨日に引き続き、熟睡してしまった。
「ふう……」
溜息。正直、自分でやってしまったのであれば、仕方が無い。というか、最近余り深く考えずに動いているので、凡ミスして追い込まれるっていうのも今後あるハズだ。
が。
さすがに今回の件は……俺のせいじゃないよね……じゃない。じゃない。と思いたい。
と。現実逃避してても時間の無駄だ。考えよう。
彼女たち二人……裸女A、Bは、森下、松戸という名前だと判明した。
そして、なぜか、気力による主従関係契約の「主」が俺になってしまっているそうだ。これはどう考えてもマズい。出来るなら、解消してしまいたい。二人の人間の将来に関わるなんて怖すぎる。
でも気力についての知識が無いし、技術も無い。目で見える範囲なら「消去」することが出来たが、身体に埋め込まれている感じの気力は良く判らない。
多分、解消出来たアレはかなり手抜きな処置だったんだろう。
心臓辺りとか、喉辺りとか、脳辺りとか、腰椎辺りとか……いじると怖い部分にチラチラと見え隠れしている。
これは強引に消すと何か、代償がありそうで怖い。延髄とか腰椎とかちょっと神経に触ると、起き上がれなくなったりするからね。
なので、彼女たちの身体が癒えるまでは、上の部屋で生活させるしかない……か。
あれ?
俺が出社する場合は……どうすればいいんだ? 彼女たちの言ってた契約は……
・御主人様に逆らってはならない
・御主人様から離れてはいけない
・御主人様の命を最優先にする
だったかな? 御主人様て……なぁ。
面倒なのは「離れてはいけない」か。これは実際にどれくらい離れられないんだろうか? 別行動が出来ないってことなのかな?
まあ、ぶっちゃけ、護衛が必要なVIP用の契約だからな。悪のVIPだ。
これ……どこへ行くにも彼女たちが付いてくるんじゃかなり厄介だぞ? というか、面倒くさい。あんな派手で目立つ女子を連れて歩いていたら、目立ってしょうがない。
「ふう……」
また溜息が。そりゃ出るわな。動かなかった方が良かったのかなぁ……そんなことは……無いよな。多分。
うむ。まあ、うん。とりあえず、アイツらと話をするか。
ってその前に、彼女たちをできる限り回復させたいな。実は既に覚えている魔術で、癒やし効果のあるモノがある。
水の魔術で生み出せる「回復水」だ。微量の体力回復と消毒ってな代物で、ダンジョンで使う分にはそれほどでも無いんだけど……こちらの世界ではどうだろうか?
さらに。【鑑定弐】が使える様になった時にイロイロと試しに食べてみたりしてたダンジョン産の草や菜っ葉、果物などがある。
正直、この中に薬草等の薬品の元になる素材があると思う。あるはずだ。
俺が食べた結果から考えるに、ヨモギに似ている「ホルベ草」がそうではないか? と考えている。まあ、もしも薬草で無かったとしても、サラダ的な意味で繊維質が取れるということで良しとしよう。ちょい苦いくらいで、身体に害はないと思う。
さらに、果物の中で一番癒やし効果が高そうなのが、「モモ(のようなの)」だ。これは現実世界の「桃」に食感や味が似ている。色は黄色でバリバリ柑橘系で皮も柔らかい。だけど、味は甘い桃。うん、不思議。
で。この「モモ」、細かく確認してなかったけど、多分、体力回復効果がある。食べた時、なんとなく癒やし効果を感じたことがあったのだ。
ということで。
以前……グリーンスムージーなんかが流行った時に買った、ジューサーミキサーに「回復水」「ホルベ草」「モモ」をぶち込む。さらに氷少々とバナナと蜂蜜、牛乳も入れてスイッチを入れる。
結構な騒音と共にあっという間に「黄緑色のちょいどろっとした飲み物」の完成だ!
うーん。まずは俺が飲んで人体実験しないとだよな。そりゃそうだよな。食い合わせって言うか、組み合わせでヤバいことになってる可能性もあるもんな。
「……」
うまい! なんだ、これ。主に「モモ」か。爽やかなんだけど、非常にサッパリとして甘い。さらにそこにバナナのねっとり感が良い味を出してる。苦かったハズの「ホルベ草」は色と……ホンの少し青臭いくらいか。
これが、駅構内のジュースショップとかで売ってたら確実に買うな。マジデ。
体力回復は……うーん。わからん。
ともかく。アレだ。彼女たちに飲ませよう。身体に良い栄養ドリンク的に。
「おいしいです!」
若い女性には大受けだった。傷ついた体に優しく摂取しやすいということで、ごくごく飲んでいた。良かった。
これで若干の体力回復効果促進が見込めるんじゃ無いかな。
さらに三沢さんと連絡して、彼女たちの体調チェックをしてもらうことにした。骨折がどれくらいヤバくて、他に大きな怪我はしていないか? 等を見てもらうことに。
彼女たちはそれらの本格的なチェックをする前に、抜け出したらしい。
「というか、病院とかそれも俺は側にいないとダメなの? 別行動全く出来ないの?」
「いえ、命令されれば、2~3日であれば別行動は可能です。ですが、4日目になるとどうしても……御主人様の側に帰りたくなってしまいます」
ほっ。良かった。なら、大丈夫か。俺が会社に行く時は家にいてもらって……というか、基本家に居てもらおう。身体が癒えるまで。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます