049:強敵

【鑑定弐】と同時に習得した【受流】というスキルは、盾での受け流し……ということらしかった。最初、【盾術】とどう違うのか良く判らなかったが、敵の攻撃を盾で受ける際にこのスキルを意識すると、もの凄く上手く流せる……ということらしい。


 正直、最初は「ブロック」があるからかそこまでスゴイと思わなかった。が、よく考えると、これは使えるスキルだと思う。それこそ……剣を使う相手と一対一でで戦う場合、敵の攻撃を受けて、流して、体勢を崩せれば、そこに一撃をぶち込める。


 二刀流のソードアントをボスに設定して良かった。絶え間ない二本の剣による攻撃をしのぎ、盾で受け、流して戦ったことで、狙ったとおりにスキルを習得できたってことだろう。まあ、自己流なのであってるかどうかはわからないが、とりあえず、何百、何千と戦っていれば身体で理解出来ることも非常に多い。


 ということで、しばらく、【受流】を試してみたところで、ボスを切り替えることにした。ソードアントが、レベル17だったので……もうちょい上……ああ、そうだな……有名どこですかね……レベル21オークを購入した。


 おお! なんか見たことある! 棍棒装備だ。ちゅーか、ちょいデカいな……まあ、ボス部屋もそれに合わせて大きくして……配置する。


 ザコは、スケルトンナイトと、ソードスケルトン×3、クラブスケルトン×3という大編成の敵をこれまた大きくした中ボス部屋に配置。

 中ボスは結構狭い部屋に、ソードアント×2だ。これは……結構戦い方を考えないと、ヤバくなると思う。密集している中に、剣が四本になるわけだから。


階層ボーナス:迷路化レベル1

階層ボーナス:部屋⇔通路レベル3

階層ボーナス:迷宮構造構築

階層ボーナス:階層ボス配置

階層ボーナス:コンセプトレベル5

階層ボーナス:芸術レベル1


 お。ボーナスも若干上がったかな? ああ、迷路……と言えない感じに大雑把になっちゃったから、迷路化が下がったのか……。なかなか難しいな……。


 スケルトンナイトに率いられたソードスケルトンとクラブスケルトンは……既に敵ではなかった。意志の疎通が上手くいかないのか、囲んで襲いかかるような連携した動きが取れないのだ。それこそ、回り込まれて、ほぼ同時に、足元と頭、そして背中側からの攻撃を仕掛けられたら、苦戦したと思う。

 が。常に背後を取られないように動けたし、同時攻撃を仕掛けてくる前に先手を打って、潰すことが可能だった。まあ、それもこれも【結界】「ブロック」のおかげなんだけどね。


 狭い部屋にソードアント×2は、予測通り、かなり厳しい展開となった。まあ、それまでボスとして、一対一でしか戦ってなかった相手だからね。厳しくて当たり前。

 さらに狭い部屋での戦いのため、敵の攻撃を距離を取って躱すのが非常に難しい。その上、スケルトンと違って四本の剣が縦横無尽に襲いかかってくる。さすがに「ブロック」で動きを牽制していても避けきれるわけも無く、【受流】を使って意識的に敵を怯ませて、反撃する。


 最初は二体いることで戸惑っていたが、次第に視界が大きくなり、部屋全体、敵を俯瞰して捕らえることが出来る様になった。これはデカい。んーこれは……【気配】のスキルの熟練度がアップしているのだろうか?

 いきなり把握出来る様になった情報により、戦闘を圧倒することが出来た。二体のソードアントは順番に魔石と化して消えて行った。


「でかい……」


 そして。


 ボス部屋にいたのは……三メートル近い巨体。オーク……だ。豚と猪の間の顔をしている獣人。レベル20越えの敵は初めてだ。スケルトンナイト、ソードアントの時と同じ様に、今回も圧が凄い。威圧されるという言葉、文字通りにたじろいでしまう。く。怯んだ? 身動きが出来……。


ガバッ!


 質量と共に叩きつけられたのは巨大な棍棒。オークは猪が元になった獣人だ。が。こいつに……その面影はどこにもない。何よりも非常に凶悪な顔をしている。

 間一髪……ギリギリ棍棒を避け、さらに「ブロック」で自分の身体を強引に押した。それでギリギリ。ヤバかった。あんなの喰らったら一撃で全身粉砕骨折間違い無しだ。


 次第に身体が動くようになって来た。威圧によって強張っていた筋肉を弛緩させる。深呼吸って大切なんだな……っていうのを実感する。現実世界だと、なんていうか、緊張してるとか、テンパってるとか、気分的な問題だと思っていたのだが……このダンジョン世界には……平常心でいられなくしてくるスキルが存在するのだ。意図的に精神に対して攻撃を仕掛ける、その状態を作り上げてくるのは非常に恐ろしかった。


 さあ、しかし、立ち向かえ。


 相手が格上なのは判っている。というか、おかしいもんな。俺のレベルは未だに7。にも拘らず、レベル21のオークと相対しているのだから。三倍だ。

 多分、こういう……自己鍛錬とかっていうのは、自分と同等の敵と戦って修練するものだと思う。でも、それだと「ブロック」を使いながらの戦闘では物足りない。というか、ハッキリ言って完封出来てしまう。

 そんな相手では、怪我をするような戦闘にはなりにくい。毎回命がけは厳しいが、それなりにプレッシャーのかかる相手でないと、奮闘経験による倍加エクストラボーナスは入手出来ないしね。


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