048:【鑑定弐】

 ダンジョンで手に入れたアイテムは現実世界に持ち出すことができる。当然、ベッドや炊飯器で判る様に、あちら側に持ち込む事も出来る。が。


「シロ、「切り裂きの剣」を向こうの世界へ持って行けないのはなんで?」


 そう。「切り裂きの剣」を装備したままで現実世界に戻ると、剣だけが無くなっていたのだ。ちなみに、扉を通ると、その瞬間に腰に佩いている。


「判らないのよぅ」


「……「狼の肉」は持ち出せたのに。武器防具は無理なのかな? と思ってたんだけど……。「冒険者の服」は着たまま、向こうへ戻れるんだよなぁ~」


「……レアリティなのよぅ。レアリティの高いアイテムは扉を移動できないのよぅ」


 読み込んだな……そうか。レアリティ……あるのか。ゲームでお馴染みの稀少度ってヤツだよな……。ちっ。持ち出せるんなら「切り裂きの剣」は最強の切り札になると思ったんだけどなぁ。


 まあ、いいか。「剣」を装備して大暴れしたら……斬り刻まれた敵が溢れることになって、大事件に発展……大きなニュースになって、俺もお縄になる未来が見える。まあ、証拠を残さないように努力したとしても……ねぇ。ちょっとなぁ。怖いか。


 そんな事を考えながら、イロイロと装備を変えたりして試しながら戦闘を繰り返していたら。


----レベルアップ----


 レベル7だ。……なんか早くね? レベルって上がりにくくなっていくんじゃなかったっけ? いや……もう、二カ月以上過ぎてるか……。こちらにいると、根本的な時間の感覚が狂ってしまう。


 ……。


 シロからの告知は……無かった。つまり、システムの追加はなかったというこ……。


 で、【鑑定弐】、そして、習得スキルとして【受流】を覚えた。と、頭に浮かぶ。


【鑑定弐】は生物、魔物以外の物の鑑定が可能。らしい。


 ほ、ほほう。


 というか、これあれか! 森林広間に生えてる草とかの鑑定が可能ってことか! 敵からのドロップ品はなんとなく、最初からアイテム名が判るのだが、ダンジョンで採取した物は一切分からない。これは……ダンジョンお籠もり生活に潤いが! 


 さっそく、森林広間の階層へ跳ばしてもらう。【鑑定】を使う。【鑑定弐】と、別モノのように表示されたけど、使用する時は【鑑定】で問題無い様だ。


 とりあえず……毎回訪れるたびに補充されている果物からか。


 赤い実は「リンゴ(のようなもの)」。黄色は「マンゴー(みたいなもの)」オレンジ色は「グレープフルーツ&ミカン(もどき)」……。という名前だった。なんか、投げやりになってない? 適当なの? どういうことなの? まあ、こっちの世界でも赤い、このリンゴに似ている果物は、リンゴという名前だということだ……ってね。おい。


【鑑定弐】って本当に名前だけか! そうか。トホホ。判りやすかったのが、ヨモギみたいだなって思って摘んで食べていた草だ。


「ホルベ草」


 というらしい。……いやさ。できれば……どんな草か……とか教えてくれれば……。というか、なんで、果物には(のようなもの)なんて感じで解説ぽい名前になってるのか。教えて欲しい。非常に教えて欲しい。


 知りたいのは「ホルベ草」がどんな草で、どんな効能があって、どんな物の素材になったりするのかとかさ、そういう情報なのに。


 葉レタスは「レスタ菜」。セロリっぽいのは「カドル菜」というらしい。


 香草もいくつか見つけてあるので確認する。


 バジルっぽいのは「アダン草」、コリアンダーは「パクチ草」、レモングラスが「オベラ草」、ミントが「ミント草」……あれ? 所々、名前が被ってるぞ? そもそも、コリアンダーってパクチーの事だよね? さらに、ミントはミント草ってそのままじゃ……うーん。法則性……あるのかな? なんだこれ。

 前に囓って大丈夫だった草の中に、クレソンに似ているのがあったのだが、それは「メオス草」らしい。


 良かったのは、草が茂っている一帯を見渡していると、「〇〇〇草」というポップアップが出現して、ぱっと見で気付いていなかった物も発見できるようになったこと。

 これによって、「ニンジン(のようなもの)」と、「ジャガイモ(に似ている)」、「タマネギ(激似)」を発見した。根菜は……ねぇ。見つけづらいよね。しかも日本の野菜と違って生育があまりよろしくない。判りにくいので気付かなかったのだ。雑草だとばかり思っていたよ……。雑草という草はないってね。


 ってこれも、名前は果物と一緒の法則(〇〇のようなもの)表示か……。なんだこれ。


 さらに、気になっていたキノコも鑑定する。「キレン茸」「メノル茸」「ホザル茸」なんていう性能が全く予想出来ないキノコの他に、「マイタケ(のようなもの)」「シイタケ(疑似)」「ブナシメジ(それ系)」が確認出来た。うむ。

 とりあえず、()の付いているキノコは食べても大丈夫だろう。ちなみに「メノル茸」は……マッシュルームにそっくりなんだよなぁ……。形と良い、色と良い。でもな。草はともかく、キノコは安易に口に入れると即死が襲いかかってくる高性能な物も多いからな。辞めておこう。うん。


 これによって、さらに俺のお籠もり生活は充実し、三カ月どころか、平気で一年近く籠もることが可能になった気がする。だってさ、ボスやっつけて、果物もいで食べて、野菜もキノコも収穫して帰って、肉と一緒に食べる。


 とりあえず、香草も口にするが、香辛料とかその辺は、自宅に置いてあった正味期限切れ商材や、余っていた物を持ち込んでいる。新鮮なバジルとかは薫りを含めてもの凄く美味しいんだけどね。ステーキ(焼いた肉)に添えるだけでも、確実に上品になる。


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