038:潰す

 エレベーターの前に続々と……とは行っても、十名くらいか。乱暴者っぽいヤツラが集まってきていた。最初に声を掛けてきたヤツが一番近くにいる。おもむろに手首を取り。そのまま思い切り力を入れる。


 手首を握り潰した。


「ぎ、ぎきゃあああああああああああ!」


 五月蠅い。そのまま、ヤツを集まってきた半分の方向に放り投げた。


 残り半分は文字通り、一掃する。やはりレベルアップした俺の力は尋常では無かった様だ。力を込めようとすると……これまでとは違うレベルで力が入る。裏拳の一撃で腕を折り、足の骨を折り、そして、肉を潰す。


(末端にしておこう。胴体をやると即死しかねない)


 とりあえず、手足を縫い付けるが如く、床に叩きつけていく。


ゲショ……


 嫌な音と共に、ヤツラの身体が縫い付けられている様に次々横たわる。


「な、なんだ、なんだよ、これ……」


 集まってきていたやつらはあっという間に片付いた。


「てめぇ……あの三人と一緒にいた……」


「あ、ああ、詩織ちゃんと一緒にいたヤツだ」


 水族館で最初に感じた悪意……岡田だったか。それと……ここのボスっぽい男が残っていた。酒を飲んでいた様だ。


「なぜ、お前が……」



「エビス? この鍵の持ち主なら、駐車場で寝てるよ。いつ起きれるか分からない睡眠中かな」


「……」


「な、なんだ、モトキさん、は、はやくやっちゃってくださいよ、こんな奴。というか、詩織ちゃんはどうしたんだよ、はやくよこせよ!」


「判った。うん。松山さんのストーカーのお前が、お前に依頼した。で、拉致監禁、陵辱を加えて、写真やビデオで脅し、最終的には薬漬けで、AV、風俗デビューか」


「……」


 図星だな。うんうん。では、容赦しなくていいな。これ以上の会話は必要無い。


 踏み込んで岡田の手を取り、そのまま壁に叩きつける。


グシャ


 コイツは死んでもまあ、いいやという感じで力を入れた。そのまま、ボスらしい、モトキ? に向き直る。


「な、なあ、お前がアホほど強ぇのは良く判った、だから、手を組まねぇか? なぁ、良い思いさせてやるぜッ!」


 そう言うと、カウンターにバーの裏に駆け込んだモトキは、手に拳銃を持って立ち上がった。


「へ。どんなに強くてもコイツには叶わねぇんだよ!」


 まあね。そりゃそうだ。でも、引き金を引く指の動きは見えてる。アレを引いたら弾が出る。ならば、引く寸前に射線から外れればいい。こないだの猟銃から逃げるのよりも簡単だ。アレは散弾だったからな。どれくらい弾が広がるのか良く判らなかった。

「てめぇ、エビスたちをどうしたっ!」


パン


 避ける。


パン


 避ける。


 うん。問題無いな。一対一なら普通に当たること無いだろ、これ。


「なんで、なんでだ! てめぇ、非常識なんだよ!」


 ああ、そうかもな。ここではお前が天下だったんだろうな。


 拳銃を握ってそのまま捻る。


ゴキッ!


 握っていた手首がおかしい方向に曲がった。


「ぐぎぇ!」


 声と共に、モトキを突き飛ばした。後ろの酒棚に食い込むように叩きつけられた。それを引っ剥がして、カウンター越しの壁に投げつける。岡田と一緒だ。


 コンクリート打ちっぱなしの壁が歪んだ。こうして見れば、モトキは身長二メートル近い巨漢だ。かなりの衝撃だったのだろう。


 とりあえず、動くヤツがいなくなったので、バックヤードに置いてあるパソコンと監視カメラ装置などを一つずつ確認する。よく見たら、地下の監視カメラもあったようだ。隠しか。とりあえず俺が映っている映像は全て消して、さらに弾丸を撃ち込んだ。

 さらに、パソコンには、これまで乱暴された女性たちのデータが保存されていた。というか、ここで管理してたのかよ。どこかにバックアップは……あるよな。絶対。まあでも、いいか。潰しておこう。ハードディスクを中心に弾丸を撃ち込む。


 カウンターの裏側に弾はたくさん置いてあった。念のため、全ての機械に穴を空ける。


 ああ、ちらっとだけど映像を見たら、さらに腹が立ってきてしまった。動かないヤツラの腕と足に数発ずつ撃ち込む。これでもう、一生ベッドから起き上がれない、または車椅子生活だろ。特に岡田とモトキの手足は先が無くなるまで砕いた。


 さらに、全員の股間にも念入りに撃ちこんでおいた。


 帰りもエレベーターで降りて、駐車場角のヤツラの手足、股間も撃ち抜いてから奪ったスマホ、十数個から一斉に119番をかける。確か、発信してるだけで位置情報って判るんだよな? 


 ビルを出た。


 結構返り血を浴びているし、拳銃もアレだけ撃てば射撃残渣バリバリで怪しさ大爆発のハズだ。電車は……無理だな。これ。

 なので、離れた路肩に停めてあった黒ワゴンで帰宅することにした。最寄りの数駅前で車を停め、そこに放置する。


 暗がりを選んで走り抜け、自宅に急ぎ、そのまま、扉の中へ駆け込んだ。


「シロ、【洗浄】お願い」

「ハイなのよぅ」


 おお……コートや手袋に付いていた血の染み、そして強烈だった火薬の臭いが一瞬で消え去った。


「傷んでる部分も修復できる?」

「出来るのよぅ」


【修復】の力で、コートと手袋の小さな穴消えた。新品の様に綺麗になった。


「証拠隠滅……終了……か。っていや、そうか」


 紙袋に入れて持ち帰ってきた拳銃と、弾丸……数百発。えっと確か、これは、グロックか。弾倉も二十本位あった。なんとなく、ダンジョンで使ったり出来ないかな~? と持って来てしまった。


 まずいかな? まずかったら、対処法はその時考えよう。


 とりあえず、扉のこちら側に入れておけば、俺以外は入れないんだったよな。保存場所としては最高最適だと思う。


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