034:ワンルーム解放

 スケルトンナイトを倒した。倒せた。うん。【結界】のおかげとはいえ、それも俺の力? の一部だしな。


 文字通り、【結界】は敵の行動を封じ込めることが出来る。特に「ブロック」は戦闘時に、敵の行動を阻害するという事に関しては凄まじい効果を発揮する。


 まあ、なんだ。うん。嬉しい。


 子供の頃から感情の起伏を余り感じることが無かった。親が死んでも、大学に合格しても、戦場から帰ってこれても。何事もやらなければならない事の繰り返し


 だけど。これか。これなのか。


 言葉に表せない充実感。


「いやっはーーーっ!」

「いきなり、うるさいのよぅ」


 こんな風に叫んだのは、生まれて初めてだ。き、気持ちいいな。ああ、これが、勝つということなのか。やり遂げたということなのか。

 正直、まだまだこれからだ。そんなことは判っている。でも、このダンジョンは勝とうが、クリアしようが、何をしても報われる様な約束はまるで無いのだ。


 にも拘わらず。ああ、だからこそ、か。泥のようにはまって、感情移入しまくりで熱くなれるのか。


「よし。楽しい」

「よかったのよぅ」


 俺はそのまま、今の感覚を忘れないうちに、と、周回に入った。無駄に周回した。


 そんなこんなで、数日間(分の時間)が経過した。


----レベルアップ---- 


「レベル4おめでとうなのよう。システム、アイテムドロップが解放されたのよぅ。これより迷宮内の魔物が魔石以外のアイテムを落とす様になったのよぅ。システム、迷宮機能集中総操作室拡張解放壱が開放されたのよぅ。そこの扉なのよぅ」

「お、おう、いや、なんか」


 さらに【鑑定壱】というスキルが思い浮かんだ。多い! 多いよ! レベルアップ時の情報開示量が多いよ! いきなりすぎだよ。レベル3に分けてくれれば良かったのに! うれしいけど。


「えーと、シロ、ごめん。一つずつゆっくりといこう。まずはレベルアップだ。俺はレベル4になったんだな」

「なのよぅ」

「レベル4になったことでこれまでのシステムに変化は?」

「レベル4相当のアイテムがDPで交換できるのよぅ」

「だけ?」

「わからないのよぅ」


 よし、それは後でチェックしよう。


「次。システム?」

「システム、アイテムドロップが解放されたのよぅ。あと、」

「そこまで。まずはアイテムドロップな。続きあったろ? これより?」

「これより迷宮内の魔物が魔石以外のアイテムを落とす様になったのよぅ」

「それな」


 あれか、魔物の革とか牙とかか? よくあるといえば、よくあるけど、そういえば、これまで魔石しか見てなかったな。装備とかもゲット出来たりするのかな? それは良いな。というか、なぜ、最初から解放されていなかったのか、分からないレベルだ。


 しかし冷静に考えて、どう考えてもポケットに入らないよなぁ。よくあるダンジョン系のゲームの様に、一度の探索に何日もかけて篭もる……なんてやり方は、俺には出来ないし、しない。何よりも戻りたくなったら、すぐ戻れるからな。それでも多分、カバンが必要だな。


「よし、次」


 問題は次だ。


「システム、迷宮機能集中総操作室拡張解放壱が開放されたのよぅ。それなのよぅ」


 長えよ。で、シロの見ている先にあるのが。


「それが、この扉?」

「なのよぅ」


 当然の様に、扉があった。いつも入ってくるいつもの黒の大扉を少々小さくしたようなヤツだ。ここ……ただの白い壁だったよな? まあ、不思議ちから、不思議ちから。


「これは何? 入口?」

「入ればわかるのよぅ」


 おそるおそる、扉のレバーに手を掛け、開ける。


「!」


 おいおい。なんだこれ。


 そこには……至って普通のワンルームマンションの一部屋があった。


「はえ?」


 思わず、振り返る。うん。何時も見慣れた白い部屋だ。目の前には新しい扉。中には……。


「まごう事無き、ワンルームマンションだ」


 声に出た。


 扉を入ってすぐに左手に一口コンロ、小型冷蔵庫っぽいなにか? シンク、水道。右手の扉の中にユニットバス……トイレが見える。


 水はどこから? とか、排水は何処へ? なんて疑問はあるけれど。


「シロ、この部屋、使っていいの?」

「当然なのよぅ。この迷宮のモノは全て迷宮創造主マスターのものなのよぅ」


 こ、これは。嬉しいけど。おかしい気もする。よ、よく見ればコンセントもあるじゃん! なにこれ、なにこれー。


 と。ひとはしゃぎ。落ち着いて考える。


 余りにも俺に都合の良いシステムの追加だ。まあでも……うん。いいのか。元々、訳分からないんだし。

 

 床は板張り、フローリングだ。オシャレだけど、なんとなく寒々しいな……ラグマットとか、絨毯とか合った方がいいな。物置の……どこかにあったような。


「あ。窓が……無いのな」


 大きく違和感を感じるのはそれくらいか。正直、床は茶色、壁や天井は白。明るいんだけど~電気……いや、灯りを消すと真っ暗で圧迫感はなかなかだ。


「まあでも、よし!」


 そうと決まれば! 持ち込んでいた寝袋にマットレス、カセットコンロに水、カップ麺にイロイロを部屋に持ち込む。というか、布団一式と、着替えも持ち込んだ。

 イスとパソコンデスクに使えそうなテーブルも持ち込む。もやしやキャベツ等の生鮮食料や若干の冷凍食品も小型冷蔵庫に収める。


 確認したが、このワンルームの全ての機能が機能した。日本語変だけど。冷蔵庫は冷えるし、ガスコンロは火が着く。電灯も付く、水道から水も出る。トイレも流れるし、パソコンも使える。


 つまりはネット環境がないだけか。うむ。問題なし。そうかーこれで、一度こっちに来たら、思う存分やれちゃうということか。

 これまではトイレとか、風呂とか、たまに飯とかでこまめに戻ってたもんな。


 いやーこれはもう早速活用しよう。と、シャワーを浴びて、狭いバスタブに浸かり、布団に入った。あれだな、たまに大きい風呂も必要だな。家の風呂は普通より大きいサイズでちゃんと足が伸ばせる。


 いや、疲れが溜まってきたら、健康ランドの大浴場行くか。サウナもあるし。ソレだな。


 ……って所で、思い出した。【鑑定壱】つてのもあったわ。

 

 

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