033:スケルトンナイト

 とまあ、集団戦に自信を付けた俺は……おもむろに。一度、戦わずに逃げた相手をボスに設定した。そう。スケルトンナイトです。お強いんでしょう? その通り。


 其の分、グレーウルフリーダー&グレーウルフ×2は中ボスとしてボス部屋手前の小部屋に設定した。狭い部屋だと、グレーウルフたちは妙な立体機動で仕掛けてくる。それも訓練のうちと思ってある程度攻撃を受けながら戦闘している。


 壁を蹴って突っ込んでくるグレーウルフをこれまた【結界】で止める。最初のうちは無駄に沢山のブロックで囲ってしまっていたが、すぐに、最小数で行く手を阻めるようになった。リーダーも以下同だ。【結界】があれば、多対戦闘が一対一になるものなぁ。


 ある程度簡単に辿り着いたボス部屋。当然……スケルトンナイトが立っている。怖っ。相変わらず、えらい威圧感だ。だが、【結界】を手に入れ、使える様になってきた俺には何となく「いける」という確信があった。


 ボス部屋に入っているのだから、既に後ろの扉は閉まり、戦闘開始となっている。多分、あと一歩、ヤツに近づくと、仕掛けてくるハズだ。ってなんでそんな気がするんだろう? 


 はたして。確かに、一歩近付くとヤツは盾を前面に押し出し、剣を斜め下に構えた。


 というか、そういえばこいつ、背中に盾を背負ってたな。こちらが正式な構えか。

 前回相対した時、何一つ全体像が見えていなかったばかりか、敵の装備を観察する余裕すら無かったんだなと、自分の未熟を恥じる。

 

 相変わらず、剣の振りは鋭く、重い。どこだとしても、当たれば重傷間違いなしだろう。そこは変わらない。


 だが、俺には【結界】がある。さらに、前回よりも一つとはいえ、レベルも高い。


 いける。いけるはず。意識した訳では無いが、目の前のヤツと同じ構え……盾を前に、体を斜めにして、剣を下に、を取っていた。

 同じ構えで、同じ流れで攻撃を仕掛けるのだとしたら、正直、向こうの方が身長も高いしリーチも長い。やつは二メートルくらいはある。さらに腕に筋肉が付いていないために、腕や足が長く見える。というか、関節から長さを測り始めるのだから、現実問題として長いのか。そうか。


 長いリーチを生かしての初撃は斜下からの斬り上げ。当然避ける。この間合いはなんとなく理解した。モーション付きなら距離を取ることは難しくない。


 ただ。こちらの攻撃を繰り出せない。そりゃそうだ。


 ということで、ジリジリと近付く。ヤツはまたも剣が下だ。魔物は……なんていうか、結構同じ行動を取ることが多い。単純なのかな。人間との対戦では絶対にあり得ないような繰り返し行動を行うことが多いのだ。ということで、またも下からの斬り上げ。うん。こいつ、この間合いだとこれを繰り出すんだな。パターンとして覚えておこう。


 では。その先を見せてもらおう。


 再度、近付いて攻撃を誘う。下からの斬り上げ。うん。三回目だ。


 その刃を斬り上げようとする瞬間に、剣の根本に「ブロック」を発生させる。力を込めて剣を加速させる前に止めれば、「ブロック」も大したダメージは受けないだろうし、動きを確実に止められるハズだ。


 と思った通り。剣が止まり、ヤツの態勢が崩れた。そこで踏み込みながら、こちらは剣で剣を持つ腕の肘関節を狙い突く。


ガギッ


 外れた。ちっ。「ブロック」に防がれた反動で腕の位置がずれて、俺の攻撃も当たらなかった。が。さすがはチートの「切り裂きの剣」。かなり固そうな骨を大きく抉った。こちらの刃は……欠けたりしていない。うん。丈夫。


 体勢の崩れる原因となった剣とその根本である腕に衝撃を受けたスケルトンナイトは、さらに態勢を崩した。が。左手の盾を薙払う感じで振る。それ以上は近付かせてくれなかった。


 追撃を諦めて再度、距離を取る。


 カイトシールド……とかいうやつだっけ? 結構大きめの盾だ。少々恐ろしげな紋章が刻まれているが、まあでも、カッコイイ。暗黒騎士とかがメインジョブなら迷わず装備しそうなクオリティだ。これ、ドロップしないのかな?


 さて。もう一度。仕切り直しだ。


 剣で斬り上げてくる。これを「ブロック」で止める。態勢が崩れる足元に、さらに「ブロック」で妨害する。


グバ


 スケルトンナイトの膝が地に着いた。完全に態勢を崩している。その隙に剣を振上げた俺は、首目掛けて斜めに斬り下ろす。


バン!


 ちっ。こちらも少々根本に、カイトシールドを当てられてしまった。勢いが鈍り、当然、盾に受け流されてしまう。体勢を崩さない様に注意しながら、受け流された剣の勢いを回収し、再度距離を取る。


 さすがだ……レベルが高いだけはある。そして、ナイトという名前が付いているからか、盾を使うのが凄く上手い。

 剣は、まあ、ヒーローモノとかチャンバラで見たりしているから、なんとなくどう動くのかが理解出来ていた気がするが、盾術? とでもいうのか、盾の取り回しは見たことも聞いたことも無かった。非常に勉強になるな。微妙に角度を替えることで、剣を流し、さらに、態勢まで崩し、自分の次の攻撃に繋げるのだ。


 うん。勉強にはなった。とりあえず、これ以上は次の対戦で良いだろう。


 まずは、剣を「ブロック」。そして、足元「ブロック」。態勢が崩れたところへ、盾の手前に「ブロック」。

 三連続ブロックにはさすがに、体が開く。文字通り、為す術無く、俺の剣が、スケルトンナイトに届いた。狙うは腰。これまでスケルトンを倒してきて、一番楽ちんな退治法が腰の寸断だ。


 丁度。露わになっている腰の部分。そこに向かって、「切り裂きの剣」で突き抜いた。


サワッ!


 小さな音と共に、腰骨の継ぎ目に吸い込まれた刃。次の瞬間、ヤツの上半身が勢い良く投げ出され、石畳に転がった。


 とりあえず、上半身と下半身が分断してしまえば、幾ら骨でも行動は停止する。通常のスケルトンと戦っていたとき、首を落としても平気で襲い掛かって来た時は、どうすればいいか分からずに、とにかく全身をバラバラにするしかなかった。腰ってかなり狙わなければ、斬り落とすことなんて出来ないからね。


 魔物が……魔石を残して消える。お。なんか、これまでよりもちょっと大きいな、これ。さすが、高レベル。


「シロ、撤収」

(了解なのよぅ)


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