032:【結界】「ブロック」「正式」

 現在の俺迷宮はいたって無理せずに先に進める難易度になっている。ある程度ボーナス狙いで、それを維持する感じの構成。少々やばげなのは最後のボス部屋だけだ。


 ボス部屋に居るのは、指を食い千切られたグレーウルフリーダーに率いられた群れ。リーダーにグレーウルフ×2が従ってる。


 ある程度慣れてくると、部下を増やして、負荷を大きくしてもいいのかもしれない。

 毎回指を失うのは痛いのでいやなのだが、血を流す=苦戦はした方が良いだろう。


 何しろ、エクストラボーナスでクリア時入手階層ボーナスが倍加だ。美味しすぎる。


 まあ、それにしても。戦闘に【結界】を組み込んだ事によって、異様に難易度が下がった。特に、こいつら群れとの対峙は楽ちんになった。


 ボス戦でグレーウルフリーダー&グレーウルフ×2が上下左、三方に分かれて同時攻撃をしてきても、とりあえず、二匹の目の前に生み出した【結界】ブロックで進路を塞ぐ。


 足の止まらなかったヤツに向かって剣を立てる。敵は逃げることも出来ず、カウンターで斬り裂かれてしまう。

 行動パターンが複雑な上に機動力も高いグレーウルフリーダーは四方をブロックで囲んでしまう。後は順番に仕留めていく。


 敵の行動を阻害してコントロールすることでこれほど戦闘が楽になるとは……知らなかった。まあ、そもそも喧嘩だってしたことないし、一対一、多対戦闘なんて経験無いからな。


 ああ、ちなみに中東内戦時下でのどうの……っていう話を知っている人は、俺が戦争で若干でも戦っていた……かのように思い込む事がある。


 特に森下社長が、俺が勇ましかった云々なんて言うもんだから、そちらの方向に誘導されてしまう様だ。

 銃火飛び交う下、食糧調達を頑張ったりはしたが、実際には逃げ回っていただけだ。何か立ち向かった……なんて事実は一切無い。むしろ目の前で息絶えていく人々を横目に、何も出来ず、無感情に立ち去っただけだ。


 俺に取ってあの国、そしてあの日々の思い出は後悔、そして悔恨にしか結びつかない。


 楽ちん……とはいえ、一度は指を食い千切られた相手だ。何度も何度もクリアを繰り返し、精度を上げていく。

 様々なパターン、特に自分が油断をしていて気付かなかった……なんていう間抜け状況も想定して戦闘を繰り返す。結果的に、【結界】をこのスピードで繰り出せるというのは、チートでしかないな、と実感していた。


 なんだろう。ブロック単位なのが分かりやすいのだろうか? 

 思い浮かべるのも、コンクリートブロックサイズの、ロゴブロック。大きくするときも横に幾つ、縦に幾つといった感じだ。

 それで設置場所を指定すると、何となく【結界】と考えて発動したときよりも遥かに早く完成する。


 そう。「ブロック」以外にも【結界】を張れないのかな? と思って、敢えて「ブロック」を思い浮かべずに、スキルを使おうとしてみた。

 すると、なんていうか、自分を中心に半球状のバリアーみたいな【結界】が発生したのだ。


 ……ちゅーか、こっちが本物というか、本当の【結界】じゃね?


 飛び道具で攻撃されそうな時とか……全方位で守れるのは便利だもんな。


 だが、正直、「正式」……あ、分かりにくかったので、これまで俺が使っていたブロック状のヤツを「ブロック」【結界】。この半球状のヤツを「正式」【結界】と呼ぶことに決めた。既に、頭の中で発動時には「ブロック」「正式」と考えるだけで、思い浮かべた【結界】が発動する。


 ……別に【結界】という単語を思い浮かべる、使用する必要はなかったんだな……。


 で。この「正式」【結界】。下が無い所で使う自分を中心とした球形、360度全方位を守れるのはいいんだけど、正直、「ブロック」に比べると強度も低いし、発動までに時間が掛かる。


 大体……30秒くらいだろうか? その間中、「正式」【結界】の事……を考えていないといけない。こいつは……厳しい。

 特に戦闘中に随時に発動……とはいかないのが歯がゆい。そもそも、こんな球形の【結界】に何の思い入れもないからなぁ。長い時間考えること自体が難しいのだ。


 ちなみに、「正式」と考えてあとは普通に敵がどっちから来るか……なんて考えていたら、発動はした。


 だが、ゴブリンの一撃で消し飛んだ。


【結界】=昔のアニメで見た研究所に張られたバリアーの様なモノだと思うのだが……うーん。


 あ。その際に判明したのだが、この【結界】、「ブロック」も「正式」もどちらも、「俺」は出入り自由だ。んー当り判定「あり・なし」を自由自在にできるというか。


「正式」を試し始めてから気がついたのだが、敵は【結界】に拒まれてそこから先へは進めない。が、発動した俺はその結界から容易に出ることができるし、入ることも出来る。


 分かりやすく言えば、俺は【結界】の有る無しに関係なく、攻撃を仕掛けることができる。何それ。これもチートか。


1:「正式」【結界】を張ってから音を立てたりして敵をおびき寄せる→

2:敵は【結界】まで来るとそこで足止めされる→

3:魔物はなぜか俺を見るとどんなに瀕死になっても襲いかかってくるから、ずーっと【結界】に張り付いたり、【結界】自体を攻撃したりする→

4:中にいる俺は攻撃を受けない安全地帯から敵を攻撃出来る。


 これ……槍とかの長物があればさらに無敵……じゃないか?

 この「切り裂きの剣」持ち手、ハンドル部分に長い棒でも括り付ければ……ってそれは無茶か。

 

 まあでも、つまりは、俺に対しては当り判定がないのか。と思って、透明の階段作って登れたら踏み台、または脚立いらずだったのに~なんて考えながら、ブロックを踏み潰す感じで足を踏み込んだら。


「載れた」


 ということで、「ブロック」は俺の意識次第で存在、非存在が決定するらしい。しかもブロック毎に。


 これで空高く……とは……止めとこう。怖いし。


「正式」の方は、ドームを構築する際に、練り込まないとダメな感じだ。

 何も考えないと俺は素通りできるやつ。発動時に「実在する壁みたいな」なんて考えを加えると、俺も通れなくなる。なんか理屈は通ってるけど、融通が効かないな。


「正式」は……なんか使いづらいので放置でいいかなと思っている。戦闘で使い物になるのは確実に「ブロック」だし。


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